スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Wearing the thunder of courage with a strong heart

『待つんだっ!』

強い反応のあるボスヤカンへ突入し円形のステージに立ったとき、一番最初に言われたセリフがそれだった。

そして、そのセリフを放ったのはすりみ連合のマンタローである。普段2人の後ろで構える柔らかな声からは離れた強さを感じる。

『オタカラは……わたさない!』

その後ろには何かのエンジンパーツが鎮座しているから、それが今回のオタカラだろう。

「そのオタカラ、あなたは何で守ってるんですか?」

ふと、そのオタカラ達を守っている理由が気になって聞いてみる。金の為ではあろうけど、それにしては優しさを感じるからだ。

『ボクらの生まれ故郷、バンカラのためだよ……! キミはなんでここまで来たの?』

「僕は、オタカラなんてものに興味はありません」

『……へ?』

「探すべき人がいて、それをさらったであろう人がいる。アタリメ老人をさらった人物を追ってここまで来ました」

僕がそこまで言うとマンタローは再びこちらを睨む。

『……ボク、聞いたことがあるよ。この近くにいたおっきなタコさんからね』

「大きなタコ……あの将軍ですか?」

僕は記憶をたどってその人物にたどり着くまで3秒の時間をかけた。それくらいその人物に印象が無かったのだ。

『アタリメさん? はそのおっきなタコさんと親友なんだけど、クマサンって人に連れさられたみたい。くわしくはわからないけど、クマサンはアタリメさんを使って世界征服しようとしてるんじゃないかって』

「……!」

やはりあれはただの夢ではなかった。1号が立てた推測はともかく、あの夢がクマサンの理想の世界だ。

あの寂しい世界をアタリメ老人を使って作ろうと言うのなら。

『そしてクマサンはとても強いみたい。そのおっきなタコさんが真っ青になるほどなんだ』

「……そうですか」

『それでも、キミは立ち向かう勇気があるの?』

その言葉を聞いて少し足が震えるのを認識する。

怖いのかもしれない。兄さんの心を癒やしながら囲ってしまうカリスマ性と、アタリメ老人を捕らえ将軍を震え上がらせるほどの戦闘力を持つクマサンが。望むものが救いのない虹色の世界だと言うことが。

それでも、だからこそ僕はマンタローにヴァレチスを向けた。

「ありますよ。くすぶって手遅れで後悔するのは嫌ですから」

『それなら全力だよ。キミは本当に強いから戦いたくはないけど……バンカラのために勇気を、キミのために勇気を出す!』

そう叫ぶと、マンタローは手を合わせ力をこめる。彼の身体に緑色のインクが満ちてそれで覆われると、インクに溶けて巨大な影がぼうっと光った。

 

雨と共に生きる強き心

ふしぎせいぶつ マンタロー

 

『うらみっこナシだよ!』

水に溶けるその光は、勇気の灯火として僕を試す。

 

 

光る魚影は泳ぎながらその形に塗り込んでいく。

的が大きければ当てやすいとフォトンモードに切り替えて撃ち抜くが、一回り小さくなってそれらが襲いかかってくる。

「分裂した……!?」

『どれが本物のボクか、見抜いてみせるんだ!』

見えた影を手当たり次第に撃ち抜くが、どんどんと数を増やし小さくなることで確実に追いつめられていく。これではこちらが囲い込み漁されるのも時間の問題だ。

「ブラスト、いちばんおいしそうなのはどいつだ」

「……くおらく、くりあおきりくありんあ」

「見た目では判断がつかないし、匂いも届かないか。ならば」

僕はラピッドにモードを切り替え、退路を作ってインクに潜る。

そして、ヒーロースーツにつけられた4号作製のデバイスを起動する。

微弱な電磁波を発生させ探知するパルスソナーで、本物の所在を掴むことに成功したらこちらのものだ。あとは本物のみをフォトンで狙い撃ちにすればいい。

『うわぁっ!』

最小サイズでやられたマンタローは打ち上げられ無防備をさらす。そこを容赦なく貫けば緑色のインクを吐き出しながら元の色に戻っていった。

『キミはやっぱり強いね……でも、ボクだって負けられないよ!』

マンタローは立ち上がると再びインクを纏うが、先ほどと違い紫の気体を発生させている。

それがインクに溶け大きな影を再び作るとこちらに襲いかかってきた。

本物を再び飛び上がらせるには最小サイズまで小さくする必要があるから、再びフォトンモードで影を分裂させていく。

「3号、上! トーピードだよ!」

「……しまった!」

先ほどと同様に塗りを広げようとラピッドに切り替える隙に、上から降ってきた誘導ミサイル『トーピード』に被弾する。

トーピード自体に詰められたインクの量はそこまででもないのでダメージは大きくないが、なぜか身体から力が抜けていく。

「……あれ? トーピードってダメージだけじゃないっけ?」

「でも、あの感じ……ポイズンボールもらってるみたい。ヤバいかも」

「ぐっ……思うように身体が動かない」

身体がうまく動かず相手の泳ぎに溺れていく。僕が持っている圧倒的なブキも身体が扱えなくなれば宝の持ち腐れだ。

フォトンでの狙い撃ちも、ラピッドでの退路確保も中途半端にトルネードの大渦に巻き込まれてスーツが半壊。鈍足のまま追い討ちのスプラッシュボムをよけられる訳もなくダウンをとられた。

『ボクの身体には特殊な毒が満ちてるんだ。ただのインクだってなめないで欲しいな!』

「単体の強さはそれほどても数をなせば脅威だし、なによりインクに込められた毒が厄介だな」

競技用肉体再構成(リスポーン)装置で再生を受けた僕は、得られた情報を口に出して整理する。厄介であれど問題が整理できれば勝機があるのはウツホ戦で証明されている。

敵は全方位から同時に迫ってくる、毒で鈍足となれば地上に投げ込まれるサブウェポンにはまず対応できない。

「確証はないがやってみるか」

対策を仮で考え僕はふたたびステージに飛ぶ。

すでにマンタローの分身による自陣の制圧が始まっており、着地点は毒で染まっているのを確認したから身体に力を込めてスーパーチャクチで安全性を確保する。

全方位に気を配りつつブラストを敵のいない方向に投げる。投げた方向は毒色だがケバインクでびくともしなかったブラストが鈍足になる毒程度でどうにかなるわけがない。

毒に着地したブラストは力強く光り飛び跳ねる。

その光に釣られずこちらに向かってくる影1つ。

「本物は……こいつだな!」

『ヤバい!』

危機を悟った影はこちらに撃たれまいとインクの装甲を装い飛び跳ねる。その装甲さえ無ければマンタローのフォルムと色で鳥と見まちがえそうな高さで、通常のシューターなら絶対に届かないだろうし届いたとしてもはじかれるはずだ。

しかし、僕のこのブキは通常の範疇(はんちゅう)に収まらない。

「相手の動きは一直線……ここだ!」

予測射撃でマンタローの目の前に置いたヴァレチス・フォトンの弾は、飛んでいくマンタローに直撃し装甲ごと撃ち抜く。

彼は苦しい声を上げると受け身もとらず落下していく。

ビタンと明らかにダメージがありそうな音をだして、歯を食いしばりながら立ち上がった。

 

『悪いけど、ボクは本気をださせてもらうよ。ボクも、このままタダでやられるわけにはいかないから!』

マンタローはそういって再び手を合わせてこすると、インクに覆われるとともにフラズマらしきものを発生させ纏わせる。

静電気でそこまでの帯電ができるのかという疑問はあるが、目の前には現実があって結果があるだけだ。

『今こそ……修行の成果を!』

潜った影が光ると、インクがパチパチと音を立てながら連動するように照らされる。水は電気を通すとは言うがその原則はインクでも同じということなのか。

どちらにせよ帯電した敵インクを踏んだ時点で無事ですまないだろう。

彼はその巨体で帯電インクを広い範囲に広げていくからこちらはラピッドの性能で安全をなるだけ確保する。原理は謎にしてインクの帯電が及ぶ範囲はあちらの面積内のみだからだ。

分裂する影を増やせば増やすほど帯電するマンタの影が動きを制限する。もちろんマンタロー自身が帯電しているのだから、そこから発生した分身にも高圧電流がまとわりついている。触れたときの末路など考えなくともわかった。

「……ブラスト、あれは流石に無理か?」

「くりこ。こんかりきゃくりくか」

しかし、先ほどと違ってブラストで偽物のみを引きつけることはできない。

多少の毒をはじく外皮でも高圧電流から身は守れないから、広がる敵インクの最中に放り込んでどうこうというのは無理かあるのだ。電流が流れているせいでパルスソナーも正常動作が見込めないのなら自力で発見するしかない。

「本当にやっかいだな……!」

愚痴を吐きながら2度目のスーパーチャクチを決める。着地の衝撃波で分身を巻き込みながら安全な面積を確保し確実に戦いを有利にする。

『まだまだ!』

小さくなった身体に力を入れたマンタローは、電気の加速で文字通り電光石火の突撃をした。

安易に回避できないように周りにはスプラッシュボムがいくつか転がされている。下手に避ければ爆風にさらされる。

「何かないのか、避ける方法は?」

 

────そういえば、その『大きなタコ』と戦った時にこちらの攻撃がはじかれたことがあった。たしか、ロケットパンチをきりもみ回転させて────

 

「あるな、方法!」

突撃してくるマンタローにあえて加速。ギリギリの位置で急旋回し自分色のインクが少しある左側に飛び出す。

飛び出す時に急旋回する力を使って自身の身体できりもみ回転し、擬似的なアーマーでボムの爆風をはじく。

着地点にあったインクはギリギリで踏んでそのままくるっと左に半回転する。

『……しまった!』

それを予測できなかったマンタローはそのまま真っ直ぐ進み、こちらに後ろをさらした。

「これで最後だ」

その隙を見逃さずマンタローの最後の影をフォトンで撃ち抜いた。

 

『やられた……!』

ボロボロになりながらマンタローは場に立つとかみしめるように言った。

『これだけ強ければ……きっと大丈夫だね。クマサンとも戦えるはず……!』

「クマサンの所在は?」

『この、オルタナの真ん中みたいだよ。何かの役にたつかもしれないからオタカラも渡すね』

「いいんですか?」

『ボクはキミに勝負を挑んで負けたからね』

「……もしあれならあとで返しますよ」

『いいんだ。この場はこれまでだよ……!』

マンタローはどこからか煙玉を出すとそれで退散を試みる。しかし、それを叩きつけた場所がインクで塗れていて火が消える。

それを確認した彼は火花の為に電気をまといそれに触った。

 

『あっ、電圧────』

 

疲れから電圧の調整を間違えたマンタローは想定以上の爆発力で吹き飛び、場に静寂が訪れた。

その場に残された僕はそのエンジンパーツを盗って、シオカラキャンプに運び込むことにした。

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