スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Crippled hand

『ここから先は危険物持ち込み禁止です』

「なっ……」

「あ、あちゃー」

施設の下方から侵入し、ろくに整備されていない扉をくぐったらそこが正面口だったとは思わなかった。

それまでの立ち入り禁止区域と違ってゲートは素手で破れそうになく、司令が使った4号さんのハッキングプログラムも対策されているようだった。

対処のしようがなく仕方なしに武装を剥奪されて僕たちは前に進んだ。

「あれ? ブキ無くなっちゃってる!」

「まあ、真正面から行ったらこうなるわな……」

「『ワナ』だけにか?」

外部の通信からそんな会話が聞こえてほんの少しだけ安心する。丸腰にされたとはいえ、それを確認できて客観視できる存在が冷静さを持たせてくれることを僕はよく知っている。

「大丈夫、なんとかなるよ。とりあえず目の前の扉は2人でスイッチ踏めばオッケーそう」

何より隣に司令がいると言うことが大きなアドバンテージになっている。

何度もこの人に助けられた経験が有るからこその裏付けが、絶大な安心感を生み出しているからか。

僕たちはそれぞれの感圧式スイッチを踏んで扉を解錠。前に進めば警備にあたっていた3体のタコトルーパーがこちらを見る。

完全な丸腰ならこちらは対抗のすべがないが、そうではないからやりようがある。

「いってくれ、ブラスト!」

「くお!」

ブラストは危険物扱いされなかったことでこちらに対抗手段が生まれた。

ブラストは相手にじゃれついて相手を倒す。その牙を恐れた敵は後退を試みたがそれより早く飛び出したブラストが(ほふ)る。

そうしてルームガーダーを排除し先に進めば、一本道に立ちふさがるタコドーザーを見て小さな身体でそのセンサー部を潰して無力化する。

「えちょっ、ブラストくんすごくね?」

「ね! 3人ならいけそうじゃない?」

ちょうどこちらも思ったことを無線で聞きながらドーザーの下をくぐり抜け、リフトからドーザーの頭に乗って先に進む。

広いエリアにはカギで施錠されたカプセルが2つほど置いてあり、その中身を活用しなければ先に進めないらしい壁がある。

カギを得るためにエリア入口の下にある出口から見える構造物を目指す。

いつもなら金網の橋を登り直すこともできるのに、インクが無いとできることがとたんに減るイングリングの生態がこの施設を迷わなくしている。

構造物までの道にあったプロペラリフトはブラストがしっぽで叩いて回し、構造物の天井から中へ。

『んん……このニオイは……?』

「ニオイ? なにかにおってますか?」

『カギのニオイだ! この近くにカギがあるんじゃないかな?』

「カギのにおい……?」

「よかった~、おやつこっそり食べてるのバレちゃったのかと……」

「えっ?」

「……アレ?」

そんな馬鹿な会話も今は清涼剤に変わる。無機質な場所と敵がそうさせているのだと思う。

「おやつはともかく、確かにガラス越しにカギが見えるね。下から回って取るのかな?」

「そうだと思います」

司令は状況を見て一瞬で構造の目星をつける。中はそこそこ入り組んでいるが、それはブロックのように区切られた箇所が多いからだ。おそらく進むルート自体は単純に一本道だ。

金網をくぐってカンケツセンを活用しながら回り込みガラス部屋のカギを回収する。

そこから出た後は再びタコドーザーが立ちふさがって妨害してくる。今度は床にインクが乗るようになっており先ほどと同じ手は使えないようにされている。

「ポイッとしてシュッてやったらいけるんとちがう?」

「……ポイッとしてシュッ?」

「目の前にあるヌリホイールをブラスト君が動かして、すぐにドーザーを止めに行くってことかな?」

「さすが女将、わかってますなぁ」

ずいぶんと抽象的だったフウカの言葉を司令が的確に翻訳したことで、スムーズに行動できタコドーザーを抜ける事ができる。

リフトで飛び移りタコドーザーの上から回ってカギを回収すると、カギドアのエリアに戻ってドアを解錠する。

中からは感圧式スイッチとヌリホイールが現れて、感圧式スイッチの方は押せば壁をせり上げた。

僕がスイッチをふみブラストは壁が動いたタイミングでヌリホイールを転がす。司令はそれを追いかける形で壁を登って、ブラストをこちらに投げ返しスイッチの上に立たせる。

僕も続き壁に登ってブラストをカモンをかけ、大ジャンプでこちらに戻った。

先にはタコマンダーとスナイパーが一つずつ見えるから、ブラストが先行で出て手際よく敵の前にあるホイールを起動すると一つ間を置いてほぼ同時にそれらは爆発した。

安全が確保されたのを確認し前進する。目の前にガラスごしに出口が見えたところで司令に止められた。

「待って、ワタシが先に行く。ブラスト君を構えて待ってて」

「何か考えが?」

「考えというよりカンかな。ワナっぽそうなんだ、この感じは」

ある程度司令が進むと背中に赤いレーザーポインターがつけられる。とっさに上を向けばタコスナイパーが天井に張り付いて狙っていた。

僕はブラストをそいつに投げ危険を排除。スナイパーからこぼれたカギを回収した後、大きなカギドアを解錠する。

ドアの先で見慣れた機械の上に立つと剥奪された装備が返還された。戻ってきたヴァレチスで装置の右手にあるダクトを塗って抜け出した。

 

抜けた先は施設側面で、いやに漂白された真っ白い壁がこちらを見る。遠方には目的のロケットが見えて通信が入る。

『クマサンとやら、ワシを縛り付けてどうするつもりじゃ!』

『……ワタシはこれからこの地球(ほし)に生きるものすべてを救う。キミはその手伝いをしてくれたまえ、地球(ちきゅう)の代表としてね』

『すべてのものを救う、じゃと?』

『安心するといい。すぐにキミは自由になれるし、新しい世界の扉を開くことも叶うよ』

『おヌシ、いったい何を言っているのじゃ? 話がさっぱり入ってこんわい……』

通信からは換気扇のようなものが回り続ける音しか拾わなくなったので、通信機の音量を縮めて先に進む。

「ねぇ、3号。クマサンの言った『すべて』ってどれくらいだと思う?」

「……言葉の意味をそのまま受け取るなら地球全体、ですね」

「それを救うの、ワタシだったらできないな」

「……全くです。ただの1人も救えないことだってあるんですから」

真っ白い通路を黄色に染めながら司令と哲学をする。それはただクマサンの謎を知りたいのか、無機質な世界に抽象的すぎる思想が気持ち悪いからか。

その謎はそう遠くないうちに解ける。振り切って通気管から侵入した。

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