スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
紫の光に包まれたロケット内部は大筒を中心に螺旋の道が上へと登っている。
アナウンスされた名前は『あんぜんフロンティア号』。オルタナの中で1番祈りが強い名前だと感じる。
「ここに元司令が……行こう3号」
「ええ」
小さく目的を再確認してその通路を駆け出すと、それを阻むかのようにタコゾネスはこちらを見て撃ってくる。
4体編成で攻めてきたそれらはひとりが突撃。左右に2人を時間差で展開し確実に逃げ場をつぶしてくる。残った1人がサブウェポンで支援しているから万一しとめ損ねてもカバーできるよう綿密に練られている。
狭い通路でここまで撃たれたなら普通は戦慄する場面だがその条件自体は相手も同様。司令のシューターによる牽制連射で一瞬止まった相手は射程と威力の面からヴァレチスに撃ち抜かれる。
足場の関係上相手が団子状になりやすいからフォトンがよく通る。
「ありがとうございます」
「こんなところで止まってらんないもん。次行くよ!」
その要領で螺旋の坂道を駆け上がっていく。気持ち悪いくらいにタコゾネスしか敵がいないから消耗の大きさはあれど、言うとおりその程度で止まっている訳にはいかなかった。
先ほどの整理された足場とは違って所々にケバインクがこびりついている。もちろん触れば虹色に塗りつぶされる。
そんな悪い足場でタコゾネス達がお構いなしに撃つ姿は、ゴーグルの下に狂気が隠れているようだ。
「……このタコゾネス達、今までとは全然違う」
「違う?」
「ワタシはなんだかんだ7年間タコ達を見てきたけど、このロケットの中のゾネス達って連携がいつも以上に強い気がする」
そうつぶやいたから僕は記憶の中のタコゾネスと照らし合わせる。
確かに比較をしてみるとオルタナのミッションで配置されていたタコゾネス達は練度こそ高かったが、それはひとりひとりの実力で殴りかかってきたように思える。
それに比べるとこいつらは1人の実力はさることながら、1匹の大きなエモノでも狩るかという連携でこちらを狙ってくる。
「くおり、かるかけこくらろ。くろれくあしゃりあ」
「ひとりひとり持っているブキも違う? ……確かにシューターじゃないみたいだな」
その点に着目すると、タコゾネスの手には統一規格のシューターではなく二丁拳銃のマニューバーやローラー、チャージャーにスピナーとブキ種もバラバラになっている。
しかし妙なのは様々なブキ種に対してサブウェポンがスプラッシュボムで統一されていることだ。
そこである種の既視感におそわれた。
『兄さん、イクラをとるバイトって聞いてたけど具体的に何してるの?』
『ああ、海からあがってくるオオモノシャケを4人で倒すんだ。やつらはデカいし強いから役割分担とフォローが大事なんだよな』
『オオモノシャケを倒して金イクラを得る。支給されるブキは毎ウェーブごとに変化するがボムは固定されている……か。実際にやらないと想像がつかないな』
似ている、サーモンランの状況と。
憶測だが、このタコゾネス達は僕らがオオモノシャケか何かに見えていてそれを狩ろうとしているのだろう。それならこの連携もブキの状況もなんとなく納得がいく。
「炸裂させて追撃で……!」
司令はチャージ弾で散開しようと試みるタコゾネスに攻撃を浴びせ全滅させる。
サーモンランはオオモノシャケ1匹のために全滅する事があるらしいが、それをシャケ側から見ればこうなるのだろうか。
そんなことを考えながら中腹のインクレールを起動する。
「ここいらはさすがに敵のガードがかたいのう……」
「でもわりとひょいひょい倒していってるで?」
『すごーい!』
レールを渡りきり穴を壁でつたって向こう岸へ。出口も近づいて敵は最大の防御をはってきた。その数はざっと4,50体。
「うわぁ……道がまっちゃいろだね……」
「任せて! なんかダイオウイカとウルトラハンコ見つけたがらこれで突っ切る!」
進路左側は司令がダイオウイカで、右側はウルトラハンコで僕が前方の茶色を貫き叩き潰す。
それに関係なく、前方からは紫の弾幕で埋め尽くそうと容赦なく攻撃が飛んでくる。
「ぐっ……」
「ワタシを盾にして! カトレア君はこんなところで止まれないはず!」
司令はダイオウイカのアーマーで無理やり前へ出て道をあけながら攻撃をはじく。
そうだ、この程度で止まれるものか。
この程度で止められるものか。
「この程度で、塗り潰されてたまるか!」
想いのまま、身体にこもる熱さのままに相手を殲滅する。
強行突破の先に上層へのジャンプポイントが見え、ハンコを投げ飛ばしてそこへの道を作る。
「あ! まってこれ……オオデンチナマズじゃない!?」
1号が声を上げたので見渡せばロケットの中心部分にガラス管が設置されており、その中に名の通り巨大なナマズの姿が浮かべられている。
その事実を確認するまで忘却の彼方にあったが、この大仕事の大元を辿ればバンカラ街から消えたエネルギー源をオクタリアンから取り返すことにたどり着くのだった。
「これがオオデンチナマズ……この1匹であの大きさのバンカラ街全てを補っていたのか」
実物を見たことがなかった僕は想像以上の巨体と実績に驚愕の声を出す。5,6メートル程はあるナマズが蓄えているその電力を今はロケットの動力か起動かに使われている。
『──それに、いざという時になったら君の大切なもの、もしくはそれ以上のものを賭けてもらうことになるかも知れない』
『それは……命を?』
『事が大きくなれば、それも……いや、みんなの命までかかることも有るかもしれない』
契約の時に言われた言葉をそこで真に理解した。
New! カラストンビ部隊がこのオオデンチナマズを取り返せないことは、すなわちこの世界の滅亡を意味する。その影響を受けるのは当然世界中すべての生きているもの達だ。
「急いでオオデンチナマズを取り返すよ! 世界が虹色になっちゃう前に!」
「……はい!」
司令にはあとで文句の1つでも言ってやろうと思いつつロケットの上層に向かった。