スプラトゥーン3 return to the beginning 作:キール・フェストリー
意識が薄い光とともに上がってくる感覚。それに揺らされてまぶたを開ければ、柔らかいランタンの光と司令の顔が入ってくる。
「おはよう、目が覚めたんだね」
「……ここは」
「シオカラキャンプだよ。あの後ワタシ達がここまで運んだの」
その言葉を聞いて記憶の糸をたどる。
そうだ、確か宇宙でクマサンと戦って、決着をつけて気を失ったんだったか。
「ブラストは、どうなりました?」
「後ろで寝てるよ」
そう言われて起き上がり振り返ると、寝息を立てながらつぶれているブラストがいた。
その寝顔は安堵しきっていて、とても身に神魚を降ろしたものとは思えない。
「ごはんでも食べる? トーストならあるよ」
「そうします。僕もいろいろ言いたいことがあるので」
寝室代わりの黒いテントから顔をだして外を見れば、相変わらず機械的な青空と1号2号の背が目に入った。
そこから一歩踏み出して雪を踏む。心なしか感触が水っぽいのは空調の故障かそれ以外か、どちらにせよそんなに悪い感覚ではない。
「あ、3号おはよー!」
「ん、3号の分もあるから食べてええよ~」
誘導された席には小麦色に焼けたパンが皿に乗っていて、もうすでに何かが塗られている。
机にあるビンのラベルから、今日はマーマレードが塗ってあるらしいことがわかった。
「では、お言葉に甘えていただきます」
「──しかしひどいですよ。30万で世界を救えだなんて」
「ごめん、流石にここまでの規模になるなんて予想できなかった」
食事の途中、恩人とも言える司令に悪態をつく僕はたぶんかっこ悪かっただろう。ただ、冷静になれば文句の一つや二つ言っても怒られないはずだ。
正直この対価は、命やそれ以上のものを賭けてやったこととして割にあってなさすぎる。
「ワシからも5万出すから勘弁してくれんか?」
「……金だけで考えれば最低でもその4倍は欲しいですけどね」
「う、さすがに140万を渡すのは難しいかも」
「儲かってないんですね?」
「そんなには、ね……」
「3号、言い過ぎだよ!」
1号がついに声を上げた。言い過ぎなのは理解していたし、これ以上はみっともないと考えてそこで追及するのを止めた。
「司令、大丈夫?」
「大丈夫、ワタシ、カトレア君が言うことも十分わかるつもりだから」
司令はトーストのひとかけらを口に含んで飲み込むと、軽く咳払いをしてこちらを見直した。
「50万が限界かな……それで許してくれる?」
「大丈夫です。こんなこと言った後であれですけど、僕は金よりも大事なものを得たと思ってるので」
「大事なもの?」
「なんというか、思ったんです────」
「宇宙で地球を見たとき、大きいなって。何も知らないなって……」
「何も知らないって、 ブラスト君といろんなところ回ってたんじゃなかった?」
司令は僕にそう聞いて首を傾げる。そういえばここに来るまでの空白を僕は家出と言ったが、ブラストは確か旅と言っていた気がする。
「僕がこうやって旅みたいな事していたのは恐怖心から逃げるためなんです。母さんなら金のためだけに僕を追うと思って」
「……そっか」
「なので、もう一度それらをめぐってよく知ろうと思います」
「3号の冒険が始まるんだね!」
話を聞いていた1号が椅子から身を乗り出してこちらを見てくる。それを少し呆れた目で見ている2号に同意しつつ、僕の中で一番重要なことを切り出す。
「でも、その前に家族と決着をつけないと」
「……家族と?」
さっきまでにこやかだった1号の顔が一気に曇る。それは2号や司令も同じようになった。
「家族って、あのお父さんとお母さんを?」
「でなければ、今から始める旅も逃げる旅になりますから」
語気を強めて僕は宣言すると震えた声で2号が疑問を投げる。
「仲直りするのは相当難しい気がするんだけど……」
その疑問に少し胸が痛む。
それはかつて兄さんが目指していたことで、多分僕にはできそうもないことだから。
「……十中八九、縁を切ることになるでしょうね。僕は今でもあの人たちが許せないから」
「カトレア君……」
「もういいんです」
僕は目を伏せて首を振った。
あの家に悔いがないわけじゃないが、ここや旅の道に比べたらもういられないし関わりたくないんだ。
「ワタシは、どうこう言わない。君の家族を本当の意味で知ってるのは君だから」
「……ありがとうございます」
僕は最後のひとかけらを口に入れ喉に通すと、食器を水場に持っていく。
「明日の朝にはここを
「こちらこそ、それと────」