スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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Last trip home

バンカラ街の中心から東に5キロほど行くとバンカラ東住宅街、さらにそこから北に約1キロでその家がある。

朝7時ごろにオルタナを発って歩き、家についたのは9時。太陽が当たって逆光となるそれはおぞましい雰囲気を出している。

『……ここが?』

「ああ、僕の家だ」

ブラストの質問に答え、リュックのポケットに入り込んだ小さな鍵を取った。

家族が嫌ならなぜコレを投げ捨てたりしなかったのか。きっと、僕も心のどこかで希望を捨てきれなかったんだと思いたい。

万一親を説得できたのならそれはそれでいいのだけど、無理だろう。僕はあの人たちを許せないし、あの人たちはきっと僕たちを否定する。

なら言いたいことを言ってやろうと思って家の扉を開けた。

 

「だから! あなたが金を入れてくれればいいのよ!」

「もう他人だ」

「離婚は成立してないわよ!」

自分が扉を開けたのにも気付かず、両親は口論している。

母さんの金切り声で意識が飛びそうになるのを耐え、あえて乱暴に玄関の扉を閉めた。

その音とともに沈黙が一瞬訪れて、次にどちらかが玄関に向かってくる音がする。

「今更ATMのなり損ないが来ても遅いのよ!」

「……本当に今更帰ってきたよ。言いたいこと、たくさんあるからな」

「なによ、お前に発言権なんて──」

「上がるぞ」

目の前にいる母さんを押しのけてリビングに向かう。途中で僕につかみかかろうとしたらしいが、ブラストが小石のように立ちふさがったからこけて体勢を崩した。

リビングは物が飛び交った後があり、その状況で父さんは突っ立っていた。

「……誰だ」

開口(かいこう)一番その台詞なのは、この男がどういう人なのか再確認するにはちょうどいい。

『父さん』なんて敬称で呼んではいるが、実際その資格が有るかと言われたら無い。僕がそう呼ぶのは事実上そうだからとしか無かった。

「忘れるか。最後にあったのが10年前じゃな」

「そうか」

「それとも、忘れたふりをしているだけか? どちらにせよ相当な人でなしだけどさ」

「名前を忘れただけだが?」

「やったことまで忘れたとは言わせないぞ。それを含めてあんたは人でなしだ」

「そうよ、コイツは人でなしよ!」

「お前もな」

立ち上がってこっちに来たのか、母さんが僕の発言に便乗して父さんを罵倒したからくぎを差した。

母さんは被害者ヅラしてるが、僕にとってはどちらも人でなしの加害者だ。それを棚に上げてどうのこうのとは言わせるか。

「何で私も加害者なの!? 私はそいつに全部奪われたのよ!」

「そういうことでは確かに被害者だよ。ただ、それで我を失ったあんたは俺たちの人格否定をして兄さんを殺した。その上でそれを肯定した。十分加害者だろうが」

「これだから男は嫌いなのよ!」

「俺は男だよ」

「ッ!」

正直正しい返答にはなってないが、相手はそれでうろたえる程に理屈がないのだろう。

変な理屈でカルト宗教を立てた教祖様なんてそんなものなのかと拍子抜けした。

「宗教など、成立させなければ良かったのだ。そんなことをするから金が尽きる」

「でも、母さんがカルト宗教を立ち上げたのは誰のせいかな?」

「本人の気が触れたせいだ」

「それは半分そう。ただ、大元を辿ればあんたの浮気が原因だ」

「私のせいだと?」

「母さんがイカれてこんなことをしたのは、子供もいるのにあんたが浮気して金を入れなくなったせいでもあるんだよ。残った金をぜんぶ高級嗜好品(ガラクタ)に溶かす方も溶かすほうだけどな」

最初はどこかとたどっていくと、結果的にそこにたどり着く。

両親は今度、その過失について口喧嘩を始めた。酷すぎてため息しかでないようなことだけど、それが僕の親という全貌だった。

「兄さんがなんで必死に金を稼いでたか、わかろうともしない家族なんてそんなもんか」

「私のため以外何があるって言うの!?」

「私の代わりに稼ぐためじゃないのか?」

「……はぁ、これじゃあ兄さんがかわいそうだ。あんたら親を仲直りさせたいってがむしゃらだったのに」

「仲直り、だと?」

高級嗜好品(ガラクタ)に金を突っ込んでも生活できるくらいの余裕ができれば、母さんは父さんと話し合いするくらいの頭が戻るって算段だった。だけど実際はこのざまだよ」

「趣味くらい良いじゃないの! それを否定する権利はないわ!」

「……この女に説得されたところで私はネリネのもとから離れる気はないが」

 

もとからこいつらを許す気なんてなかった。

なかったけれども、なにか底が見えてしまった気がした。

僕らより自身を優先しすぎる親なんて。

僕らのことを見ない親なんて。

愛してくれない親なんて。

過去にどれだけ優しかったとしても、もう受け入れられなかった。

 

「……人って変わらないもんだね。そうは思わない?」

先ほどまで怒りに満ちていた声は呆れに変わっていて、ぽかんと両親がこちらを見た。

「ああ、別に答えは求めてないよ。もう出てるから」

そういってヒーロータンクの収納からもらった金のうちの6割を取り出してテーブルの上に置いた。

「一体どうしたの。気でも変わったかしら」

「これは手切れ金だよ。30万、息子の最後の情けだ」

「は……?」

「この家を出た瞬間から、僕はもうあなたたちの息子では無くなろうってこと。だから追ってくるな」

「この女なら追いかねないぞ」

「ちょっと! こんな不良品いらないわよ!」

嫌に冷たい声と痛い金切り声が響くのにうんざりして、タンクからヴァレチスを引き抜く。

ろくに照準を見ないで撃った弾は、喧嘩している2人の間を()()()通過し、たまたま射線上にあったテレビの液晶を割った。

「追いかけてきたら、あてる」

その弾に震える男女を置いて、僕は家の玄関の扉に手をかける。

『コレでいいの、アイボー?』

ブラストがそう聞いてきたから僕はヴァレチスをしまいながらブラストに言う。

「これでいいんだ、行こう」

 

そうして僕は扉を抜けた。

この地獄に、終わりの言葉をつぶやいて。

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