スプラトゥーン3 return to the beginning   作:キール・フェストリー

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More than a tool, less than a partner

「3号は、相棒のコジャケに名前とかつけてないの?」

いくつかミッションをこなし、帰還した俺を迎えたのは質問だった。

「こいつは相棒じゃないです。勝手についてきただけなので利用してます」

「……くおーぅ」

我ながらひどいことが言えたものだと後から思う。

それはやつを『道具』であるといっているものだ。それは事実だが、少しの嫌悪感があったことには目をつぶる。

「なんかさっぱりしちゃってるね……そうだ! ワタシが名前つけちゃっていい?」

「……べつに構いませんが」

俺が許可を出すと司令はやつを上から下までじっとみる。

やつはコジャケとしては大きくまるまるとしていて、アタマのトゲトゲとした髪のようなものが特徴だ。

他と言えば緑のパンツに見える模様に出っ張った目、稚魚がそのまま大きくなったような体つきをしている。

「──うーん、髪がトゲトゲしてるから……ニードル? なんか直球だなぁ……」

こんなことにうんうん悩む司令は、はっきり言って馬鹿っぽい。契約するときの鋭い視線はどこへやら消えてしまったように思える。

「トゲトゲ、勢い……爆発してるみたい? あっ!」

 

「『ブラスト』なんてどうかな?」

 

なぜ、よりにもよってその名前を司令は選択したのだろうか。

ただの偶然なのは知っている。

知っているが

 

『──ごめんな、ダメだった────』

 

『──あの子がいけないのよ────』

 

このときばかりは、廃プラットフォームの時より強くなったフラッシュバックとともに司令を恨んだ。

 

「くおー、くおー?」

「どうしたの?」

「いや、いい……名前だな、と」

そう言い捨てて、俺は次のヤカンに向かった。

 

そのヤカンの無菌室に入ると厄介な条件のもと、持っていた武装を剥奪された。

コジャケと共にゴールしましょう』という、まるでイルカが先程の会話を聞いていたかのようなステージである。

こいつはブラストという立派な名前をもらったが、俺はその名前を呼ぶ気になれなかった。そんな状態でこのミッションを完遂できるのか?

──いや、雇われた以上はつべこべ言わず業務をこなすべきだろう。

俺はやつを片手に改札を通った。

 

メインウェポンが使用不可な以上はインクを塗れないのだから、あらかじめ自分色のインクが道なりに塗られていたのは助かったと思った。

それに従って進み、木箱の壁を横のボム風船をやつで起爆する。

無言で「ついて来い」と合図を送ればやつは背中に収まって待機した。

俺は金のため、やつはおそらく食のため、利益のための最低限な連携。

いくらついてきただけ、利用しているだけとはいえ9ヶ月くらいは共にいる。

それくらいはできて当然だ。

でんでんスイッチをやつが回してリフトがくるくる回る。

それを手際よく乗り移り向こう岸へ向かう。

「すごい、 息ピッタリだね!」

「これでも半年以上いますから」

1号の賞賛を軽く流し風車のようなリフトに乗る。

風車をでんでんと回し、中央にあるカギを回収。そしてカギドアのスーパージャンプで次のエリアへ向かう。

そのエリアはボム風船と太鼓、それに意味ありげな構造体で構成されている。

構造体にボム風船が道なりに設置されているところを見れば、でんでんスイッチで構造物を回し、ボム風船の連鎖爆発で終点の木箱を破壊しろ、と言うことだろう。

やつをスイッチに投げ込み連鎖爆発させられそうなルートを構築した後、恐らく目線では届かないだろうから

「……カモン」

と、声をかけて呼び戻しボム風船の方に興味を移させた。

連鎖爆発は予定通り行われ、終点の箱から次のカギとイクラ缶を取得し、先にあったジャンプポイントを解錠。飛んで最終チェックポイントを切る。

右上に見えるゴールを、2つの風車のようなオブジェクトを回しながら壁を登ってたどり着くのが最終関門だろう。

だがご丁寧に整備されているから、今まで歩いてきた荒野や氷河に比べれば軽い障害だ。

やつで風車を回しながらタイミングを見計らって登り、床となった風車の上で呼び戻して2つめの風車で同じ事をし、たどり着いたゴールポイントもやつで形成。

認証を完了し、また気絶するように帰還した。

 

「おかえりー、ブラストくん、大活躍やったね」

「……ええ」

帰還して2号が迎えてくれたが、やつにつけられた名前が呼ばれるたびに軽いフラッシュバックを起こすから勘弁してほしいと思った。

足元でやつが跳ねながらくおくおとしゃべっている。

「『初めて声をかけてくれた』? そういえば明確に……おまえに向かって言葉をかけたのは初めてか」

「ブラスト君の言葉が分かるの!?」

「……さっきも言いましたが半年以上います。なんとなくなら分かりますよ」

司令の質問は予想の少し斜め上だったが、それもおそらくは予想の範囲内だと結論づけてフラッシュバックを振り切る方へ集中した。

「くお、くおくおくるー」

「……『相棒、よろしく』。相棒、か」

くおうくお!

「……ああ、改めてよろしく、な」

 

こいつを『道具』というのは語弊がある。

こいつは曲がりなりにも意思があって生きている。

だが『相棒』というのは、それはそれで語弊がある。

俺はこいつの意思を無視して使っている。

ただの道具ではない、しかし相棒でもない。

この奇妙な関係をなんというかは知らない。

ただ確実なのは、こいつが『()()()()』であるはずはない。それだけだ。




キャラクター紹介

ブラスト
カトレアに勝手についてきたコジャケ。
食いしん坊でサボテンが好物。
どこから来たのか、なんでカトレアについてくるのかわからないコジャケ。
好物はサボテンで、キャンプにあったサボテンを丸ごと一本食べてしまった経歴を持つ。
ジャンクの優劣を見分ける力があり、カトレアが生きていけるのはこのコジャケのおかげと言っても過言ではない。
カトレアのことは相棒と思っているが、カトレアの反応はよろしくない。
なぜかケバインクにふれても平気、むしろ食べることもできる。
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