透明少女な双子の妹が普通科からヒーロー科を目指す話(仮)   作:峰下抄

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独自設定あり。諸々初投稿なので、至らぬ点があると思いますが宜しくお願いします。


第1章 雄英体育祭
1.ヒーロー科には落ちたけれど私は元気です


 私の名前は葉隠 (かすみ)

 雄英高校ヒーロー科1年A組、葉隠透の双子の妹にして、同校普通科1年C組の生徒だ。

 

 

 ヒーロー科の姉。普通科の妹。

 いや、うん。受けましたよ、ヒーロー科の入試。

 でも落ちました。途中までは順調だったんだけど、不運と油断でやらかして落第しました。

 幸い、普通科も併願してたし、学科試験については姉よりも自信ありましたし、そちらでは合格を貰っていて。

 

 それと、入試の合否とは関係ないところのトラブルもあって、学校側も配慮してくれたのか不合格通知の時に一緒にヒーロー科への編入制度の説明をしてくれたのだ。

 普通科生徒でもヒーロー科への転科を希望し、十分な成績を示し見込みがあると判断された場合はヒーロー科へ編入が認められるという制度は、元々雄英高校にあったものなんだそうだ。

 ヒーロー科の入学試験は超高倍率のため、どうしても受験生一人一人を吟味することができない。それもあってヴィランロボットの討伐なんて言わば雑な実技試験を行っているのだが、それでは活躍できない個性を持った受験生も出てくる。それが、いかにヒーローとして活躍できる個性を持っていても、だ。

 ヒーローへの道は雄英高校だけではない、他の高校や大学のヒーロー科からあらためてヒーローを目指せばいい、という意見もあるが、いつまでもそうであっては雄英高校から排出できるヒーローの幅が狭まってしまう。

 教師陣からも問題視されてきていたということもあって、これを機にヒーロー科編入制度を改革する。差し当たっては編入カリキュラムを策定し、これを実施する、ということらしい。

 まだ正式発表はされていないので広言しないでとは言われていたけれど、あとで普通科の入学書類の中にこっそりと『ヒーロー科編入・特別カリキュラムの案内』の書類が混じっていたので、大々的に発表されるようなものではなかったようだ。

 ただ、手書きの文字で『雄英で待ってるわ』と付箋が張ってあったのは、きっと私だけに違いなかった。

 

 

 そうして私は普通科へ入学し、編入を目指すことになった。

 それまで姉は大変落ち込んでいて、実際に受験でやらかして不合格通知を受け取った私よりも落ち込んでいたのだけれど、ようやく雄英入学に前向きになれていた。

 あまりにも落ち込んでいたので、卒業式までのわずかに残った中学生活では姉の方が受験で失敗したんだな、と周囲からそっと距離を置かれていたりしたぐらいである。落ちたのは私だったのに。

 その誤解は多分解けてないので、雄英体育祭でヒーロー科生徒として姉の姿がテレビ中継されるまで続くだろう。

 交友関係が広く友達の多いはずの姉がそうなってしまうぐらい落ち込んでいたのだ。

 とにかく明るい、と評判で四人家族の我が家のムードメーカーでもあった姉。そんな彼女がしっとりしていた入試から合否通知までの期間、葉隠家の空気はありていに言うとお通夜であった。

 まあともかくこれでようやくいつもの明るい空気が戻り、二人の雄英合格祝いとして豪勢な食事が振る舞われることになったりした。

 

 

 その後、自宅から通うのかそれとも二人で雄英高校近くで暮らすのか、とか。

 ヒーロー科と普通科の入学案内の違いを確認したり、とか。

 雄英高校の設備や規模、ヒーロー科の授業構成に驚いたり、とか。

 編入したらまた別のクラスになっちゃうのかな、とか。

 そんな、他愛もない会話が繰り広げられた。

 

 

 そして来たる四月上旬、雄英高校の入学日。

 初日ということもあり、余裕を持って自宅を出発。二人で電車に揺られての登校。

 なにかとスケールの大きな校門から敷地に足を踏み入れ、やはりスケールの大きな学年・クラス別の昇降口で、二人の歩みは別れることになる。

 

「お姉ちゃん」

「ん?」

「ヒーロー科、頑張ってね!」

「霞も! ――待ってるからね!」

 

 私の手袋をつけた右手と、姉の透明な手がハイタッチを交わして、互いを激励した。

 

 

 

 

 入学式にA組の生徒の姿がなかった。

 

(――なんで?)

 

 帰宅後、姉に訊いたら個性有りの体力テストなるものを受けていたらしいが、式中の私はそんなことは知る由もなく、困惑の中で長い根津校長の話を聞いていたのだった。

 ネズミ姿の校長先生の姿を見るのは、合否通知で家庭訪問を受けた時以来の二度目だ。

 異形系個性が全身に渡る人は珍しいわけではないけれど、校長先生がそうだと知らなかった新入生は驚いているようだった。

 まあその驚きも長続きはせず、校長先生の長話に辟易とした空気に支配されていくのだけれど。

 

 

 A組不在とはいえそれ以外は何事もなく入学式は終わり、教室に戻るとあらためて一年C組のホームルームの時間。

 担任教師は香山睡先生――18禁ヒーロー『ミッドナイト』であり、その際どいヒーロースーツに教室がどよめいた。

 男子生徒はもちろん、私を含めた女子生徒もである。18禁ヒーローってなんだ……。

 現役ヒーローが教師を務めるのが雄英高校の最大の特徴と言ってもいいが、いざ実際に目の当たりにすると衝撃が大きい。いろんな意味で。

 ただメインの担当教科はヒーロー美術史ということで担任ながら受け持つ授業数自体は少ないとのこと。

 ヒーロー科では主要五教科に並んでヒーロー科用の授業があるけれど、普通科では副教科以下の特別授業のような扱いだ。いちおう期末考査ではまとめて1教科扱いでテストがある。

 続いて定番の自己紹介。出席番号順の席順なので、黒板に向かって右側の列から順々に立って一言。名前と個性を示していく。

 私の順番は14番目。四列ある机で、真ん中左、後ろから二番目の席。

 結構時間あるな、と思いながら先に挨拶していくクラスメイトたちの顔と名前を憶えていき、順番が9番目、右隣の男子生徒の番になった。

 

「心操人使。個性は『洗脳』です」

 

 にわかに教室がざわめく。これまで割と無難な個性で、普通科さもありなん、といった空気に強烈なインパクトを与える個性だった。

 私もおおーと感心し、そして背が高いなー、と思いながら隣の席に立つ心操くんを見上げていると、彼はさらに一言付け加え、教室のざわめきをもう一段階アップさせたのだった。

 

「――ヒーロー科への編入、目指してます。……よろしく」

 

 私が同志を見つけた瞬間だった。

 

 

 

 その存在は、普通科1年C組の教室において最初から目立っていた。

 制服のスカートとシルエット、頭の位置に浮かぶリボンから女子であろうとはわかるが、顔の位置には眼鏡が浮かんでいるだけ。

 派手な異形系個性が居ないC組において、最も異彩を放つ『透明人間』。それが彼女だった。

 

「葉隠霞です! 個性は見ての通り『透明』!」

 

 はきはき、と擬音が見えるような声。

 起立した姿とそのリボンと眼鏡の高さを見て、結構小柄なんだな、と隣の席で心操人使は思った。

 そして、透明で見えないはずの彼女の目が、ちらりと自分を見た、気がした。

 

「――双子の姉がヒーロー科で、私もヒーロー科編入目指してます!」

 

 席に着いた彼女は「よろしくね」と、見えないけれど大きな笑顔を向けてきたのだった。




 C組の担任教師、普通科におけるヒーロー科目のテスト、C組における心操くんの席順等は独自設定

 「明るい性格」の基準が姉のため、本人は普通程度(何だったらちょっと暗め)の性格と思っている
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