透明少女な双子の妹が普通科からヒーロー科を目指す話(仮)   作:峰下抄

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サブタイトルは投稿直前に考えています。


6.ほっと一息。小休止

『タイムアーップ! 第二種目、騎馬戦終了ー!!』

 

 マイク先生のアナウンスで騎馬戦は終了し、そのまま勝ち抜けチームが発表された。

 

「おお、爆豪くん、物間くんのハチマキ全部持ってったんだ」

 

 緑谷くんの1000万を取った轟くんチームが1位。

 物間くんにリベンジを果たした爆豪くんチームが2位。

 あ、マイク先生、鉄哲くんのは我々が頂きました。葉隠(妹)チーム、3位です。

 そして、轟くんのハチマキを2本奪って緑谷くんチームが4位。

 

 上位四チームが全て四人チーム、図らずも綺麗に16人が最終種目進出となった。

 

『それじゃあ一時間ほど昼休憩を挟んでから、午後の部だぜ! じゃあな!』

 

 終わったー! と騎馬を、というか尾白くんの背中を降りる。

 いや、とっくに降りててよかったんだけど、尾白くんの尻尾の安定感がやばくてね。競技中もめっちゃ安心感がありました。

 あらためて尾白くんに、そして青山くんにもお礼を言う。

 あまり目立ってはいなかったけれど、青山くんも時々レーザーでこっちくんなって牽制してくれていたりするのだ。動けなくなられても困るので、ほどほどにだったけれど。

 

「こちらこそありがとう」

「メルスィー☆」

「お疲れ様」

 

 心操くんもいつものポーカーフェイスが少し崩れてほっとした顔をしている。

 一番神経を使ったのは心操くんである。なんだったら私は結局ハチマキの透明化はせずに終わっている。

 幸運にも鉄哲くんチームに仕掛けた洗脳をかけ直す必要なく終わったけれど、動きのある騎馬の位置から相手四人に返事を貰うのは大変だった。

 しかも尾白くんと青山くんにも、具体的な個性の内容は隠せたんじゃないかな。

 会話がトリガーで相手に影響を与える系の個性だと思われてるだろうけど……、うーん、せめて最終種目中ぐらいは黙っててくれないだろうか。

 お願いしてみる? でもそれはなんか図々しいよね。直接対決するかもしれない相手なんだし、厄介な相手は潰れてもらうのが正しいし。

 

(私だって心操くんと対決するなら、全力でボコるし)

 

 最終種目まで来たら、あとはガチる算段なのだ。

 姉と対決になってたらどうしただろう? と思ったところで、はっとする。

 

 ――そうだ、姉は結局ポイントを取れず、敗退したんだ。

 

 そのことにようやく思い当たった私は、フィールドを見回した。いや、しようとした。

 

「霞ーーー!」

 

 姉の方が先にこちらを見つけて走ってきていた。

 それに応えようとする間もなく、姉は勢いそのままに私に抱き着いた。

 ぐぇっ、と変な声が漏れる。

 

「って、お姉ちゃん!? まだ服着てないの!?」

 

 気づくのが遅れるわけだ。体操服のズボンしか見えてなかったのだから。

 しかし、続く姉の言葉に私は再び驚愕することになる。

 

「それを言うなら霞もだけど?」

「はっ、――あああああああ!?」

 

 上着脱いでたの忘れてた!

 どーりで! 道理で、姉の肌の感覚がやたらと生っぽいと思ったよ!

 どこだ!? どこだ、私の体操服!?

 あった! って、遠いな! フィールドの反対側じゃん!

 

「……葉隠さん――あー、妹さん。霞、さん? よかったら使って……」

 

 一人パニックになりながら、あわあわしていると、尾白くんが彼の上着を脱いで渡してくれた。

 葉隠さんだと姉も反応しかけたので、言い直していた。そういえば下の名前をきちんと伝えてないかもしれない。なぜかスコア表示も『葉隠(妹)』だったし。

 

「うう、ありがとうございます。ちょっとお借ります……」

 

 ちなみに霞であってます、と恐縮しながら頭を下げる。

 尾白くん、ほんっといい人だなぁ……。しみじみとしてしまう。

 なお、姉はいいのかというツッコミが出てもおかしくないけど、姉はなんというか開き直りが凄いので……。

 ……そっち系の趣味だったりするのかなぁ……、双子ながらセンシティブすぎて聞けないんだよね……。違うとは思うんだけど。

 

 尾白くんの上着を羽織って小走りにフィールドを横切り、安置していた上着とインナー、その他装飾品を回収する。

 とりあえず眼鏡をつけて、リボンを結んで……インナーを、着る……? ここで……?

 いかにも私さっきまで裸でした、みたいな空気にならない? いっそ全部透明にしてから着る……? こんなんでせっかく隠してきた個性バレのリスク負う?

 もう昼休憩だし、控室まで行こうかな、でもそれだと尾白くんに服を返すの遅くなっちゃうかも、などと考えていると再び姉の声。

 

「霞、こっちこっち」

 

 ちょいちょい、と姉が腕を引く。付き添ってくれていたらしい。慌てすぎて気づいてなかった。

 見るとフィールドの端っこにセメントス先生が更衣室めいた空間を作ってくれていたらしい。姉はそこで服を脱いできていたそうだ。

 セメント製の簡易的な作りは、某ブロックな箱庭ゲームでいうお豆腐ハウスみたいで、こんなときでなければ写真に残しておきたかった。

 

 ともあれ、ようやく落ち着いて服を着れる。一旦眼鏡とリボンを外して、あらためて着込んでいく。

 長袖、手袋、リボンに眼鏡。よし、これでどこから見ても私だ。

 隣を見れば、体操服を着た姉の姿。とても見分けやすくなった。

 

「お姉ちゃん、尾白くんの上着を返すのお願いしていい?」

「いいよー。まかせなさい!」

 

 お礼の気持ちを込めて、丁寧に畳んで姉に渡す。よろしくお願いします。

 

「んふふ。――おめでとうね、霞」

「……ありがとう、お姉ちゃん」

 

 服を着て姉が腕を広げたのがわかったので、私はそのまま抱きしめられて、ハグを返す。

 少しだけ脱力して、姉の暖かさを確かめた。

 ぽんぽん、と姉の手が私の背中を叩いてあやす。

 

「午後もあるけど、ひとまずお疲れ様」

「ん……」

 

 体力的にはまだ充分余力があるけれど、第一種目、第二種目と立て続けに気を張り続けていたので、精神的な疲れは感じていた。

 

「お姉ちゃんも同じ種目やってきたのになぁ……」

「姉の威厳というやつなのだよ」

「うーん、否定できない」

 

 体力も精神力も、私に比べて強靭な姉だ。

 というか、私が割とへこみやすいというか。

 我ながら見栄っ張りなので、ふっと息切れしたときにガクンと落ちる感じ。

 

「ん。充電完了」

「もう平気?」

「うむ。お昼のカロリー取らねば」

 

 お昼休憩は1時間しかない。もう結構時間を使ってしまっていた。

 お豆腐ハウスを後にして、食堂を目指してスタジアムを退出する。

 

「お姉ちゃんはレクの方に出るの?」

「んー、全員参加だし、そのつもりだけどクラスのみんながどうするかかなー? 霞は?」

「種目と組み合わせ確認したら、心操くんと作戦会議するつもり」

「おおー! ガンバ!」

「去年がスポーツチャンバラだったからなー……。今年も同じってことはないだろうなぁ……」

「去年だったら剣道経験が活きてたのにねぇ」

「言うて週1レベルは経験と呼べるほどでは……。あ、尾白くん凄いね。フィジカルも、尻尾も」

「あの尻尾は至高ですよ。霞もわかったかね」

「あれには魔力がありました。人をダメにしそうなレベル……ていうか、もうA組は何人か陥落してそう」

 

 クラスの集まりで別れる途中まで一緒に歩いて、益体もない姉妹の会話を楽しんで気持ちをリフレッシュさせた。

 

 

 

 全員参加可能のレクリエーションがあるとしても、――姉の体育祭は終わった。

 そのことを後ろめたく思う気持ちは、止められない。

 けれど、それを口には出さない。

 姉が悔しく思ってることも、私の予選突破を喜んでいることも、どちらも本当で。

 私は、姉のその気持ちを大切にしたい。

 

 

 ……それはそう、なんだけど、

 

 やっぱり、

 

 姉と一緒じゃない、というのは、

 

 寂しいなぁ――なんて。

 

 

 

 

 

 

 昼休憩が明けたら、なんか、姉たちA組女子が、チアガールになっとる。いったいなにが。

 A組男子の誰かに騙されたっぽい。ああ、噂に聞く峰田くんとかか……。

 まあ、姉はこの手のアピールは好きだから、私は何も言うまい。

 

 

『さあさあみんな、楽しく競えよレクリエーション!

 それが終われば最終種目進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式、1対1のガチバトルだ!!』

 

 定番の流れでマイク先生のアナウンスし、ミッドナイト先生がくじ引きボックスを取り出した。

 1位のチームから順番にくじを引いていき、つつがなく組み合わせが決まった。

 

 

 緑谷 対 心操

 轟  対 瀬呂

 芦戸 対 上鳴

 飯田 対 発目

 尾白 対 切島

 常闇 対 八百万

 青山 対 葉隠(妹)

 麗日 対 爆豪

 




原作と違い、B組からの進出者がいなくなりました。鉄哲くん、塩崎さん、ごめんなさい。


(1/11) 最後の組み合わせ表で、心操対緑谷になっていたのを原作通りの順番に変更しました。
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