読む方法を前提として書いています。
※これは後にシュガー・ラッシュ3を
描くための基盤作りの物語です。
〈シュガー・ラッシュ〉全土に
アナウンスが流れます
『君だけのカートを作ろう』
「?」
キャンディツリーの森にも
例外なくアナウンスが流れます
それを聞いたラルフにはピンと来ない内容でした
◇
「ヴァネロペ…」
2頭身のキャラクターが恨めしそうに
ヴァネロペの名を口にします
モニターの表示には
【タフィタ・マトンファッジ】
【ヴァネロペ・フォン・シュウィーツ】
に赤いバッテンのマークがついています
◇
少し前
「どこもかしこもお菓子だらけで嫌になる」
キャンディツリーの森は同じ景色が続いています
模様や大きさが様々ながら
意識的に観察しなければ
そのどれもが同じに見えてしまうほどです
「確かにこっちから音が聞こえたんだが…」
キャンディツリーを掴みながら
歩き続けるラルフですが異音を耳にします
聞き慣れた不快な音
ヘリコプターの羽音が聞こえます
「サイ・バグか!?」
◇
プレッツェルを抱えた少女が
キャンディツリーの森を走っています
その後ろにはサイ・バグが近づいています
今にも少女を飲み込もうと
大きく開いた口が迫っています
サイ・バグの爪が
少女のポニーテールを掴みます
「離してよ!苔むしたゆで卵!!」
少女は抵抗しますが
サイ・バグが怯むことはなく
口内の怪しい光が眼前に迫ります
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
【砕ける音】
…固く閉じた瞼の先で異音がしました
「こいつ!こいつ!!消えろ!!!」
低い男の声が続いて聞こえました
◇
目の前を飛びまわる
サイ・バグを確認したラルフは
大岩を思わせる握り拳を振り上げ
大きな声でサイ・バグを威嚇します
「壊してやる!!」
跳躍と同時に振り上げた拳が
サイ・バグの頭頂部を粉砕します
しかし、お菓子の装甲により
致命傷になっていないようですが
ラルフの攻撃は止みません
サイ・バグが視線を移そうとしますが
続くラルフのアイアンクローにより
下顎を残し、砕け散ります
ですがラルフは止まりません
力なく倒れ込もうとした亡骸に
ラルフの拳が振り注ぎます
◇
「あぁ…」
ヴァネロペが恐る々目を開けた時
やられたであろう何かを
執拗に殴りつける鬼の形相が目に入ります
なんと助けてくれたキャラクターは
いつぞや
ヴァネロペが盗みを働いた人です
「に、にげなきゃ」
震える手で地面を掴みますが
腰が抜けてしまい身動きがとれません
気がつけば地面に
大きなひび割れができています
「…」
「よし…」
何が
大男が拳を解き自分に向かってきます
「ッ!!」
「おい!あんた、大丈夫か?災難だったな」
再び固く閉じた瞼
しかし、その覚悟に反し
瞼の向こうの鬼人は
優しい口調で話しかけてきました
「おい!本当に大丈夫か?
なんだったら
「あんな奴ら!
ヴァネロペは声を張り上げて否定します
「おい、あんたノイズが」
「ッ!!だったらなんだってのよ」
ヴァネロペが大男を睨みつけます
大男は先程までの鬼面ではなく
人を心配する顔をしていました
除け者を見るような目ではなく
奇妙なモノを見るような目でもなく
ただ心配している目をしていました
「なるほど」
「!?な、何よ…」
大男はヴァネロペの涙を拭います
◇
ラルフは何となく手を前に伸ばします
指の腹で少女の涙を拭いますが
少女に払い除けられてしまいます
「何?おじさんペドフィリア?」
「いや、そんな趣味は」
手を挙げたラルフは少女から数歩下がります
その様子に少女は続けます
「助けてくれてありがとう
私だけでもどうにかできたけど」
「おい!それが助けて貰った礼か?」
「助けた?あれを連れてきたのも
あんたでしょ!」
「それは…何で知ってるんだ?」
ラルフが言い淀みますが
少女に詰め寄ります
「ゲームエントリーにメダルじゃないのが
あったのよ?それからあんたが来た
これは偶然?」
「いや、それは」
「それに勲章?おじさん、兵隊なの?
だらしない格好に、裸足で?」
「おい、ちょっと待て」
「あともうひとつ質問
なぜおじさんはメダルを取れたのでしょう?
なぜ?っていってみて」
「何故?」
「ヒーローズ・デューティで盗んだ…」
「違う!!」
「ッ…」
振り下ろされた拳が
ひび割れを更に大きくします
「あぁ、いやごめん、わざとじゃないんだ
それより勲章のことなんだが」
◇
「使われた!?」
「今夜のレースの参加料にね」
「おい、嘘だろ」
ラルフは腰を地面に下ろし
項垂れてしまいます
「それなんだけど」
そんなラルフにヴァネロペは交渉を始めます
◇
「勲章が手に入るのか?」
「正確にはメダルになっちゃうけど」
「でも、それだとお嬢ちゃんに
何の得もないじゃないか」
「助けてくれたんだし
ほんのお礼だと思ってさ」
「わかった…それでお嬢ちゃん」
「ヴァネロペ・フォン・シュウィーツ
ヴァネロペでいい」
「それじゃぁヴァネロペ」
交渉が済みヴァネロペが手を差し伸べます
『君だけのカートを作ろう』
「?」
「あ〜、そのことで一つ相談なんだけど」
握手をしたラルフに
ヴァネロペは気まずそうに話します
◇
「へぇ…嘘をついたわけか」
「嘘じゃない!カートは壊されたの
だから工場に行って新しく作らないと」
ヴァネロペはキャンディツリーの森
チョコレートの岬を超えた
カプリコーンの丘にある
工場の煙を指さします
「あそこでね」
「嘘じゃないだろうな」
「嘘じゃない!新しいカートを
手に入れるのを手伝ってくれたら
必ず優勝してメダルを手に入れてあげる!」
ヴァネロペは再び手をさし出します
ラルフはどうしようかと考えます
「Ralph!手を組も
握手して!ほら?早く!相棒!!」
「ほらほら、手が降りていっちゃうよ」
「わかった、裏切るなよ?」
ラルフは気が進まないながら
ヴァネロペの手を握り返します