読む方法を前提として書いています。
※これは後にシュガー・ラッシュ3を
描くための基盤作りの物語です。
◇
シュガーコーティングは焼き焦げカラメルに
チョコレートは溶け、ひび割れ、厚みが不揃い
タイヤの種類は全て違います
サイズが合っていることが救いです
ぐちゃぐちゃのカートを前に
ヴァネロペは黙っています
「おれは壊してばっかりだな…
これじゃあ新しく作り直すことも」
ラルフは
あまりの惨状に否定的ですが
「これ…最高!」
ヴァネロペの感想は肯定的なモノでした
◇
「え?本当か?」
「最高だよ!ほら!本物のエンジン!!
それにこのタイヤ!!!」
ヴァネロペはカートの周囲をぐるぐると周り
カートの細かい部分を観察しては
歓喜のあまり飛び跳ねています
「とうとう本物のカートを手に入れたんだ!」
「あぁ…」
◇
そのころ
工場の守衛小屋ではぐっすり眠っていた
ビヤードパパは
ただならぬ騒音で目を覚ましていました
寝ぼけ眼で電話を掛けている様子です
なぜなら
煙突から白煙と黒煙が上がっているのです
壊れた扉、火災報知器、防犯カメラ
ビヤードパパは消防とは別に
何処かに電話を掛けています
「こちらビヤードパパ
ヴァネロペがベーカリーにいる!
大至急、大王に知らせてくれ!」
◇
「ほらほら!Ralphも!」
ヴァネロペは出来たてほやほやの
キャンディカートに
デコペンで名前と
カートの名前を書いています
『リケティ・スプリット2世
ヴァネロペと』
ヴァネロペはデコペンをラルフに手渡し
続きを書くように迫ります
『リケティ・スプリット2世
ヴァネロペとラルフ』
「へぇ、Ralphにも歯があったんだね
しかも生え揃ってる」
「え?笑ってない…
いや、少し笑ってたかも」
ヴァネロペは茶化しながら
カートの座席に座ります
ラルフはどこか満足げです
そこに響くサイレンの音に
二人はハッとします
「不味い逃げないと!」
「カートを出せ!早く!」
ラルフはカートに飛び乗るとヴァネロペに
発進するように催促します
ですがハンドルを握ったまま
ヴァネロペは激しくノイズを打ちます
「何をしてるんだ?早く逃げよう!」
「分からない」
「何?」
ノイズ混じりの声
3色にズレたテクスチャー
「運転の仕方が分からないの」
「何だって!?」
そうこうしているうちに工場に
サイレンの音が近づき
やがて止みます
「火事のあった建物に到着、消化活動開始」
二人は胸を撫で下ろしますが
「そこを動くな、ヴァネロペ!
ようやく見つけたぞ!」
続く
身体をこわばらせます
◇
工場の大きな扉が開いていきます
「あぁっとハンドルは動かせるか?」
「え?うん」
ラルフはカートから降りると
大きな扉とは反対側
円状の部屋に真っ直ぐ向かうと
入り口から対角線上
今はノイズ混じりの絵に向かって
殴り掛かります
◇
「ようやく目の上の瘤が…」
工場を取り囲むように配置された警察
大きな扉から一番離れた位置に
キャンディ大王がいます
キャンディ大王はヴァネロペを
捕まえることに固執していますが
キャンディ大王は自身も
それ以上に大切にしています
悲願達成に安堵した直後
顔面に瓦礫が炸裂しました
「陛下!?」
警察が警戒を緩ませた隙に
開いた穴から何かが飛び出します
「ヴァネロペ!!」
◇
チョコレート岬を叩く二つ一対の重たい音
それに合わせて何かが爆走しています
チョコレートに溶け込みながらも
僅かに覗くミントのボディ
辛うじて見えるその軌跡を
警察は見逃さないように
必死に追いかけています
「逃すな!!」
キャンディ大王の声が
チョコレート岬にコダマします
「どうするんだ?」
「ラルフは漕ぎ続けて」
リケティ・スプリット2世を操作する
ヴァネロペがハンドルを回すと
チョコレートの煙が上がります
乱暴に曲がった地形は抉れていますが
タイヤに使われている
・オランジェット
・オレオ
・キンタロ飴
・かぼちゃタルト の
いずれも形が崩れる、削れる
ひび割れることなく走行を続けています
「止まれ!国王の命令だ!
つまりわたしの命令だ~~!」
「たく、しつこい奴だ」
息切れ間近のラルフ
カートはキャンディツリーに突入します
次から次に手折られるキャンディツリーの枝
巻き上げる粉菓子が
煙の替わりに巻き上がります
「ラルフ、山に突っ込むよ!」
「何だって?」
「山の前に棒つきキャンディが2本あるの」
「だったら何だ!?」
「私を信じて」
ラルフが歩き通したキャンディツリーの森も
もう終わりを迎えます
グミ高原に差し掛かりました
色とりどりのグミが
目の端に消えていきます
空気も
鼻の奥につくような砂糖に匂いと
果物特有の匂いの混合風に変わります
キャンディ大王の一団は
近づいてきてはいませんが
追いつかれるのはラルフの体力次第です
「見えた!ラルフ!!」
「明日は筋肉痛かな…」
二つ一対の重たい音がペースを上げていきます
それに合わせてヴァネロペは集中します
ハンドルを切った先には山が見えます
その袂には棒つきキャンディが2本
互いを支える形で立っています
加速をそのままにラルフは目を閉じます
◇
「追い詰めたぞ!今度こそ…」
キャンディ大王は満足げです
諸事情によりグミ高原は開発が進んでおらず
いわば袋の鼠状態に陥りやすいからです
「やつらはどこへ行った?」
キャンディ大王と警察の一団が
グミ高原へと到着し
尻尾を掴んだと思ったのですが
するりと逃げられてしまいました
「確かにここを曲がったのに!」
最後に見えたカートの羽が
グミの敷き詰められた群生地に
入った所を大王は確かに見ていました
しかし大王が曲がり入った時には
影も形もありませんでした
「ウィンチェル、ダンカン
あいつらを探し出して、カートを破壊しろ!
絶対にヴァネロペを
レースに出すわけにはいかんのだ!」
キャンディ大王は
警察官のエクレアとドーナッツに命令すると
カートを発進させ、その場を後にしました