読む方法を前提として書いています。
※これは後にシュガー・ラッシュ3を
描くための基盤作りの物語です。
◇
青い空間を走っています
周囲に背景はなく床もなく
何故走れているのか不思議なばかりです
短い間にそんな景色が過ぎ
真っ暗な空間に出てきます
でこぼことした地面のようで車体が
激しく上下に揺れます
真っ暗な空間の先に
僅かに見える橙色の灯り
車体はそれに向け進み続けます
◇
そんな折、後輪が地面の凹凸に阻まれ
大きく車体が跳ね上がります
跳ね上がった車体からラルフとヴァネロペが
弾き出されてしまいます
◇
「おい、本当なのか」
車体から弾き飛ばされたラルフは
上下逆さまにヴァネロペを睨みます
岩に身を預けた姿で
ヴァネロペを問いただします
「何のこと?」
「運転の仕方が分からないって」
同じく車体から弾かれヴァネロペは
パーカーのフードが何かに引っ掛かっており
浮かんでいるような姿でラルフと話します
「まぁ、でも!予想なら」
「よそう?」
「カートがあればってのも嘘か?」
「…そんなんじゃないよ」
ラルフが手をつき身体を元に戻しますが
ついた手からひび割れが広がります
「…ッラルフ」
「何だよ」
「ここで物を壊さないようにね」
「おい、それはどういうことだ?」
ラルフがヴァネロペへと歩き始めます
一歩一歩がひび割れを生み
地面を揺らします
「お願いラルフ…落ち着いて」
「落ち着け?俺は落ち着いてる」
地面の揺れは激しくなっていきます
その度にヴァネロペは上を警戒しています
「ラルフ…」
「俺が壊し屋だからか?」
暗闇に慣れた視界により
洞窟の中であることがわかります
洞窟の中は閑散としており
荒い岩肌とその柱が並んでいます
天井から伸びた岩柱にヴァネロペの
パーカーのフードが引っ掛かり
揺れるたびに嫌な音を立てています
「メダルも嘘か?」
「違う…参加すれば誰でも手に入るの」
「それも嘘か?」
「ねえ、なんであんなどうでもいい
勲章にそこまでこだわるの?わかんない!」
売り言葉に買い言葉、弁解や嗜める言葉が続き
挙句には言い争いに発展しました
「どうでもいい?」
それがラルフの逆鱗に触れてしまいます
「驚くかもしれないけど、おれは
自分のゲームの中では悪役だし
ごみために住んでるんだ」
「そうなの?」
暗闇に慣れた視界により
ビターチョコレートの岩肌洞窟
光る橙色の液体
天井には鍾乳石を模した形で
白い結晶がぶら下がっています
色とりどりの表舞台が
『シュガー・ラッシュ』なら
モノトーンのこの世界は裏舞台と言えます
◇
「ああ、そうだよ
汚いし、ひとりぼっちで寂しいし
それに退屈だ」
ラルフはヴァネロペの
引っ掛かっている柱に手をつきます
「あのどうでもいいメダルで…
そんな人生が変わるはずだった」
柱にひび割れが伝染して行き
ラルフの後ろでは白い結晶が地面に
迫っていきます
「あのメダルを持って帰れば
ながめのいい部屋が待ってる
パイや、ダンスや、花火もな」
口調は落ち着いています
ですが足元のひび割れは競り上がり
揺れは確かに確実に
大きくなっていっています
「家族だって持つことができるかもしれない
大人の気持ちは
おまえにはわからないだろうけどな」
ヴァネロペが聞いているかに関わらず
ラルフは淡々と続けます
「ううん…わかるよ
あたしがレースに出たいのと
同じ理由だもん」
ヴァネロペに青いノイズが走ります
パーカーが在らん限り引き延ばされています
「あたしもレースに勝って自分を変えたいんだ」
本心か虚心か
分からない言葉がヴァネロペから紡がれます
それが逆にラルフの琴線に触れました
◇
「じゃあ、残念だけど教えてやろう!
おれたちの望みはどっちも消えたよ!」
「うわぁ!!?」
ラルフの拳が柱を砕きます
踏み込んだ足場が沈み込み
ヴァネロペは柱の上部から真っ逆さまです
【爆発音】
「何だ、あれ?」
「うっ」
ラルフの頭の上に落ちたヴァネロペ
二人は音のした方向へと歩いていきます
「いたた、メントスキャンディだよ暴れん坊
落ちてこないかってヒヤヒヤしてたんだから」
「ああ、ごめん」
頭の上のヴァネロペがペチペチと
ラルフの頭を叩きます
◇
「あっちぃな…」
「あー、忠告…飛び散るから気をつけてね」
「ご忠告どうも、それでここは何だい?」
「多分、完成しないままになっている
ボーナスステージかな?」
ここはダイエットコーラ山
未実装のボーナスステージ
消されなかったものの残った洞窟
閑散とした空間があるのみです