読む方法を前提として書いています。
※これは後にシュガー・ラッシュ3を
描くための基盤作りの物語です。
「見て見て、いつもここで寝てるんだ」
ヴァネロペは洞窟の中を案内します
とは言ったものの、ヴァネロペの居住区は
この先にあるアイス山脈の
寒さを凌ぐため
コーラの近くに居を構えています
加えて、居と呼べるものはそこになく
ベーグルベットにキャンディの包み紙
雑貨を模した小物
食いさしなどが転がっています
「おまえひとりで?このごみに囲まれて?」
「うん、そうだよ」
足場の悪い洞窟の中、コーラの泉の周辺
不自然に伸びたアーチ状の道が
コーラの泉の上を通っています
二人はゆっくりと歩き回ります
「みんなから、無視されるし」
ラルフは静かに独白を聞き続けます
「あたし
本当は、いちゃいけないんだって
だからしょうがないでしょ?」
振り返ったヴァネロペの表情は
コーラの灯りで目隠しをされますが
逆にその灯りに照らされた雫は
隠してはくれませんでした
◇
「なら、セントラル・ステーションに行けば」
「あたし、プログラムに
ヴァネロペが自分の身体を広げて
自身を嘲ります
それに呼応するように青いノイズが走ります
「だから、自分のゲームから出られないんだ
あたしって、ほんとにおもしろい存在だよね」
「え?でもお前…」
【爆発音】
「あぁ!もう何だよ」
ラルフの言葉を遮るようにメントスが
コーラに落下し、爆音を響かせます
揺れる岩に飛び跳ねる石や砂
それらを眺めたラルフはおもむろに
拳を地面に叩きつけます
「ちょっと!?何してんのよ」
小ぶりな岩や石が砕け、砂となり
拳台の平らな空間ができています
また一回、続けて二回
「こんなとこでも
あたしには大事な家なんだから!」
「変えたいんだろ?」
「?」
コーラの泉をぐるりと囲む形で何度も
拳を小刻みに振り下ろし舗装をします
「レーサーになりたいなら
運転を覚えないとな!」
洞窟の中へと歩き逆さに転がった車体を
持ち上げ舗装に置きます
「練習するにはコースがいる!」
「えっ?」
ヴァネロペはハッとすると寝床から飛び起き
ラルフの方向を見ます
ラルフの大きなこぶしで岩やごみを
押しのけ、砕き、すりつぶした結果
あっという間に
泉の周りは平らなサーキットへと
その姿を変えていました
「すごーい!」
「さあ、ほら
時間がないぞ
おれが教えてやるから練習だ!」
目を輝かせたヴァネロペは
置いた車体に乗り込みます
「あたし専用のサーキットだ!」
◇
「教えて、教えて!あっ、でもちょっと待って」
「ラルフは運転できるの?」
「ああ【3Dレースゲーム】はかなりやったな
〈ハングオン〉に〈アウトラン〉
〈バーチャルレーシング〉もやったな」
ラルフは今までにしたゲームを
感慨深く話をします
ヴァネロペは頷き返します
「それに今日はシャトルを飛ばしてきただろ?」
「でも、墜落してたじゃん!」
「おい!
二人は笑い合います
◇
「いいから乗れよ、こんなもんは簡単だ!」
ヴァネロペはカートの運転席に座ります
青いノイズが走りますが
ラルフは気にも留めていません
「では、エンジンをかけて」
「どうやって?」
「本当だ…つまみがない」
「ちょっとラルフ?」
「ひとつづつ整理していこう」
◇
「これはペダル、アクセル…おい!」
「何!?どうしたの?」
「クラッチもあるなんて、ヴァネロペ
お前相当練習しないとな」
あれこれ操作をしながら
ラルフは楽しそうに話します
いくつかの装置を確認し
消去法によりハンドルの近くにある
スイッチ押すとエンジンが掛かります
二人はどうにかエンジンをかけ
洞窟内にエンジン音が響きます
「そうだ、そうしたら
床にボタンがあるだろ?」
「もしかして、ペダルのこと?」
「そう、そう?何だ
全くの
「私は根っからのレーサーだよ?」
「なら、俺は
「う〜洒落てる」
◇
ヴァネロペの運転はぎこちないものですら
ありませんでした
発進すらできない時間が続きます
タイミングに失敗すればジョイスティックの
棒つきキャンディのチェンジレバーが
ガタガタと揺れます
少しずつ、少しずつ
青いノイズが走ってもなお
ヴァネロペは
諦めることはありませんでした
「大丈夫だヴァネロペ
最初は誰でも下手くそだ」
「うるさいなぁ、じゃあラルフやってみてよ」
◇
「嘘…」
「ちっちゃいな、窮屈だし、紛らわしい
あの三つのボタンは何だよ…」
ラルフは悪態をついていますが
可もなく不可もない運転を見せましたが
現状、ヴァネロペよりは遥かに上手です
「どうした?」
「別に」
その分かりやすい差が逆に
ヴァネロペに火をつけました
◇
「おぉ、上手くなったな」
「私は根っからのレーサーなんだから」
生まれたての
鹿のような歩みで動き始めたカート
動き始めた後は早く
基礎の前の技術はメキメキと成長していきます
◇
「おい、大丈夫か?」
動き出したカート
練習用のサーキットを進もうとしますが
青いノイズが走る度に
柱や壁に激突、泥の山に乗り上げ
ラルフを直撃します
「こんなに運転って難しいの?」
「そうだな…積み重ねでしかないな」
「…」
ヴァネロペの運転は少しずつ
形を見せていき
それに合わせて青いノイズは
発生しなくなっていきます
◇
「よし、そこでギアチェンジ!
いいぞ、もう一度」
「あたしは根っからのレーサーだって!」
急拵えでありながら
そのクオリティは
素人とは最早呼べない腕前をつけていました
カウント3周、ファイナルラップ
調子づいたヴァネロペはグングンとギアを
上げていきます
「優勝も夢じゃないな…」
そう呟くラルフの前をヴァネロペが抜け
走り終えましたが
スピードは衰えを見せていません
「ヴァネロペ?」
「ふぅ!!いいね、乗ってきた!!!」
道の外れ、二手に分かれた道
いつもは右へ通り抜けるところを
ヴァネロペは左へと入ります
アーチ状の道に中心はなく
ジャンプするしかありません
橋から橋へと飛ぶコース
ヴァネロペは深く集中します
橋から飛び上がった瞬間
青いノイズが走り
ヴァネロペは元いた位置から上へ
グリッチによりメントス鍾乳石に
あわや当たる軌道を取ってしまいます
メントス鍾乳石が一部落下し
熱いしぶきを飛び散りませ
コーラの柱が上がります
ラルフは大あわてで逃げます
ヴァネロペはその様子を上から確認しており
橋に着地し急いで車を停めます
「あたし、どう?
運転できるようになったよね?」
「上手くなったが…
山を丸ごと吹っ飛ばすとこだったぞ?」
ラルフは鍾乳石を確認し胸を撫で下ろします
「そうだね!気をつける」
興奮冷めきらぬ内
ヴァネロペはカートを再び走らせます
「ノイズはちゃんとコントロールするんだぞ」
ラルフは見守るように叫びます
「わかった…ちゃんとコントロールする」
◇
「あたし勝てるチャンスがあるかな?」
「あー、レースだしな…ちょびっとかな?」
「やった!あたし、絶対に勝つ
絶対に勝つ!絶対に勝つ!!」
「がんばれよ」
「がんばる!」
ヴァネロペはラルフとグータッチをします
◇
陽の光が火山の火口を照らします
ラルフは眠っていますが
ヴァネロペは作業を続けています
カートの整備と後ひとつ
それを大事そうに作っています