読む方法を前提として書いています。
※これは後にシュガー・ラッシュ3を
描くための基盤作りの物語です。
〈フィックス・イット・フェリックス〉は
30年前からある古いゲームです。
ゲームのストーリーは
架空の町ナイスランドの一画
とあるビルが舞台です。
コインを入れると
悪役のラルフがアパートをよじ登り
アパートを殴り壊してしまいます。
窓ガラスが忽ち割れ
ズレたレンガが地面に落ちます。
アパートに住んでいた人たちは恐怖に震え
「助けて!フェリックス!」と叫びます。
ゲーム内容はこの悪役のラルフが
アパートを壊した所から始まります。
「壊してやる!」既に半壊しています。
ナイスランドの
住民ナイスランダーは助けを呼びます。
「助けてフェリックス!」すると
主人公が颯爽と登場します。
「OK!僕が直すよ!」金色のハンマーを片手に
明るい態度笑顔が素敵な好青年
プレイヤーである貴方は彼を操作して
ラルフが壊してしまったアパートを
直していきます。
◇
「…理不尽だ」
ラルフは空の下にいました。
背中は泥まみれ、住民がアパートへと
帰って行くのをただ眺めています。
ラルフはいつも複雑な気持ちでいっぱいです。
何故なら一度も
感謝をされたことがなかったからです。
「修理するのが目的だからな
フェリックスがヒーローなのは当然だ」
ラルフは立ち上がりながら自分に言い聞かせます。
体に付いた泥を払い、何処かへと歩き出します。
ラルフの鼻にはパイの匂いが纏わり付きます。
それは自分ではなく
フェリックスへのお礼の品です。
主人公フェリックスは修理屋です。
父親から譲り受けた魔法のハンマーを使って
何でもすぐに直すことができます。
ハンマー一振り、即終了ラルフが壊した所も
あっという間に直してしまいます。
◇
「ハンマーがなかったら、
あっという間に直すなんて絶対無理さ」
別の日
背中を泥まみれにしながらラルフが呟きます。
泥を払いながら
屋上の眩い光を恨めしく見つめます。
「ヒーローメダル…」
現実の通貨は主人公にとってのメダル
「俺は…」
ですがラルフはどうでしょう?
コインが投下されれば必ずアパートを壊します。
必ず壊します。
それが褒められたことなんて一度もありません。
あの時でさえも
◇
「うわぁ!?」
ラルフの足元で声がしました。
何事かと思い、覗き込みます。
【残機の減る音】
一輪の花を胸元に目を閉じたフェリックスの姿が
ありました。
「フェリッ…」
住民の叫び声が少しだけした後
『GAME OVER』の文字が表示されています。
「?」
いつもならナイスランダーに
投げ飛ばされる所ですが何ともありません。
◇
「失敗しちゃった」
画面の向こう側の子供が居なくなります。
フェリックスがクリアした時と同じ様にです。
「やったのか?」
不思議に思いながらラルフは呆然とします。
「大丈夫?フェリックス」
「やった!やったんだ!!」
フェリックスを心配するナイスランダーを他所に
ラルフは喜びます。
「やったメダルが貰える!」
期待を胸にメダルを待ちます。
「何て酷いやつなんだ
フェリックスがこんな状態なのに」
ナイスランダーはラルフを睨みつけます。
そんな事をお構いなしに
ラルフはメダルを待ちます。
スコア画面が映し出された画面が終わり
コインが新しく投下されます。
『コイン警報』
「おい!俺のメダルは?」
ゲームが始まるアナウンスが入り
ラルフは困惑します。
「僕が直すよ!」
フェリックスは持ち場へと復帰しています。
「どういう事だ?」
訳もわからず、今度は投げ飛ばされました。
そう、ラルフはどんなに上手く壊しても
決してメダルなんて貰えません
◇
「…」
あの時のことを思い出しながら
今日も泥まみれの体を動かし泥を払います。
立ち上がり
いつもの様にラルフはアパートの裏手に
しゃがみ込みます。
アパートの裏
ゴミ捨て場、食べカスや、レンガ、ガラス片
ラルフは
それらを踏み砕きながら
「パイか」
朝を待ちます。
仕事があることは幸せだと感じつつも
どこか不快感を胸に眠りにつくのです。
壊し屋ラルフの一日はこうして繰り返されます。