天然才女との生活は驚きの連続であり、暇しません。俺的には結構ありだと思ってます。 作:花河相
この世界の料理は前世と変わりない。
むしろ、美味しいかもしれない。
この世界には魔物の存在がいて、家庭でも肉が提供される。
オークの然り。ワイルドホーン然り。ワイバーン然り。
魔獣や討伐難易度によって肉のレア度や鮮度が変わり、肉によって油のノリ具合から柔らかさも違う。
トンカツを作ろうとしたらオークの肉が一般的に使われるが、それが上手いんだ。
この世界には俺以外の転生者がいた。文献や古文書に載っていたわけではない。
わかるのだ。
市販でリバーシや将棋が普通に売っているし、民間で人気がある。
食文化についても、カツ丼やら親子丼、プリン、ショートケーキなどなど
地名関係なくそのような名前が付いているのは違和感がある。
まぁ、謎の天才料理人だの、玩具王だの呼ばれている人がいたとか。
残念ながらすでに亡き人となっているので確認のしようがないが。
「お腹減った」
「もう昼時だもんな。いつものガトスでいい?」
「うい、あそこ好き」
「りょーかい」
「……今日こそは……今日こそは絶対に」
「あはは、やる気だな」
イヴは今すごくやる気に満ちている。見方によっては瞳から炎が漏れ出しているほど、燃えている。
こんなにやる気が出ているのはイヴなりの譲れない理由があるのだ。
魔法道具店を後にし向かった先は料理亭「ガトス」
ガトスの店は屋根が赤く、壁が白いの一階建ての店
屋根の赤い部分に「料理亭ガトス」と看板が付いている。
煙突からくる食欲そそる匂い、ああ、お腹空いてきた。
一応いうと前世の某ファミリーレストランののほぼ丸パクリである。
この店も先先代が開いたお店らしい。
メニューもピザやハンバーグとステーキのプレートなどのメインからデザート、パンメニューまである。
ドリンクも数ありメニューは豊富。
ああ、よく食べたなぁと連想させるくらい似ている。
まぁ、料理自体は素材ゆえこの世界の方が美味しいのだが。
「いらっしゃいませ、あ、いつもご利用ありがとうございます」
店に入ると見知った顔のウェイトレス姿の店員さんが笑顔で出迎えてくれる。
常連さんだし、イヴのことをよく覚えているのだろう。
本当に中の作りも似ているなぁ、と思うのよ今更である。そういえばいつも思うんだけど、このウェイトレスのスカート短すぎないか?
まぁ、別にたまには目の保養になるし別にいいーー。腕がちくっとくるな。
「……なんだよ?」
「……べつに」
痛い箇所を見るとイヴがムスっとしてつねっていた。
「痛いんだけど」
「……しらない」
「いや、抓ってるのイヴなんだけど」
今だに抓るのをやめないイヴ。
何故か拗ねているし、ジト目で睨まれる。
「……レイくんなんて知らない」
「……えぇ」
抓るのをやめたと思ったら、一人で右奥のファミリー席に向かった。
どうしたんだよ全く。
二人でファミリー席に座るのはどうかと思ったが、店はお昼時なのに今日は混んでいなかった。ファミリー席はソファー席でテーブルも広い。
混雑している時なら使うの避けるべきだが、空いているなら構わないだろう。
そう判断しイヴの向かいの席に座る。
「メニューはこちらになります。ご注文決まりましたらお声がけください」
「わかりました」
座った後、店員さんはメニュー、お冷、お手拭きをおくと一礼して去っていった。
イヴは今だにムスッとしている。
まぁ、イヴのことだ。ムクれているが、メニューをひらけば。
「見て見てレイくん!すっごく美味しそうだよ!」
……単純だなぁ。
花咲くような笑みで俺にメニューを見せてきた。
よし、この勢いにあやかろう。
「よし、今度こそ俺の奢りだから好きなの頼んでいいよ」
「デザートも?」
「おうよ」
「わかった!すいませーん」
「いやいや、俺まだ決まってないからね。後少し待って」
「……うん」
一人で先走ったのを咎める。
メニューを開き何にしようか考える。
ここってラーメンやらピザやらもあるんだよな。どうするか。
……うん、早く決めようか。
イヴは俺を見ながらソワソワしている。
早く頼みたい……というより早くおもちゃが欲しいのだろうな。
俺は急ぎ決めてウェイトレスのお姉さんを呼んだ。
「ご注文はお決まりですか?」
注文を書くための手のひらサイズのボードと小さな籠を持ってきた。
籠の中には握り拳くらいの紙製の袋がいくつも入っており、中身が見えなくなっていた。
「俺はハンバーグとエビフライのグリルで。飲み物はコーラ」
「私はお子様ランチ!あとデラックスパフェ」
俺とイヴはそれぞれ注文をした。
陽気に注文するイヴはまるで幼い子供のようであった。
「はいお嬢ちゃん、この中から一つとってね」
「うん」
「今日は当たるかな?」
「開けるまでのお楽しみ!今日こそ!絶対に当てるんだ」
……そう息巻いたイヴの姿にウェイトレスさん完全に子供扱いしてるよな。これでも成人しているのだが。
何故イヴがこんな反応をしているか、それはお子様ランチについてくるおまけを集めるのにハマっているからだ。
ウェイトレスのお姉さんが俺とイヴを覚えているのも何度もこのやりとりをしていたからである。
籠をもってきたのもいつものこと、だからだ。
いいことなのか悪いことなのか。
でも、イヴも子供扱いをされていることを特に気にしていないーー気がついていないだけかも知らないがーーから俺は特に気にすることなく見守っている。
微笑ましい会話だ。
これって本当のことを伝えた方がいいのだろうか?
でも、伝えるとイヴに対しての対応変わるのもちょっと寂しいような。
……俺の葛藤が続く中イヴは真剣に箱から袋を選んでいる。
「これにする!」
「いいの当たるといいねお嬢ちゃん」
「うん!今日こそ当てる」
「そうなのね。当たるといいね」
「出ますように、限定ウェイト姿のグーソクくん」
グーソくんとは、前世でいうならゆるキャラみたいなものだ。
見た目はダイオウグソクムシが可愛くデフォルメされているような感じだ。
目がパッチリおめめで、二足歩行している。
いろんなバージョンの衣装を身に包んでいる。種類は現在8種類ある。
そして、グーソくんは……何故か小さな子供に人気がある。
キモかわいい、というやつなのだろうか。
「……やった!出た!出たよレイくん!」
「よかったねぇ」
「……よかったな」
……あ、欲しいやつ出たっぽい。
そういえば以前ウェイト姿のグーソくんはイヴが今キャンペーンで期間限定って言ってたような。
……ファンからするとそんなに欲しいものらしい。
俺はどう反応すればいいかわからないものの、とりあえずそう伝えたのだった。
「よかったねお嬢ちゃん、じゃ、また後でお料理運んでくるからね」
「うん!」
そう言ってお姉さんは立ち去っていった。
「ふんふふーん」
イヴは両肘をつき、手を組み顎を乗せ鼻歌を歌う。
よっぽど嬉しいらしい。
今彼女はグーソくんストラップをを全種取り揃えている。
期間限定のものだし、コレクションしている人からすれば当然の反応かな。
「浮かれるのもわかるけど、くる前に手を拭いておかないとね」
「はーい」
先程まで外にいたし、手をまだ拭いていなかった。
このままだとイヴは手を拭かずに食べるかもしれないから指摘をする。
イヴは出されていたお手拭きで両手を拭くとーー顔を拭き始める。
「あぁ、きもちぃ……はぁ冷やっこい」
子供みたいなのがおじさんみたいなのかはっきりしないイヴにそう思ったのだった。