天然才女との生活は驚きの連続であり、暇しません。俺的には結構ありだと思ってます。   作:花河相

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才女は迷子

 時は数日前に遡る。

 その日、イヴ=ニコラは再試を受けていた。名前書き忘れの初歩的なミスをしたためである。

 

 試験内容は赤子の手を捻るように簡単だった。理論などイヴにとっては解けて当然。逆に解けない人の方がおかしいと思えてならない。

 

 だか、その日イヴは必死であった。

 必ず満点で合格すると。その理由はこの再試は彼女にとって人生を左右する。なんせ愛しの婚約者レイモンドとの婚約がかかっているから。

 

「では、始めるように」

 

 試験の担当教師の号令で試験は始まる。

 まず、最初に名前を書く。その後全ての問題を解き進める。

 イヴは計算式や理論の証明をすっ飛ばし全て解答用紙に記入する。

 紙に書きまとめる行為はしない。イヴは全て脳内で処理できてしまう。

 

 テストは1時間を目安に作られたものだが、イヴは5分もかからず終えた。

 

「……見直ししなきゃ」

 

 テストが終わり次第退席できる。だが、今回のイヴは本気の本気。

 人生で初めて見直しをした。

 

「名前は平気、解答欄のズレはなし……念のためもう一回」

 

 3度目の見直し。

 うん、大丈夫かなと納得した。

 

「先生終わりました」

 

 必死に解く生徒たちの視線が刺さるがイヴは気にしない。早くレイモンドに会いたいから、答案用紙を渡すと一心不乱にレイモンドの元ヘ向かった。

 

 

 

 

 

「……レイくんが迷子?」

 

 いや、それは違うと思うのだが。

 試験が終わり教室を出るとレイモンドが待っているはずの場所へ向かおうとしたのだが……何故か見たことのない場所に辿り着いてしまうイヴであった。

 

「ここどこ?」

 

 イヴは辺りを見渡す。

 周りは草木や花で生い茂っていた。場所は庭園と呼ばれる場所で中心にお茶会をするためのスペース。周りの景色は花壇がありよく手入れされている。

 

 イヴは気になりゆっくりと近づく。

 イヴは気になったことはすぐに確かめてみる性質があったりする。

 

「いい匂い」

 

 匂いを嗅ぐと甘く爽やかな匂いがする。

 黄色いスイセンである。

 

「……懐かしい匂いがする」

 

 続いてピンク色の花を嗅ぐが変な匂いがした。だが、イヴにとっては一年前、ゴミ屋敷で住んでいる記憶がある。

 今、イヴが感じている匂いはカビやホコリの匂いのシクラメン。

 

「さぁ、ここは僕たちだけだジュリー」

「そうね。ここはわたくしたちだけ。豊かな木々たちに祝福されていますわね。ロー様」

 

 男女の話し声が聞こえた、イヴはゆっくりと木陰を除く。ちょうど木の影に隠れている男女の二人組を見つけた。

 学院は春休暇に入り大半が帰省する、寮内で過ごすことが多い。

 来る目的は新入生の準備やら入試準備で駆り出された生徒や先生、イヴのように再試受けに来た人もいるだろう。

 

 女生徒は茶髪に近い金髪の髪をやや高い位置のポニーテールを結ぶ落ち着いたら雰囲気の女生徒と細マッチョで高身長、黒髪落ち着いたらクールな男生徒。

 

(……二人仲良い)

 

 イヴは木陰に隠れ二人のやりとりを眺める。

 二人は密着し体を抱き合っている。女子生徒が男子生徒の肩に頭寄せ、男生徒が女生徒肩に手を回している。

 

「……ロー様、私はどうしたらいいの?最近お父様から婚約のお話が来たのよ」

「ジュリー……君はどうしたんだい」

「もちろん断ったわ。……私にはあなたしかいないもの」

「ジュリー」

「……ロー様」

 

 ……目を逸らせない。イヴは二人の会話を見て思ったことは羨ましいだった。

 なんとなく想像するイヴ。

 自分の両手を抱きしめ妄想に徹する。

 

『イヴ、今日もかわいいね』

『もう、レイ様ったら』

『今日も手取り足取り……俺に身を任せて』

『そ、そんな恥ずかしい』

『俺は君の全部を知りたい……恥ずかしがらないで』

  

「レイくんダメだよ」

 

 これはイヴの妄想である。

 彼女は才女である前に一人の乙女である。

 こんな甘いひと時を過ごしてみたいと思ってみたことはあることはある。

 だが参考になるお手本がないから、今まで妄想していなかったが、実際にいちゃつくカップルを見て興味が湧いたのだ。

 

 

 原因はローとジュリーのやり取り。

 ラブラブな二人を見て羨ましくなった。

 イヴの周りには異性たちがいちゃつく姿を見る環境がなかった。ほとんどレイモンドと過ごし、人と交流するのは街に出かけた時のみ。

 二人のやりとりは純粋無垢なイヴにとってとても興味深く新鮮なものだった。

 

「レイくん……」

「……君は何をやっているのかな?」

 

 妄想から現実に戻される。

 声に出ていたと自覚した時には遅かった。

 

(……あ、見つかっちゃった)

 

 イヴは声をかけてきたローを見上げていた。

 

「「「……」」」

 

 気まずい雰囲気の中、3人は沈黙でいた。

 微妙な初対面を迎えてしまった3人であった。

 

 

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