天然才女との生活は驚きの連続であり、暇しません。俺的には結構ありだと思ってます。 作:花河相
「……レイくん、なにそれ?」
3月中旬、王立魔法学院の冬季休みも中盤になった時であった。イヴがソファで本を読んでいる時にふと視線をあげ聞いてきた。
イヴ宛の手紙のチェックのため、ポストをのぞいたら何故か俺宛の手紙がポスト投函されていた。
「なんか俺宛に届いた手紙らしい。ポストに入ってた」
「ふーん……」
おかしいのは何故俺宛で手紙が届いているのかということ。
まず宛名が書かれていないこと。
何よりレイモンド=ヒューズの名前が書かれていることだろう。俺はヒューズ家を勘当されている。
ギルドからの指名依頼でたまに郵便で送られてくることがあるが、それは宛名もギルドとわかるようになっている。
……多分誰かが俺の足取りを調べて手紙を直接投函しにきたということだろう。
まさか父が俺を呼び戻そうとでもいうのだろうか?
とにかく開けてみなきゃわからない。
「なんて書かれてるの?」
イヴの隣に腰掛けると手紙を丁寧に開封してみる。イヴは読んでいた本を閉じると俺の方に寄ってくる。
珍しいこともあるもんだ。イヴが好きな読書を切り上げこっちに興味を示すとは。
「えーと……」
【背景、レイモンド=ヒューズ様。
お久しぶりです。最近はとても寒い日が続いておりますが、どうお過ごしでしょう?
私は元気に過ごしております。
王立魔法学院の合格し、今年の4月から入学させていただく運びとなりました。またレイモンド様と過ごせること思うと楽しみで胸心躍る毎日です。久々にまたお会いしたいです。また貴方と愛を語り合いたい。触れ合いたい。あの日のように。敬具】
「……えーと」
急いで手紙を隠す。なんだよこれ。俺、生まれつき婚約者いたことねぇよ。
婚約者があり得る世界だ。
生まれる前から決まったら美少女婚約者がいるかもと転生当初は考えたこともない。
今では黒歴史である。
それはともかく、この手紙は誰だろう?来年入学ということは年下?
だが、異性の知り合いはいない。落ちこぼれだからパーティおろかお茶会すら参加したことがない。
妹からの手紙だと一瞬考えがよぎるが、字体が違うし、急に家を追い出されたから連絡手段もない。
一体なんだろう。
一先ずこれは恋文というものなのだろう。
だが、ヒューズの家名を知ってるのはネーメル先生かイヴ。
だが、イヴはこんな整った字体はしてない。
一先ず手紙を閉じよう。
こんなのイヴに見られたらまずい。
だが、もしかしたらイヴは顔を覗かせていたから一瞬チラッと見たかもしれない。
手紙を閉じ、イヴの方を見ると人差し指で俺を指さしていた。
「レイくんが……浮気した」
「いや、そんなことしてないからね」
人差し指を刺しながらイヴは発言した。
するとイヴはテーブルの上に置いてあった呪符紙に付与を始める。
……こういうとき、イヴのスペックの高さには恐れ入る。イヴは一度見たものを記憶できる。
一瞬とはいえ、手紙を見たのだろう。
いや、今はそれよりも。
「ねぇ、何付与してんの?」
浮気どうこうよりも、まず何をしているか確認せねば。
なんとなく、魔力量の消費がいつもよりも多かったので問いつめる。
呪符を作るとき、付与する時に付与者の魔力を使う。
そのとき、付与に使った魔力量に比例して威力が変わる。
イヴの魔力量はかなり多い。多分今回5分の1は使ったと思うが……。
付与し終わったイヴは俺に呪符を向けてくる。呪符の内容や理論はまったく理解していないが、書かれている内容は予想できた。属性は水。効果まではわからないが付与した魔力量からしてかなりの被害が出る可能性が……。
やばいよ!早く止めさせなきゃ。
「浮気したレイくんにはお仕置きしなきゃいけない。さぁ、全てを白状しなきゃこの呪符を発動させる」
「いや!だから浮気してないから!」
「誤魔化しても無駄。……レイくんは動揺してる。つまり浮気してるってこと」
「まず前提からおかしい。俺が動揺してるのはそれを発動されると面倒だからで」
「なら、白状する。ことと次第によっては発動するだけで許してあげる。ふふふふ、家のみならず、私諸共ずぶ濡れにしてあげる。レイくんが苦労するのが目に浮かぶわ」
「自分も犠牲にするんかい!なんでそんな執着してんの!……まさか、何か演劇やら小説やら読んだ?まさか、影響されてる?」
「……話を逸らそうとした。浮気確定……レイくん信じてたのに。レイくんに群がる雌豚、……許さない」
「どこでそんな言葉覚えたの!!いや、魔力を込めようとしないでって!」
パシっと、慌てて呪符を奪うように取り上げる。あ、危ねぇ。
イヴは表情が変わりないものの、多分本気の目をしていた。
まじでこれはシャレにならん。
イヴは俺を薄目で見てくる。
「まだ、私の魔力は尽きてない」
「頼むからステイ、また付与しようとしないで」
「でも、浮気したからお仕置きしないと」
「浮気してないし、お仕置きしないでいいから……と、とにかく信じてくれ」
「……ふーん」
「まずこの手紙おかしいでしょ、俺の名前だけで宛名書いてないし。何かの嫌がらせかも」
「ふーん」
これ、ぜってぇ信じてねぇ
イヴってこんなに嫉妬深いのか。
ツンとした表情のイヴにどうにか信じてもらうため、説明を続けた。
以前に送られた手紙を読んだりと???
少し例えが違うが、浮気がバレて誤魔化そうと必死になる男の気持ちがほんのわずかだけわかった気がした。
とりあえず。
「一つ確認するけどイヴは俺が元ヒューズ家の関係者だって言ってないよね?」
「言ってない……多分」
「いや、そこは断言して欲しかったよ」
多分イヴは違うだろう。
残るはネーメル先生か学院長だが。
この不気味な手紙を見るに少し警戒したい。
……ネーメル先生はいると思う。
ちょっと聞きに行こうか。
「少し先生に確認してくる。イヴは待ってて……何その手は?」
「……私も行く。……ちょっと用事ができた」
「えぇ……ちなみになんの用?」
ソファーを立とうとしたらイヴが片腕を掴んでくる。
まさか、俺の監視とかいうつもりか?
「友達に会いに行く」
「え?イヴ友達いるの?」
「最近できた」
そういえば再試のときネーメル先生がそんなこと言ってたような。
「……わかった。なら一緒に行こうか」
「うん……抱えて連れてって」
「そこは自分で歩いていこうか」
「レイくんが浮気したから疲れた」
「言葉足らずだよ。呪符使って魔力消費したからでしょ。自分で歩かなきゃダメ」
「……今日のレイくんは冷たい。まさか……メス豚を優先するため私を捨てる気か……決めた。ことと次第によってはレイくん諸共道連れにする」
「……もう、勝手にしてくれ」
なんか疲れた。
とりあえず心当たりがありそうなネーメル先生を求め俺とイヴは学院は向かった。
それにしてもイヴの友達ってどんな人なんだろう?
春季休暇なのに帰省してない人?
まぁ、会ってみればわかるか。