思い付きアーカイブ   作:かゆ、うま2世

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愛情、あるいは未来について

「……あ!皆!久しぶり!」

 

 

病室のベッドの上、お見舞いに来てくれたであろうスクワッドの皆に、できるだけ明るく挨拶を送る

あの後、マダムは先生達にボッコボコにされて何処かに逃げてったらしい。あの後すぐ意識を失ったのでそこは見れてないけど、皆無事で本当に良かったと思う

問題はその後で、俺の怪我の関係上、俺たちアリウススクワッドはトリニティに向かうしかなかった。やった事がやった事なので、今の今まで俺たちの処遇についての話し合いがされていたらしい

 

 

「……テラ」

「……そんな顔しないでよ」

 

 

左目の眼帯と、包帯で巻かれた肘から先がない左腕。マダムから受けた傷は身体部位の欠損。治療はできても元通りになる事などなく、俺は片目と片腕を失った。一命を取り留めただけマシって感じだ

 

 

「皆生きて終わったんだからオッケーだよ。それに、皆が支えてくれるでしょ?」

「……うん、それも、そうだね」

 

 

暗い雰囲気をどうにかしようと、なるべく明るい声で言う。全部終わって生きて帰ったんだから、そういう顔はやめてほしい

 

 

「怪我はもう大丈夫なのか」

「ちょっと痛むけど、命に別状は無いってさ」

 

 

考える事がたくさんある。腕も目も無い、これまでとは全く違う体で、全く違う環境の中を生きていかなければならなくなった。それでも、ここには皆がいる

 

 

「まぁ今まで通り皆に頼り倒すから大丈夫かなー!」

 

 

とりあえず、俺がもう怪我なんて気にしてない事を伝えなければならない。できるだけ明るく、皆に心配をかけないように

 

 

「あぁ、それでいい」

「……まぁ、慣れてるし。今更だよ」

「い、痛いんですよね…あ!何か必要なものとかあったら言ってくださいね?!」

「……うん、頼って。テラの為ならなんだってやるから」

 

 

……なんか、ちょっと思ってた反応と違う。微妙に呆れられるのを予想してたんだけど。俺個人としては最高の反応すぎるんだけど、なんかモヤっとする

特にアツコ。なんか他の三人と比べて変だ。妙に目が暗いし、来た時からずっと俺の傷を見つめてる。なんか変だ

 

 

「……アツコ?なんかあった?」

「……あったよ、いっぱい」

 

 

ゆらゆらと近づいてくるその様子に、何だか幽霊みたいだな、なんて思った

 

 

「…………???」

 

 

何も言わずに、アツコは俺の腕の断面──と言っても今は包帯が巻かれてるけど──に優しく触れた。アツコらしからぬその行動と、ぎゅっと苦しそうに何かを堪えてる表情に困惑して何も言えなくなる

 

 

「……痛い?」

「今は……少しだけ」

「…………そっか」

 

 

何が何やら分からずに混乱していると、小さく声が聞こえた気がした

 

 

「……ごめんね、テラ」

 

 

そんな声を聞き取った直後、突然衝撃と共に体に柔らかい感覚が伝わった。椅子に座ってる俺の胸元に顔をうずめるような体勢で、アツコが俺に抱きついていた

 

 

「え……は……?どうしたの、アツコ?」

「なんでもない。なんでもないから……少しの間だけこうさせて」

 

 

背中に回された手がギュッと締められ、僅かに震えた声が耳元から聞こえてくる。今のアツコはいつもより感情的に見えた

 

 

「………?」

 

 

皆に困惑の視線を送るも、皆も俺と同じで困惑してるようだった。ますます意味がわからない

 

 

「……とりあえず、私達は邪魔みたいだね」

「……そうだな、出よう」

「ちょ、ちょっと?皆?」

 

 

呼び止める俺の声を無視して、皆は部屋から出て行った。病室には、俺とアツコの二人だけ。気まずいやら、何やらで動けなくなる

 

 

「……えっと、その、アツコ?」

「……うん」

「あー……慰めてくれてる?とか?」

「……」

 

 

何も言わない。これは一体どうしたらいいんだろう。俺が変な事を言った訳じゃないと思うんだけど、とにかく反応してくれないのが困る

 

 

「……ごめんアツコ、俺全くわかんなくてさ……」

 

 

俺から何かできる訳でもなく、何も分からないこの状況に焦れったさを感じてると────不意に、背中に回された手が首に移動し、ぐいーっと無理矢理顔を動かされ、アツコと正面から向き合った

 

 

「……テラはさ」

 

 

鼻先が触れ合うほど近い距離で、アツコが口を開く

 

 

「怖くなかったの?」

「……怖かったよ?」

 

 

死への恐怖。痛みへの恐怖。俺が生まれた時から付き纏っているもので、俺の意思決定には、必ずこれが絡んできた

今回だってそうだった。怪我も、死にかける事も、分かりきっていた未来だった。それでもアツコを助けたくて、全てを押し殺して走り抜いた

 

 

「……じゃあ、今は?」

「え?今は別に……」

「私は、怖い」

 

 

……わからない。アツコが何を言いたいのか、わからない

 

 

「テラは生きて帰ってきた。生きてるんだよ。でも」

 

 

相変わらず暗い表情のまま、俺を見つめる

 

 

「私は怖かった。今も怖い」

「え、その……どういう」

「……私が死ぬってなって、怖かった。テラが死ぬかもしれなくて、もっと怖かった。もしテラが死んじゃったら、もう二度と話せないって思ったら」

 

 

その瞳から雫が溢れて、ポタポタと俺の服に落ちる

 

 

「私は、今も怖い。テラは、違うの?」

「……あ」

 

 

もし──逆だったら、なんて事を考えたら、とんでもなく辛い気持ちになった

 

 

「……俺も、怖い」

 

 

残っている右腕で、アツコを抱き締める。何処にも行ってしまわないように、互いの存在を、何より確かに感じる為に

 

 

「だから──良かった、助けられて」

「ありがとう、助けてくれて。ありがとう、生きててくれて」

 

 

そうして抱き合ったまま、少しの間、二人一緒に泣いていた

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「……綺麗」

「相変わらず花が好きだよね」

 

 

あの後、特に何事もなく俺は退院できた。監視だとか、色々制限はついたけれど、俺たちアリウススクワッドはトリニティで過ごす事になった

空いた時間は、ずっとアツコと一緒にいる。美味しいものを食べに行ったり、こうして花壇を巡ったりしてる

残った右手は、繋いだまま

 

 

「アツコはさ、今、楽しい?」

「……うん、テラは?」

「俺もだよ。……やる事、考える事が沢山あるけど、それでも俺は、今が楽しい」

「……そっか」

 

 

強く手を握り、更に強く握り返される。こんな当たり前の、でも今だから感じる事ができる幸せを噛みしめながら、二人歩く

 

 

「テラ、これからもずっと、よろしくね」

 




アリ夏が来たら付いてきたはいいけど腕がなくて泳げないから砂浜で遊んでる皆を見てるテラ君がアツコに手を握られて浅瀬なら大丈夫だからと一緒に遊ぶ話を書きます

少ししたらこの小説のタイトルを『思い付きアーカイブ』に変え、ブルアカ関連の思い付きを投稿する場所にしようと思います。とりあえず思い付きが一個あるので、それを待っててね
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