この螢多朗くんの前世はヒキニートです。
格闘めっちゃ強くて剣の腕も銃の腕もめっちゃ良くて、バイクを乗り越して空中戦も出来るけど、前世はニートです。
決してプロの格闘家でも傭兵でもありません。
『Wake up!
『Mad doctor!』
またアイコンを変えた。
白衣のようなパーカーゴースト。
ソレを纏ったと同時、彼はドライバーのレバーを引く。
『Destroy! Omega drive!』
「うぐわあああああああああああ!!!?」
オメガドライブを発動させた瞬間、ファントムは悲鳴をあげた。
闇医者魂は回復手段の形態。オメガドライブは高速治療を可能とする。
アイコンに封じた悪霊や倒した悪霊などを素材に肉体を修復させ、魂を霊的に回復させる。
しかし治療には痛みを伴い、特にオメガドライブは死ぬ程痛い。その上、重傷であればある程その痛みは増す。
だかこれで負傷は治った。傷を治せても疲労などは回復出来ないが、とりあえず戦える体にはなった。
「はぁ…はぁ…はぁ………!」
ボロボロ状態。
瀕死からフラフラ状態になっただけ。
仮面の下では脂汗を大量に流しながらも、目に宿る闘志は一切揺るがない。
「いい!いいぞお前!かなり健闘したから褒美をやっていいと思ったが気が変わった!お前ほどの英雄、味わないなんて勿体ない!」
祭壇から立ち上がり、降りる神。
一歩踏み出す度に存在感が強まり、神威ともいえるほどに強烈な神気が漏れ出す。
「改めて名乗らせてもらおう。我が名は太歳星君。災厄と滅びの具現なり」
星神・太歳星君。
中国の道教における木星、太歳の祟り神。
凶神の代表格として最も畏怖された星の化身である。
「ではいくぞ…」
【消滅の凶星】
瞬間、天災が現れた。
直径数十mはありそうな超特大サイズの強大無比な霊的エネルギーの塊。
一瞬で精密操作によって渦巻かせながらピンポン玉サイズまで圧縮。
霊的エネルギーの超高圧縮に巻き込まれた空気の摩擦がプラズマ化を引き起こし、巨大な光球となってファントムに撃ち出された。
「っ!?」
咄嗟に避けるファントム。
左に大きく跳びながら体を伸ばし、左手を地面について着地。さらに転がることで飛距離を大きく稼いだ。
自身がいた地点に目を向ける。
数mも半円形に抉れた地面が光球の威力を物語っていた。
「さあ、どんどんいくぞ!」
【消滅の凶星:流星群】
再び繰り出される消滅の凶星。
精密霊力操作によって形成された数十発の光球。
文字通り流れ星のように繰り出された消滅の凶星。
散弾銃のごとく一気に繰り出されたソレを、ファントムは回避すべく動き出す。
『Wake up!
『Driving hell』
フォームチェンジ。
パーカーゴーストとなったファントムーディーを身に纏うと同時、上空に飛び上がった。
それを追うかのように追尾する消滅の凶星。
ファントムはさらに加速し、高度を上昇させる。
飛んで消滅の凶星を回避。
急旋回、急停止、急上昇。
縦横無尽に飛び回り、飛行テクニックを披露する。
「っぐ!!?」
避けたはずの光球が爆発。
その余波によってダメージを受けた。
直撃してないはずなのにソレはファントムの装甲を破壊し、内部までダメージを浸透させた。
持ち前の気迫とタフネスで耐え、体勢を取り戻すファントム。
そうしている間にも攻撃の手は大きくなっていく。
「おお!いいぞいいぞ!ならこういうのはどうだ?」
【陰陽術:呪縛呪】
「っ!!?」
突如、ファントムが急停止した。
否、急停止された。
何かに縛られるかのように動けなくなったのだ。
霊的防御に優れたファントムの装甲。
余波によって傷が付いたとはいえ、並大抵の呪いなど歯牙にもかけない。
だというのに太歳星君の呪いはファントムをあっさりと金縛りにかけてみせた。
こうしている間にも光弾が迫りくる。この状況を打破するためファントムは次のアイコンに切り替えた。
『Wake up!
『Slashing knife!』
金縛りをガンガンセイバー二刀流モードで切り裂いて脱出。
呪いによって引き上げられた切断力と混信の斬撃は、太歳星君の呪縛呪を切り裂いてみせた。
「ッ!!?」
遅れて全方向からたどり着く光球。
これらもガンガンセイバー二刀流モードで迎撃。
両手の刀を振るって光球を斬り落し、受け流すことで迎え撃つ。
「っぐ!!?」
爆発する前に切断した光球。
迎撃で威力を減衰させたにも関わらず、ファントムの両腕の装甲を切り刻み、内部も負傷させていく。
持ち前の気迫とタフネスで耐え、体勢を取り戻すファントム。
そうしている間にも攻撃の手は大きくなっていく。
「これも耐えるか!なら……────“お前の居場所が凶方だ”」
【陰陽術:六壬神課】
「!!?」
太歳星君を中心に陣が展開され、ファントムを指さす。
瞬間、ファントムに悪寒が走った。
ほぼ反射的に次の手に移るファントム。
無意識にドライバーのレバーを引いた。
『Destroy! Omega drive!』
ガンガンセイバーを振るうファントム。
ぶつかり合うファントムの必殺技と太歳星君の呪い。
呪いの余波で空気が震え、空間が軋み、地面に罅が入る。
拮抗の末、二つの強力な呪いは力の奔流を起こしながら相殺された。
「(っ!? 別の呪いを使った瞬間、光の弾が補給されなくなった!? つまりどれか一つの呪いしか使えないのか!)」
その通りである。
太歳星君が一度に使用できる呪いは一種類。同時併用は出来ない。
よっていかに相性の良いアイコンで呪いに対処できるかが攻略のカギとなる。
『Wake up!
『Burning fire!』
攻撃的なアイコンにチェンジ。
消滅の凶星が無い今こそ攻撃のチャンスと判断したファントムは、一気に畳みかける事にした。
ガンガンセイバーを銃モードに変形させて火炎放射器として使い。時には炎の弾丸を焼夷弾のように撃ち出す。
【陰陽術:披甲護身】
太歳星君はファントムの炎を無効化した。
バリアのように展開される霊的障壁。
ソレは卒業生クラスの悪霊をも凌ぐ呪力の炎を易々と受け止めてみせた。
「受けてやってもいいが折角だ。そちらの流儀に合わせてやる。では今度はこちらの番だ」
【陰陽術:一掃返し】
『Destroy! Omega drive!』
オメガドライブで迎撃。
呪い返しを喰らう寸前、ドライバーのレバーを引く。
ガンガンセイバーの銃口にエネルギーが集中し、炎となり圧縮。
最大限まで高まったと同時にトリガーを引いて必殺技を撃ち出した。
ぶつかり合う炎と炎。
二つは大爆発を起こして混ざり合い、大気を灼きながら辺りを覆い尽くし、ファントムの視界を遮った。
「いいぞいいぞ!もっとだ!」
【陰陽術:護身隠行法】
『Wake up!
炎の中、敵を探す為にアイコンを変える。
同じタイミングで太歳星君も呪いを発動したが、相性の良いアイコンを偶然選択出来た。
ファントムはすぐさまドライバーのレバーを引いて必殺技の構えに入る。
『Destroy! Omega drive!』
【陰陽術:披甲護身】
直撃。
しかし命中する直前に別の呪いを発動。
炎が晴れると無傷の太歳星君が姿を現す。
対するファントムは一切直撃してないというのに満身創痍だった。
最初からボロボロなのに余波だけで装甲を削られ、ダメージを受け続けたのだ。こうなるのは当然の事だ。
「どうした?もう終わりか?ならせめてお前の得意に付き合ってやる」
【陰陽術:存思】
『Wake up! Phantom!』
突っ込んで来る太歳星君。
ファントムは一番使い慣れた形態で迎え撃つ。
そこから繰り広げられる肉弾戦。
神とはいえ術者タイプ。自身の一番得意な格闘ならいけるとファントムは考えたのだが…。
「(ッグ!? 肉弾戦も出来るのかこの神!? 俺と同じ万能タイプ…能力を切り替えて対処するタイプか!?)」
結果は防戦一方であった。
太歳星君の神力を纏った身体強化と怪力。
技術はファントムが上だったが、スペックに大きな差が出た。
一発でもマトモに受ければアウト。避けて、逸らして、受け流す。
だがこのままでは何れ潰される。何とかして逆転する流れを作り出さなくては。
『Destroy! Omega drive!』
【消滅の凶星:流星】
ファントムの右足にエネルギーが集中。
迎え撃とうと太歳星君も呪いを発動して迎え撃つ準備をする。
「来い、英雄!」
「お、オオオオオぉぉぉぉぉ!!!」
雄叫びを上げながらファントムは走り出す。
右足が地を踏みしめる度に足跡が刻まれ、右膝までを炎のようなエネルギーが覆う。
ターゲットである太歳星君も動き出す。
右掌に消滅の凶星を圧縮させ、ファントム目掛けて走り出す。
「終わりだッ!」
先にたどり着いたのは太歳星君。
眼前のファントムは何故か背面を見せている。
これ以上ないチャンス。一瞬血迷ったかと太歳星君は疑問に思うが、ソレを無視。
消滅の凶星をファントムに直接ぶちかまそうと、消滅の凶星を圧縮させた右腕を突き出した。
右掌から伸びる光の剣。
破滅の光がファントムへとたどり着こうとした瞬間、事態は急変した。
「なにッ!?」
光の剣がファントムの顔面へと命中しよとした寸前、ファントムは身体を回転しながら屈んで回避。
同時、エネルギーを纏う右足に回転力を乗せて突き出す。
「らああああああああああああああああ!!!」
「ッ!?!?!?」
太歳星君の腹部に、ファントムの右足が命中した。
後ろ回し蹴り。
回転しながら上体を逸らす事で太歳星君の右手を回避。
同時に敵の懐へと潜り込み、無防備な点めがけて全力の必殺技をぶちかましたのだ。
「―――ッカハ!?」
吹っ飛ぶ太歳星君。
自身の突進、ファントムの必殺技、そして回転力と蹴りの威力。
全てが一点集中したカウンター技。
内部まで浸透したダメージと霊的エネルギーは内蔵だけでなく魂まで大きく損傷させた。
決まった。
これ以上ないまで綺麗に入った。
最高のカウンターキックをぶちかましてやった。
「やって…やったぜ………」
倒れるファントム。
膝から崩れるかのようにその場でうつ伏せになり、変身が解除される。
体力の限界だ。
ファントムは―――螢多朗はもう動けない。
先程の一撃で太歳星君を倒したと確信するしかない…。
パチパチパチパチと、何処から拍手の音が聞こえた。
「素晴らしい。天晴だ。まさか僕に蹴りを当てるような男がいるとは。長生きしてみるものだな」
「嘘…だ、ろ………」
ソレだけ言い残して、螢多朗は気絶した。
神様は終始お遊びで戦ってました。
おそらく一割も出してません。
ソレでも食らいつける螢くんがおかしいんですが。