仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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H城址

 

 俺たちが向かったのは危険度Sランクの心霊スポット、H城址だった。

 

 夜宵ちゃん曰く、この心霊スポットはSランクといってもそこまで危険ではないらしい。

 心霊現象は起きているが害意はなく、せいぜい脅かし程度。人死にの情報はない。

 また、ここはパワースポットで共食いする必要がない。

 よって夜宵ちゃんは悪霊ではないと判断したのだが…。

 

「フツーに襲ってきてるんだけど!」

 

 大量の悪霊が襲ってきた。

 結界がドーム状になって俺たちを囲って閉じ込め、四方八方から白装束や鎧姿の悪霊共が湧いてくる。

 

「忘れるな忘れるな」

 

「我が痛み忘れるな」

 

 悪霊共はそんなことをブツブツ呟きながら俺を呪おうとしたり、取り憑こうとしてくる。

 最悪の状況だ。変なババアに会ってから夜宵ちゃんとはぐれるし、遭遇したババアもいなくなってた。

 おそらくあのババアも悪霊で俺と夜宵ちゃんを引き離したのだろう。

 早く合流しないと。というわけでコイツらぶっ飛ばすか。

 

 

 一人目。髪の長い白装束の女。

 髪の毛を掴んで拘束し、顔面に膝蹴りを入れてやった。

 

 二人目。和服姿の老婆。

 顔面を掴んで近くの木に叩きつけ、一発蹴り飛ばした。

 

 三人目。鎧姿の武者。

 鎧を掴んで持ち上げ、いつの間にかあった血の池に投げ捨てた。

 

 ソレからも俺は襲って来る悪霊共を返り討ちにする。

 けど流石に多い。生身ではやってられないから変身しようとアイコンを取り出す…。

 

「忘れないで 刻みつけてあげるから」

 

「留まり続けるように 死んだ後もずっと」

 

 親玉らしき悪霊が滝壺から現れた。

 髪が長い女の生首が血の涙を流している。

 目は空洞のように真っ暗で、首からは夥しい量の血が流れている。

 そして何よりも目を向けるべきはその禍々しい霊気。

 おそらく卒業生クラス。旧旧Fトンネルよりも強そうだ。

 

「だったらこっちの方が良さそうだな」

『Bloody eye!』

 

 虚空に手を伸ばすと、赤黒い靄のようなものが発生。

 晴れると俺の手の中にブラッディアイアイコンが現れた。

 

『Eye!』

 

 アイコンのスイッチを押した瞬間、禍々しい神気が溢れ出した。

 とんだ暴れ馬だ、強すぎて漏れ出す神気を制御出来ねえ。

 けどソレで良い。この状況では好都合だ。 

 

『Look into my bloody eye! look into my bloody eye!』

 

 いつもの機械音ではなく、流暢な英語で重々しいラップが流れる。

 同時にドライバーから現れるパーカーゴースト。

 神気を放つソレは寄って来る悪霊共を蹴散らしていく。

 

「変身」

 

『Wake up! Bloody eye!!』

 

『I am fighter destroy evil』

 

『Go! Fight! Go! Fight! Go Fight!』

 

 ドライバーのレバーを引く。

 パーカーゴーストが俺に取り憑いて変身完了。

 赤黒いオーラの余波が物理的エネルギーとなって周囲の悪霊を吹っ飛ばす。

 

 変身した俺は空を見上げた。

 空に張られた結界。

 そこには白骨化した遺体が何体も磔にされていた。

 恰好からして現代風なのでこの悪霊の遺体ということはなさそうだ。

 

「なるほど、狙った獲物は見逃さないってワケか」

 

 心霊現象を体験した人間が帰って来なければ、この心霊スポットの危険性は伝わらない。なにせ情報源がないからな。

 スマホも同様。都内だというのに圏外になっている。おしらく結界で電波を遮断されているんだろう。

 けど、何故いきなりそんなに凶悪になったんだ? 夜宵ちゃんやババアの話だとそんなに狂暴じゃない筈だが。

 

「まあいい。お前を倒してアイコンにしてからじっくり聞く」

 

 やることは変わらない。

 目の前の敵を倒す。ソレだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「やってるやってる。派手にやってる」

 

 悪霊の策略によって螢多朗と分断された夜宵。

 彼女は自力で悪霊を撃破して依代へ封印し、螢多朗と合流。

 その時には既に決着がほぼ付いていた。

 

「(やはりあの形態になったファントムには呪いが効かない。むしろ対呪効果が強すぎて相手にダメージを与えている)」

 

 悪霊たちがファントムに触れて呪いをかけようとする。

 しかしファントムに呪いが掛かる事は無く、逆にファントムの霊力によってダメージを受けていた。

 呪い返しではない。

 ファントムの溢れる赤黒い神力。

 コレが呪いをかき消し、尚余る神力が悪霊を火で炙るかのように焼いている。

 

「けど相手もそろそろ本気を出す。ここからが見どころ」

 

 悪霊たちは分霊。ドーム状に覆っている結界も分霊から構成されており、本体はおそらく滝壺に浮いている生首だろう。

 これだけ多くの分霊を作っているのならパワーダウンしている筈。よって再び一つになって攻撃してくるであろう。

 そして次は、呪いをより圧縮してより原始的な戦いになる。

 

「~~~~~!」

 

 案の定、本体である生首が動き出した。

 分霊たちをかき集めて一体化。身体と武器を新たに構成する。

 彼女が持つ武器は薙刀。ソレを振り回しながらファントムに接近する。

 

 

「刻み付ける!」

 

 女の影から無数の白い手がファントムに伸びてきた。

 だがこんなものに捕まるファントムではない。

 迫り来る白い手を避け、受け流す…。

 

「ッ!!?」

 

 ファントムの腕が白い手に触れた途端、装甲に切り傷が入った。

 薄い傷。ダメージすらファントムには入ってない。

 だが、さっきまで呪いを無効化どころか逆にダメージを与えてきたファントムに、呪いが通ったという成果は大きい。

 分霊で構成された白い手これなのだから、呪いが圧縮された薙刀で切られたらどうなるかは、火を見るより明らかである。

 そして、今のファントムはガンガンセイバーを持っていない。

 どうやらブラッディアイ魂にはサングラッシャーやディープスラッシャーのような追加武器がない上に、基本武器であるガンガンセイバーも使えなくなる制約があるらしい。

 だが、抜け道はある。

 

「ならコイツの出番だな」

 

『アーイ!』

 

 取り出したのは切裂魔魂。

 アイコンのスイッチを入れてドライバーに装填する。

 ソレを見た夜宵はブラッディアイ魂では不利だとファントムが判断したと思ったが…。

 

『Wake up! 切裂魔(Ripper)

 

『Slashing knife!』

 

 素体はブラッドアイ魂のままだった。

 三本の角はブラッドウィプスホーンに、胸のブレストクレストは銀色に、トランジェント体も赤く血塗られた意匠のまま。

 マスク部分とパーカーゴーストは切裂魔魂に切り替わっており、両手には刀身が赤黒いグルガナイフが握られている。

 

「グルガナイフか。センスいいな」

 

 これがブラッドアイ魂最大の特徴。

 ファントム魂と同様にフォームチェンジも可能であり、ソレゾレの形態に専用武器がある。

 切裂魔魂の場合はリッパ―ナイフ。グルガナイフ型の武器であり、物理的な高い切断力とあらゆるものを断ち切る呪いが込められている。

 

「らあっ!」

 

 白い手目掛けリッパ―ナイフを振るう。

 ぶつかり合う切断の呪い。

 拮抗は一瞬。ブラッドアイ魂によって強化された切断の呪いが白い手を呪いごと切り裂いた。

 対するリーパーナイフは無事。刃こぼれ一つない。

 

「行くぞ!」

 

 ファントムの連続斬り。

 迫る白い手を振り払う

 道を切り開いて前進する。

 一歩ずつ。確実に。前へと。

 そうして敵の眼前まで接近した。

 

「何で…何で切れないのよ!!?」

 

 ファントム目掛けて薙刀を振るう。

 ソレを容易く弾き飛ばすファントム。

 一撃目。刃による振り下ろし。リッパ―ナイフの側面で払い飛ばす。

 二撃目。石突によるかちあげ。威力が乗る前にリッパ―ナイフを軌道上に差し入れて止める。

 三撃目。持ち手によるぶちかまし。半歩横に避けながら体を回転させてナイフを振りかざした。

 

「うがあッ!!?」

 

 リッパ―ナイフが女の悪霊の背中を切り裂く。

 刻まれた深い傷。

 切断の呪いが込められたソレはファントムが許可しない限り再生する事はない。

 更にファントムは追い打ちをかけるように斬撃を数発浴びせ、最後に蹴り飛ばした。

 

「~~~~~!」

 

 追い詰められたH城址の悪霊。

 状況を打破するために彼女は賭けに出た。

 ドーム状の結界を維持している分霊まで回収。

 全ての呪いのエネルギーを全て薙刀に収束させた。

 

「次の一撃に全てを賭ける気か。いいぜ、乗ってやる」

 

 リッパ―ナイフを重ね合わせた途端、二本のリッパ―ナイフが合体。鋏型の武器、リーパーシザースとなった。

 この状態でファントムはドライバーのレバーを引いた。

 

『Destroy! Omega drive!』

 

 向かい合う両者。

 互いに互いの得物にエネルギーを集中させ、刃の部分が禍々しく輝く。

 リーパーシザースは赤黒い血のような光を放ちながら炎のようなオーラを、薙刀は紫と黒の光を放ちながら靄のようなオーラを纏う。

 

「はあああああああああああああ!!!」

 

 裂帛の勢いで振り下ろされる薙刀。

 ソレを易々と受け止めるリッパ―シザース。

 拮抗は一瞬。挟んで受け止めたリッパ―シザースが呪いごと薙刀を切断した。

 

「ッ!?!?」

 

 砕ける薙刀。

 受け止められ切断された刃の部分だけではない。

 長柄まで刃物に切り込みを入れられたかのように亀裂が走り、派手に砕けた。いや、切り裂かれた。

 破片となって飛び散る薙刀の刀身に愕然とするH城址の悪霊の表情が映る。

 そして、トドメをさそうとするファントムの姿も。

 

「―――ッ!?」

 

 六つの銀閃が走った。

 ソレはH城址の悪霊の首と四肢を刎ね、胴体を両断。

 いつの間にか分割して元の形状に戻ったリッパ―ナイフがH城址の悪霊を切り裂いたのだ。

 

「H城址の悪霊、ゲットだぜ」

 

 倒した霊を封じたアイコンを握り締めながら、ファントムは晴れた夜空を見上げた。

 

 

 





太歳星君>超えられない壁>神としての壁>ファントムブラッディアイ≧鬼軍曹>ファントム通常形態≧花魁>弱めの卒業生>強めの悪霊

大体強さのバランスはこんな感じでイメージしてます。
ただしファントムに限ってはアイコンチェンジがありますので単純なステータスでは測れない強さがあります。
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