そりゃあ英雄と悪霊だったら、英雄の方が強いに決まってますからね。
このベルトを手に入れたのは中学の頃、霊障に巻き込まれた時だった。
俺は一度、悪霊によって地獄に生きながらにして送られた。
そんな時だった、鬼のような影が俺に力を与えたのは。
「面白い魂を持っているな。君ならコレを使えるかもしれない」
「これは運命だ。コレを持っているタイミングで君は僕に出会った。鬼の僕が言うのも何だけど、天命ってやつかもしれない」
「うまく使いこなしてくれ。強い魂を十五個集める事で君は完全に成れる。あ、どうせなら悪人の魂をお勧めするよ。用途的にもね」
「応援しているよ、ファントム」
こうして俺の戦いは始まった。
「成程、母親の魂を奪った悪霊を倒したいんだ」
電話ボックスの悪霊を回収した後、私は詠子の車の中で全てを話した。
空亡の事、奴を倒す為に悪霊を集めて蟲毒をしている事、集めた悪霊を身代わり人形にしている事、蟲毒を生き残った卒業生の存在も。
話せることは全部話し、質問にも全部答えた。
逆に、私は何も聞かなかった。
私とこの人―――螢多朗先生は対等な立場じゃない。
螢多朗先生が変身したあの鎧は強かった。
最低でも卒業生クラス。もしかしたら神クラスかもしれない。
そんな相手と対等に質問するなんて論外。ここは
幸い相手は良識的。なら。温情に縋ったら聞いてくれるかもしれない。
詠子と一緒に鳴き落としすれば万全。何なら身体を使うと脅すのもアリ。
この人にはソレだけの価値がある。
あいつを……空亡を倒すだけの力が。
「いいよ。ただし条件がある」
ほら来た。ここからが正念場だ。
アレだけの力を持つのなら、大抵の要求は吞ませられる。
この人の力はソレほど大きいものだ。
一体どんな要求が……。
「空亡を倒したら、その卒業生の魂を渡してほしい。……あ、悪人のだけね?」
「………え?」
要求はあっけない程軽いものだった。
「そ、そんなことでいいの?」
「うん。君が霊を集めているように、俺も強い悪霊を集めているんだ。だからその卒業生に興味が湧いた」
「いい。空亡を倒したら全部あげる」
「そ、即答か。もう一度聞くけどいいの?苦労して集めたんでしょ?」
別に問題ない。
悪霊集めは手段でしかない。
目標を達成した後はむしろ害になる。
「契約成立。これからよろしく」
今日は良い日だ。
卒業生クラスの力と共に悪霊の後処理先まで手に入るなんて。
だったら、これからは気合を入れてより多くの悪霊を集めなければ。
「で、詠子。お前仕組んだな?」
「あれ?バレちゃった?」
帰宅後、電話で俺が聞くと盗聴魔は悪びれもなく答えた。
「けどコレで螢くんもやりやすくなったんじゃない?」
「確かに味方が増えるのはいいけど……本当に大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫!私、夜宵ちゃんの戦うところみたころあるけど、螢くんと遜色なかったわよ?」
「………マジ?」
にわかに信じがたい。
俺は変身してやっと悪霊と戦えるんだぞ?
素手でも雑魚なら祓えるが、危険なことに変わりない。
ソレをあの子がやるというのか?まだ小学三年生のあの子が?
確かに、あの子は頭がいい。悪霊と依り代を利用したあのシステムには驚かされた。
けど、所詮は生身の人間。霊的防御がない以上、簡単に呪いに嵌る。
俺も何度罠に嵌って死にかけた事か……。
「(けど、詠子がソコまで言うなら大丈夫なのか?)」
このストーカーは俺の戦いを間近で見てきた。
巻き込まれることを危惧して何度も関わるなと言っても聞きやしない。
時には盗聴して、時には監視カメラをハッキングして、時にはドローンを飛ばして。
そんな彼女が言うのだから信用してもいいのだろうか。
「じゃ、次の心霊スポットは~」
「待て待て、また付いて来る気か?」
「勿論!」
この女も大概だな。
あんな怖い思いをしたっていうのに……。
「それじゃあ、夜宵ちゃんを助けてくれるってことでいいのよね?
「うん。あの子は止まらないよ。・・・いや、止まれないって言ったほうがいいかな」
一目見て分かった。
あの子は何があっても闇に潜るのをやめないと。
母親の魂を救うためなら自分の命すら厭わない。現に、俺の協力を得るため全てを差し出すと言ってきた。
もし仮に俺が体を要求しても、彼女は顔色一つ変えずに分かったと了承するだろう。
だからどれだけ止めても無駄。守る手をすり抜け、修羅の道を突き進んでいく。
“私の命の散らせ方は、私が決める”
こんなセリフを言える程の覚悟だ。
もう誰にも止められない。
「なら俺が守る。その方が確実だ」
「そう。……さすが私のヒーロー!」
そんなんじゃないよ。
散々悪いことしたんだから、少しは仮面ライダーらしいことしなくちゃ。
「で、何で夜宵ちゃんはここにいるの?」
所変わって大学。
時間が無かったのでバイク登校すると、夜宵ちゃんが詠子と一緒にいた。
詠子の奴、車登校は禁止されてるのに。
「いいじゃない螢くん。どうせ今日は体験授業ばっかりなんだし」
「まあ…うん、そうなんだが……」
けど、だからって大学内に子供がいていいのか?
一抹の不安はあったが俺は彼女たちと一緒にキャンパス内を回る。
その中で妙な授業にあった
「この授業では曰く付きの物で恐怖を体感してもらう」
都市伝説の授業。その内容は怖い話を聞くというもの
こんな怪しい授業をな何で選択科目にあるんだ? この学校は一体何を考えている?
今回検証するのは呪いのビデオ。
ある美大生が焼身自殺する様を録画した物であり、このビデオを見た人間は登場人物が見ている人間に代わり、焼死するらしい。
で、いつもの霊媒体質が出てしまった。
あの野郎俺を呪いやがった。
自殺している生徒が俺に変わり、明かれながら俺の方を指さす。
「な、なんだこれは!?事前に見たがこんなことはならなかったぞ!」
先生は慌てた様子を見せた。
どうやら先生自身も本当に呪いがあるとは思っていなかったらしい。
まあ、そりゃそっか。普通なら呪いがあると分かって見せようとはしない。
「「「………」」」
教室中に重い雰囲気が漂う。
急いで住職に知らせに向かう教員。
ヤバいと分かって逃げて行く生徒達。
そんな中、俺はこの呪いを解除すべく動生きだした。
「俺を燃やす? いい度胸だ。本物の炎を教えてやる」
『アーイ!』
俺はアイコンを取り出し、ドライバーを出現させる。
けど、今回変身するのは、ファントム魂じゃない。
『Wake up!
『Burning fire!』
炎と爆弾で何十人もの人間を殺した放火魔の魂を封じたアイコン。
能力は火炎操作。スペックは他の形態と比べて劣るが、呪力の炎による多彩な技を可能とする。
まあ、こんな雑魚相手にはオーバースペック過ぎるけどな。
「~~~~!」
異常を感知した悪霊が逃げ出そうとするが、もう遅い。
誰を敵に回したのか、ソレがどれ程馬鹿な行いなのか、身に沁みさせてやる。
急接近。
スペックは低いと言っても、100mを7秒で完走し、一跳びで25m跳べるジャンプ力だ。その辺の雑魚なんて格闘だけでも十分潰せる。
ガシッ!
ビデオの中にいる悪霊を掴み、引きずり出す。
ファントムの手を覆う強化グローブ、フェイタルグローブ。
霊的物質で形成されたコイツは、同じ霊的存在を掴むことが出来る。
また、エネルギーを籠めれば、そのまま潰す事だって可能だ。
「ぎゃあああああああああああ!!!?」
ビデオから引きずり出したと同時、けたたましい悲鳴が教室中に響いた。
燃えているのだ、俺の炎で。この雑魚じゃ出せないような炎で。
悪霊も呪いで俺を燃やそうとするが無意味。火力が全然違う。
同じ系統の呪いがぶつかり合うなら、より強い方が勝つ。
「燃え尽きろ」
掴んだ頭を握り潰し、飛び出た脳を燃やす。
骨の髄まで焼いたところで俺はソイツを手放し、封印の印を結んだ。
対象に目の紋章を描き、力を注いで開眼させる。
途端、開いた目が霊を吸収して眼魂になった。
「・・・外れか。まあ、仕方ない」
出来たアイコンは予想通り雑魚。
やれやれ、俺の眼魂集めはまだまだ掛かりそうだな。
・ファントム魂
パンチ力:5トン
キック力:10トン
ジャンプ力:40m
100m走:5秒
アイコンナンバー:00
ファントムの基本形態。螢多朗の魂そのものが入っている。
何故魂が体外にあっても生きれるのか。ソレはまた後ほど。
・放火魔魂
パンチ力:4トン
キック力:8トン
100m走:7秒
ジャンプ力:25m
アイコンナンバー:02
ファントムの属性攻撃形態。放火魔の魂が封印されている。
焼身自殺して悪霊化し、放火魔となって暴れていたところを螢多朗に敗北して封印された。
正直なところ劣化版エジソン魂。