成り代わり陣営は成り代わることを転生って言ってるらしいですね。
ソレだとこの螢多朗くんもそうなるんですかね?
「またダブった。なんでこんな01ばっかり…ん?」
H城址の悪霊を封じたアイコン。
いつもならこれで終わるのだが、今日は少し様子が違った。
アイコンから伸びる銀色の糸のようなもの。
ソレは滝の底まで伸びていた。
「何だコレ?初めて見るケースだ」
「これは何かある。もしかしたら大人しかったこの霊が悪霊化した原因かも」
気になって糸をリッパ―ナイフで斬った後、糸が続いていた滝の中に入る。
そこにあったのは、ミイラ化した腕を入れたケースだった。
「おそらくこれは呪物。善霊だったこの霊が悪霊になったのはこのせい」
「え?じゃあ俺は洗脳されてた女の子をナイフで斬りまくってたの?」
ソレじゃあ俺が悪者じゃん。
仮面ライダーに変身してるのに、元ネタの人たちに悪いよ!
「いくら本人の意志ではないとはいえ人の命を奪ったのは事実。だからこれぐらいは温情」
夜宵ちゃんはそう言って俺からアイコンを取り、スイッチを押して悪霊を呼び出す。
「やられたことは忘れない……もちろん、助けられたことも」
H城址の悪霊……いや、もう悪霊じゃないか。
彼女は不満そうだが礼を言った。
「危険性が無くなった今の貴方ならここにおいても問題はない。だから今は力を蓄えてゆっくりしていて。時期が来たら力を借りたい。その時はちゃんとお神酒を持っていく」
「そこに強いお侍さんがいるのに私が必要なの?」
お侍さんって俺の事か?
確かに小太刀みたいな長さのナイフ振り回してたけど。
ちなみにまだ変身解いてない。まだここが安全と決まったわけではないのと、どれだけ長く変身を保っていられるかのテスト中だ。
「まあいいわ。今度はお友達も連れてきてね」
H城址の霊―――千魂華厳自刃童子と協力関係を結び、彼女のアイコンを埋める。
グルガナイフって穂先がデカいから穴掘り易いな。流石の業も火事も首領も出来る汎用大型ナイフ。
これで万事解決。夜宵ちゃんが俺と合流する際に封じた分霊も解放して…。
「「ひいいいいい!!?」」
あ、逃げた。
コイツ等は分霊じゃないんだ。
ということは…。
「怪しいな」
俺は咄嗟に持っていたリッパ―ナイフを投擲した。
ブーメランのように回転しながら標的へと飛んでいくグルガナイフ。
どちらも狙った獲物の脳天にいい感じで突き刺さり、動ぎを止めることに成功した。
「………え?」
「何を惚けてるんだ夜宵ちゃん。こいつ等をとっ捕まえて色々と吐かせるよ。もしかしたらあの呪物について知ってるかもしれない」
「あ、そういうことね。分かった」
「成り代わり?」
捕獲した二人の浮遊霊。
コイツ等を尋問したらとんでもない情報を手に入れてしまった。
なんと、悪霊共が生きている人間を乗っ取り、組織的に行動しているようだ。
何を企んでいるかは知らないが、こんなヤバい呪物を所有し、心霊スポットに置いて強力な霊を狂暴化させるような奴らだ。碌な奴らじゃない。
第一、既に死んでいる癖に、生き人間を乗っ取って現世にしがみついている連中がマトモなわけがない。
全員粛清対象の悪霊だ。
「で、他に知ってることは?」
「知らん!ワシらは奴らに捕まってこき使われただけじゃ!」
「そうか。だったら…」
俺はリッパ―ナイフをこれ見よがしに振りかざす。
「本当じゃ!全部話した!だからもう解放してくれ!あそこに戻っても便利に使われるだけじゃ!」
「………」
この反応はマジっぽいな。
これ以上搾っても情報は出なさそうだ。
「どうする夜宵ちゃん?」
「先ずはこいつ等を餌にして成り代わりを見てみようと思う」
「奇襲を仕掛けるってことか?」
「いや、リスクが高い。あくまで敵がどういったものか確認するだけ。欲張りは損をする」
なるほど、先ずは様子見か。慎重だな。
そうと決まれば即行動。盗撮魔魂で情報収集するのもいいが、もっといい方法がある。
「もしもし詠子?もう近くまで来てるんだろ?ちょっとやってほしいことがあるんだけど」
本当に・・・本当に色々あった。
いやマジで。
成り代わりの情報収集に、呪物置き場を作る為の物件探し。
まあ俺は全然関わってないけどな!
ファントムは目立つ。
霊気が強すぎて悪霊共を威圧させてしまうのだ。
通常のファントムでソレなのだから、ブラッディアイ魂を使うなら猶更だ。
俺がわざわざ敵の目の前で変身するのも、決して元ネタのライダーを真似てそうしているわけではない。
敵と対峙する前までは誘蛾灯なこの体質を利用する為に生身で出て、敵が出たら変身して戦う。そうやって使い分けているのだ。決して格好つけてるわけじゃない。
閑話休題。
色々あったが俺達の目的は変わらない。
太歳星君をぶっ倒して愛依ちゃんを助ける。ソレだけだ。
けど、物件探しでまさか詠子が悪霊に襲われるなんて思ってなかった。
呪物はアイコンに出来ない。
鬼軍曹の祈りも本人が制御出来ない以上封印することは出来ないし、寄って来る敵兵の霊達も同様だ。
だから隠し場所探しは必要だったし、ただ物件を探すだけなら大丈夫だと思っていたが、事故物件で悪霊と遭遇したらしい。
俺も呼べよ!そんな悪霊ボコボコに出来るのに!
ファントムは霊体に触れられる。なにせファントム自身が霊体だからな。
この特性を応用すれば対象に悪霊が取り憑いても、力ずくで引っ張り出す事が出来る。現に俺は物や人に取り憑いた悪霊を引き剥がして倒したことがある。
詠子もこのことは知ってる筈なのに、何で俺を頼らなかったんだ? この間夜宵ちゃんと一緒に心霊スポット行ったこと根に持ってるのか?
まあいい。
なんとか無事に戻って来たんだ。
今はそのことを喜び、何かしら労ってやろう。
じゃあ先ずは自分を労ってやらないと。
というわけで俺は近くのバイキング形式の店に寄った。
ブラッドアイ魂を使うと腹が滅茶苦茶減る。
ラガーマンや相撲取りかってうぐらい食うようになる。
パーカーチェンジを行うとより空腹になり、今の小遣いじゃ賄えない。
だからこうして食べ放題や大食いチャレンジがある店で食う事にしている。
ファントムに変身して戦った後は腹が減るが、まさかここまで大食いになるなんてな。
料理が届くまでの間、少し考えごとをする。
神様だけじゃなく成り代わりなんてものとも戦わなくちゃいけないのか。
ただ集まってるだけなのか、強いやつに一方的に支配されてるだけなのか、それともちゃんと組織として機能しているのか。それすら分からない。
メンバーも目的も組織の動き方も不明。分からないことだらけだ。
これからあの神様対策もしなくちゃいけないのに…。
俺は………転生者の俺は、成り代わりって言えるんじゃないか。
「(よせ、そんなことを考える意味なんてない)」
そうだ、どうでもいいことを考える暇はない。
あの神を、太歳星君を倒す事だけ考えるんだ。
俺がやらなくちゃ愛依ちゃんが生贄にされる。
ただ殺されるだけじゃない。
死後も囚われて嬲られ続けるんだ。
勝てるかどうかじゃない。勝つしかないんだ。
「へいお待ち」
そんなことを考えていると料理が届いた。
デカ盛りの天丼。これでもかと天ぷらが山盛りに乗せられている。
「いただきます」
余計な考えを振り払うため、俺は飯を食う事に集中した。
ちなみに大食いチャレンジは成功。3㎏あるらしいがギリ時間内に食べきれた。
じゃ、腹ごなしも終わったし次は運動だな。
ある程度消化した後にファントムーディーで卒業生ハウスに向かう。
町から少し離れているから交通の便はあまり良くないが、むしろこれからやる運動を考えると都合がいい。
何も考えずに暴れられるからな。
「いつもの模擬戦だ。相手頼むぜ軍曹」
「いいぞ。いつでも来い。殺す気でな」
卒業生ハウスの前にある小さな広場。
俺は軍曹と対峙していた。
少し前までは雑草に覆われていたが、何度か軍曹と戦ってるうちにこうなってしまった。
ファントムに変身してガンガンセイバーを構える。
軍曹も軍刀を引き抜き、祈りを刀身に圧縮させる。
にじりにじりと距離を詰め、互いの攻撃範囲が重なったことで一気に動き出す。
「「らあッ!」」
俺たちは同時に剣をぶつけ合った。
やっぱり戦いはいい。
その熱は余計な不安を忘れさせてくれる。
この螢多朗と成り代わりの違いについて思いつくことは、成り代わりは自我を持つ人間に取り憑いて魂も肉体も奪うのに対し、この螢多朗は自我が出来る前に魂が入り込んで共存し、二つの魂を持つ一人の人間として成立している点ですね。
どっちが異端かは・・・皆さんの判断に任せます。