スペックなんてライダーにとって飾りですからね。
マジで当てにならん。
東京都のSランクの心霊スポット、旧I水門。
螢多朗はその河原で一人の少年に出会った。
字奥は夕暮れ。子供は帰る時間。よって螢多朗はその少年に目線を合わせて優しく家に帰るように言った。
そして、ソレが間違いだと彼はすぐに気づくことになる。
少年に渡されたスケッチブック。
描かれていた内容は凄惨なものだった。
義母からの虐待とネグレクト、義母と間男との肉体関係、そして義母と間男による父親の殺害。
そして何よりも酷いのは、父親の遺体を解体し、肉団子にして子少年に捨てさせた事。
餓死寸前だった少年は義母に捨てるよう命令された肉団子を食べてしまう。
義母は間男も殺害。少年は逃げたが水門で義母に捕まり殺された。
包丁で滅多刺しにされた挙句、肉団子にされて水門に捨てられた。
自身が食らった肉団子が誰のものか気付き、父親への懺悔と義母への憎悪を綴っていた。
最後のページには首を水門に吊るされている義母の姿。
釣られて水門の方を見ると、絵と同じ光景があった。
「ねえ、アンタ代わってよ」
「触んな淫売」
背後に感じる霊の気配。
瞬間、螢多朗はその霊―――義母を投げ飛ばした。
「ッ!!?」
背負い投げ。
頭から地面に叩きつけられた義母は、そのまま頭をかち割られて血と脳をぶちまけた。
「よくお父さんのために我慢できたね。けど、もう君は頑張らなくてもいいんだよ?」
「………」
少年の頭を撫でながら言う螢多朗。
足元にいる義母の霊を何度も踏みつけながら。
既に頭をかち割られた女は色んな体液を流しながら何度も潰される。
しかし少年の反応はない。
怪訝に思いながら螢多朗は少年から渡されたスケッチブックをめくる。
おかあさん、ゆるさない。
おかあさんがいっぱいいます。
いままでおかあさんじゃなかったひとがおかあさんにみえます。どうしよう。
みんな、にくだんごにしよう。
「ッ!!?」
『Bloody eye!』
瞬間、螢多朗の背筋に嫌な悪寒が走った。
荒れ狂う憎悪と呪いの気配。
ソレを感じ取った彼は咄嗟にブラッディアイ魂を起動した。
「先生!」
「螢くん!?」
「下がってて二人とも。ここは俺がやる」
『Look into my bloody eye! Look into my bloody eye!』
ドライバーを召喚してアイコンをセット。
現れたパーカーゴーストが呪いから夜宵と詠子を守る。
「変身」
『Wake up! Bloody eye!!』
『I am fighter destroy evil』
『Go! Fight! Go! Fight! Go Fight!』
変身完了。
ファントムは少年…いや、旧I水門の霊と対峙する。
そこにいたのは目や口から血を垂れ流し、胸には無数の刺し傷が刻まれている痛ましい姿の怨霊だった。
先程までのは旧I水門の怨霊が作り出した生前の自身そっくりの虚像。
空気中の水分や川辺の水などの、光の反射や屈折を利用して形成。霊感の有無に関わらず目視可能なものだ。
まあ、そんなことは今のファントムに関係ないのだが。
『Destroy! Omega drive!』
ファントムが早速仕掛けた。
変身したとほぼ同時、レバーを引いて必殺技を発動。
旧I水門の霊目掛けてライダーキックを繰り出した。
一撃で終わらせるつもりだ。
相手は子供。過去を知った事もあってファントムは………螢多朗は同情の念を抱かずにはいられなくなった。
だからこそ、苦しむ間もなく倒すことがこの子を救う事になる。
しかしその想いが叶う事は無かった。
「ッ!?」
旧I水門の霊も動き出す。
四肢と首がバラバラに離れたのち、紫に染まった念動力の手が少年の身体を覆う。
体に巻き付いた腕の形状がホースか縄のように丸くなり、四本の巨大な腕が生えたパワードスーツのようになった。
指先が硬質な造詣の巨腕。四本のソレを咄嗟にクロスさせてガード。
ファントムの蹴りによって腕と鎧を破壊され、その衝撃で吹っ飛ぶ旧I水門の霊。
だがなんとかファントムの攻撃を防ぐことには成功した。
「(ッ!? マジか!?)」
自身の必殺技を防がれた事に驚くファントム。
卒業生クラスの悪霊を圧倒したブラッドアイのオメガドライブ。
ソレを防ぐということは、この霊は卒業生クラスの悪霊の中でも群を抜いて強いという事。
下手に同情して手加減すればやられる。ファントムはやっと本気を出した。
「すぐに終わらせる」
『アーイ!』
選んだのは追撃ではなくアイコンチェンジ。
スイッチを押したとほぼ同時にベルトへ装填した。
『Wake up!
『Bludgeoning Body!!』
パーカーチェンジ。
右手に両端がメイスの巨大な専用武器―――ブラジョンハンマーを装備。
ファントムは撲殺魔魂で強化された剛腕でソレを振り回し、大気を薙ぎ払って風を起こした。
「ッ!?」
ファントムの変化を警戒して動き出す旧I水門の霊。
弱体化を補うべく周囲の浮遊霊を手当たり次第に喰らって自己強化を行う。
四本の巨腕を再び生やし、握った部位を削り取って少年の手にあるタッパーの中から肉団子が出現。ソレを喰って回復し、再び黒い手が巻き付いた。
纏わせた黒い腕が包帯に変化し、巨腕は肘の辺りまで巨大化。同時に巨碗部分は全体が角ばった硬質な造形に変化した。
「あああああッ!」
巨腕を伸ばしてファントムを捕らえようとす旧I水門の霊。
硬く、速く、そして力強い伸縮する四本の巨腕。
ソレをファントムは容易く振り払った。
ブラジョンハンマーを一振り。
発生した風圧によって旧I水門の霊は吹っ飛んだ。
「~~~~~!!? うわあああああッ!」
更なる自己強化を行う旧I水門の霊。
全身が鋭角的な造詣。ロボットのようなデザイン。阿修羅像のような風貌。
現段階で彼が出来る最終形態。
今度は腕を伸ばさず、ファントム目掛けて全力で飛び掛かる。
『Deatroy! Omega drive!』
迎え撃つファントム。
ドライバーのレバーを引いて必殺技を発動。
エネルギーがフレイルの両端に集中し、禍々しい光を放つ。
ソレに合わせてファントムも構え直す。
己が武器を握り締めながら振り上げ、深く腰を沈めて力を籠める。
「らあッ!!」
全力で放つ必殺技。
凄まじいオーラを纏うブラジョンハンマー。
強烈な怪力によって振るわれたソレは、大気を震わせながら繰り出される。
轟音。
大砲の如き派手な衝突音。
その一撃は着弾したと同時、旧I水門の霊の鎧を粉々に破壊した。
「うわあああああ!!?」
吹っ飛ばされる旧I水門の霊。
鎧の破片が粉々になり、空中で霧散していく。
旧I水門の霊はそのままドサッと地面に落ち、力なく倒れた。
「父さん…ごめん、なさい………。お、母さん…許さ、ない………」
「………」
ボロボロになった旧I水門の霊に近付くファントム。
その隣には夜宵もいた。
「………お母さん、じゃ…ない?」
「うん」
グゥ~と、少年の腹の音が聞こえた。
「おなか…すいた………」
「私がいっぱい食べさせてあげる」
「…なんで? 僕、ワルモノなのに…」
「悪者?」
夜宵が聞くと、旧I水門の霊は泣きながら言う。
「ぼくが…わるいから……ヒーローは、ぼくをたおしたんでしょ?」
「………」
これが本来のこの子。
ただ誰かを傷つけたいわけではないのだ。
「無差別に呪いう霊を放置しておけない。けど、ターゲットを絞るなら約束できる」
「ホン、ト…?」
「うん、だから来て」
「………うん。みんな…また、おかあさんに、みえちゃう前に」
「旧I水門の霊、ゲットだぜ」