仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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京都心霊スポット巡りの順番を原作と変えました。



F公園

 

 最悪だ。

 いきなりやられた。

 真昼間から急に仕掛けられるなんて思ってもいなかった。

 

「詠子!詠子!………クソ!」

 

 F公園。

 京都にたどり着いて最初に向かった心霊スポット。

 一番やばそうだと思って最初に向かったのだが、それが悪かったのか。

 いや、どの道行くことになるのだから遅いか早いかの違いだ。

 

 油断した。

 気配もなくソイツは現れ、詠子の魂を取りやがった。

 いや、空のヤバい気配を隠れ蓑にして仕掛けたといったところか。

 

 上空に浮かぶ穴のようなもの。

 F公園は応仁の乱で戦場となった歴史があり、そういった場は自然成仏が難しいらしい。

 で、さ迷う魂を回収する為に“死神”が上空に出入り口を作ったと夜宵ちゃんは推測している。

 ここが心霊スポットなった原因は死神だと思ったが、アイツが原因だったのか!

 

「クソッ変し…」

「待って先生!無暗に行くのは危険!まずは敵の戦力を分析して!」

 

 ブラッドアイ魂を出そうとした瞬間、夜宵ちゃんが止めた。

 彼女の言う通りだ。いくらブラッドアイ魂が強くても呪いを完全に無効化出来るとは限らない。

 ソレに、あの悪霊は俺達に気づかせることなく詠子の魂を盗んでいった。

 何かカラクリがある。もし闇雲に突っ込んでいったら、二の轍を踏むことになるかもしれない。

 

「戦力分析ならコイツだ」

詐欺師魂(Liar!)

 

 俺は、ブラッドアイによって新たに手にした能力を解放させた。

 

 

 

 

 

 F公園の霊。

 京都の心霊スポット、F公園に出現する老婆の霊。

 サイレン塔周辺に出没し、痩せ細った馬のような顔と白く長い髪の毛、そして三つ目という化け物染みた姿をしている。

 下駄ともんぺという格好で、提灯を片手に持ってベビーカーを押している。

 このベビーカーには赤ん坊の人形が乗っており、これを見た人は魂が人形に吸い取られる。

 若い女性だけを狙い、今回は詠子が魂を取られた。

 

 まだ救出チャンスはある。

 人形と詠子の身体の間には魂と肉体とのつなぎ目のであるシルバーコードが伸びている。

 コレが切れてないなら魂を取り戻せばまだ間に合う。

 

 焼却炉に人形を投げ入れる。

 松明に火を付けて燃やそうとした瞬間、何か霊目掛けてが飛んできた。

 

「ッ!?」

 

 飛んできた何か―――鎖に手を取られ、松明を落とすF公園の霊。

 何者だ、そう言いたげな顔と目で鎖が飛んできた方を向いた。

 

「なんじゃお前はぁ!?」

 

 ファントム詐欺師魂ブラッドアイベース。

 その手には鎖鎌のような武器が握られ、鎖部分がF公園の霊の右手に絡まっていた。

 

 ディシーヴチェーン。

 鎖鎌型の詐欺師魂専用武器。

 ファントムは鎖を引いてF公園の霊を拘束している。

 

「この…クソガキが!」

 

 口から人形を吐き出すF公園の霊。

 魂を奪い取り、封じる呪いの人形。

 この人形の目を見た者は生者死者問わず魂を強制的に人形に吸い込まれる。

 生者は魂を取り戻すまで廃人となり、死者は魂だけなので誰かが人形を破壊するまで永遠に人形に封じられたままとなる。

 強力な呪い。先ず人形の眼を見たら即終了というのが強すぎる。

 

「ッ!?」

 

 ファントムも目が合ってしまい魂を封じられる。

 霞のように身体が消えていきながら人形に吸い込まれていった。

 F公園の霊は笑った。これで邪魔者が消えたと言わんばかりに。

 

「らあッ!」

「ッ!!?」

 

 瞬間、何者かに背中を斬られた。

 何者だ、襲撃者の正体を見破ろうと振り返りながら腕を振るうF公園の霊。

 反撃自体は避けられたが特に気にはしない。

 目的は追撃の阻止と正体の確認であって、迎撃は当たればラッキー度にすぎない。

 だが襲撃者を確認した途端、F公園の霊は目を見開いた。

 

「お前ェ、人形になったんやないんか!?」

 

 襲撃者はファントムだった。

 全く同じ姿。武器も鎖鎌を握っており、鎌部分で霊の背中を斬り付けた。

 

 反撃するF公園の霊。

 右手を真横に振るうだけの単純なビンタ。

 ファントムは半歩下がって避けながら鎖を投げてF公園の霊の首に巻き付け、引っ張って相手の体勢を崩しながら鎌で斬りかかった。

 

「ふざけんなガキが!」

「ッ!? マジか!」

 

 ファントムに対抗するF公園の霊。

 鎖を握って、踏ん張って耐える。

 力ずくの抵抗。だというのにファントムの投げを耐えてみせた。

 

「ババアの癖に力強いな。けど!」

 

 F公園の霊の足を引っかけて倒すファントム。

 何度も模擬戦で鬼軍曹に食らった柔術。

 ソレを以てすれば、力が強いだけの素人ババアを投げ飛ばすなど他愛ない。

 

「ぐおおおあ!!」

 

 地面に投げ叩きつけると同時、鎌を突き刺す。

 深々と刺さる鎌。思いっきり刺さった個所を切り開いて傷口を刻み付けた。

 ファントムはそのまま馬乗りになって追撃を行おうと鎌を振り上げた瞬間…。

 

「邪魔じゃガキが!」

 

 F公園の霊の貫手が喉に突き刺さった。

 いや、貫手というには稚拙。ただ力づくで指を突きだしただけだ。

 だというのにソレはファントムの喉を貫通し、撃退する事に成功した。

 喉をやられたファントムは霞のように消えていく。

 

 強い。

 痩せ細った老婆の外見とは裏腹に。

 呪いだけでなくフィジカル面でもこの悪霊は強い。

 ソレもその筈。この霊は何十年もの間、格上である死神を喰らってきたのだから。

 

 この霊の呪いは死神を喰う事に特化している。

 

 死神というのは螢多朗や夜宵が暫定的に名付けた正体不明の黒い霊的な何かであって、本当に死神というかは怪しい。

 ソイツらは死期が近い人や死んだ直後の人の元へ訪れその魂を喰らう。

 死神が殺しているのか、それとも死期になると現れるのかは現代会では不明。

 

 話を戻す。

 F公園の霊の目的は、死神の駆逐。

 そのために死神の入り口があるF公園に留まり続け、生きた人間の魂を人形に封じているのだ。

 ファントムが途中で妨害したから免れたが、この霊は魂入りの人形を燃やす事で死神をおびき寄せる。

 勿論、燃やされた犠牲者の魂は消滅する。その際、サイレンのような断末魔の絶叫をあげることから、苦痛と恐怖に塗れた惨い最期であるのは明白だ。

 

 後は呼び寄せた死神を喰らうだけ。

 そうやってこの霊はで死神を一方的に貪り食らっていた。

 では、死神を喰う事しか能がないのか。

 そんなことはない。

 

 悪霊の強さはどれだけの霊を喰ったかに決まる。

 格上の死神を何十年と食らい続けた事で、この霊の基本スペックは異常なほど上昇していた。

 あまりにも強すぎるため、何十年も霊能力者が匙を投げている程。

 京都といえば神社仏閣の総本山。故に強い霊能者はいくらでもいる。

 ソレでも避ける程この霊は強いのだ。

 

 この霊を倒せる者は誰もいない。

 ただ一人の例外を除いて。

 

「まだおるんか!?ゴキブリか己はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ソレがファントムである。

 鎖を投げようとしていた彼目掛け、F公園の霊は石のようなものをデコピンで弾き飛ばした。

 超高速で撃ち出される弾丸。

 小規模なソニックブームを伴い、燃え尽きながら砲弾のように撃ち出される。

 ソレを“5人のファントム”は軽々と避けていった。

 

 実体を持つ幻影。

 詐欺師魂がブラッドアイ魂によって新たに得た能力である。

 極小の分霊を作って核にして、幻影で覆う事で実体を獲得。

 分霊自体のコストは低いので能力やスペックに影響はない。

 そして何よりも、幻影が呪われようが倒されようが、本体には影響がない。

 やられたはずのファントム何事もなく戦闘を続けていたのがこの能力のおかげである。

 

 戦力分析に恰好の能力。

 なにせいくらでも囮なり何なりに出来るのだから。

 

「お前の能力はネタが割れた。弱点もな」

 

 人形の呪いは決して無敵ではない。

 一つの人形に入れられる魂は一つまで、魂入りの人形なら問題ない、人形を瞬時に作り出せない。

 幻影を使って暴いた敵の弱点。これだけ分かれば十分だ。

 

 二人の幻影が鎖を投げ、F公園の霊の両腕に絡める。

 引っ張って拘束しようとした途端、F公園の霊は踏ん張って抵抗。

 瞬間、二人の幻影は少しタイミングをずらして力を抜いた。

 抵抗した力が暴走してF公園の霊はパランスを崩し、その場でよろける。

 ソレを狙ってファントムの一人がF公園の霊の足元に投げた鎖を引っかけて転ばせ、そのまま拘束。続けて四人の幻影も鎖を投げて更に拘束を強めた。

 

「ぐ…おぉ………!!?」

 

 ガッチリとF公園の霊を拘束。

 力を入れようにも要点を抑えられて入れられない。

 どれだけ藻掻こうとも抜けだぜないF公園の霊。

 その隙にファントムと幻影は必殺の準備にかかった。

 

『Destroy! Omega drive!』

 

 機械音と共に跳び上がるファントムと幻影。

 三人から五人に分身し、其々が赤黒いエネルギーを纏う右脚を突き出す。

 

「ぐがああああああ!!?」

 

 五連発。

 ファントムの必殺技を受けて身体を引き裂かれるF公園の霊。

 裂かれた体が地面にボトボトと血を零しながら落ちて行く。

 

「祟ってやる……!滅ぼしたる………!」

 

 だが未だ諦めていなかった。

 生前の憎悪を想い返しながら、陰から腕を伸ばす。

 人形を燃やして死神を呼び寄せ、回復しようと目論んでいる。

 しかしソレは叶わない。

 

「させるかよ」

 

 ファントムがいるから。

 彼は鎌で腕を全て切り落とした。

 

「終わりだ」

 

 鎌を振りかざすファントム。

 ズドンと音がして、F公園の霊の視界は真っ暗になった。

 




この螢多朗は死神の存在を知っています。というか何度か戦って倒したことがあります。
ただ、死神はアイコンに出来ないので旨味が無い上に、通常の霊より強いので積極的にはやりません。
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