この回で使うアイコンは神主から貰った悪霊を封じたアイコンです。
と言ってもそのうちの一つしか使いません。
十五個は流石に多すぎますよ…。
タケル殿も十個しか使わなかったのに。
「折角だ。使って見るか」
『アーイ!』
ファントムは今朝封印した悪霊のアイコンを起動。
途端、アイコンから深緑色の電流が走った。
アイコン内の悪霊の抵抗だ。
「ッチ!やっぱ最初はこうか!」
アイコンは手に入れてすぐに使えるわけではない。
所詮は悪霊。英雄たちみたいに力を貸してくれる筈が無い。
封印を解いた途端に逃げ出そうとしたり殺しにかかって来る。
だから、力で分からせる必要がある。
「黙れ」
ファントムがアイコンを強く握り締める。
途端に走る赤黒い電流。
ソレはアイコンが発する深緑色の電流を押し流し、アイコン内に流れ込んだ。
ファントム自身の力で無理やりアイコンを支配。
最初はいつもこんな感じだが、今回はブラッドアイ魂の力で倍増したおかげで一瞬で終わった。
『Wake up!
『Venom hazard!』
新しいアイコンによる形態。
両手には鉄扇型専用武器、ヴェノムフィンを装備。
ファントムは両手の鉄扇をAダムの霊目掛けて振るった。
「ッ~~~~~!?」
咄嗟に腕をクロスさせて風に耐えるAダムの霊。
途端、風を受けた腕がブクブクと膨れ、やがて破裂してしまった。
飛び散る自身の血肉と激し痛みに、Aダムの霊はその場で傷口を抑えて蹲る。
「なるほど、そういう武器か。理解した」
毒殺魔魂の呪いは文字通り毒。
呪いで生み出す毒だけでなく、自然界の毒物や化学物質による劇薬など、物理的な毒も生成可能。
通常形態では対象に触れる事で毒を盛ったり、ガンガンセイバーの刃や銃弾に毒を仕込むのが主な使い方。
ブラッドアイ魂により強化され、専用武器によって毒の放出や拡散を可能とした。
「どんどんいくぜ!」
「ッ!?」
鉄扇を連続で振るい毒の風を起こすファントム。
激しい舞踊のような動作。
ソレに応えるかのように、毒の風はより強まっていった。
「ッヒ!?」
Aダムの霊は逃げようとするが間に合わない。
防御も何も出来ず毒の風を浴び、更に身体が膨れた。
「ぎゃああああああああ!!?」
ダメ押しとばかりにファントムが鉄扇を一閃。
深緑色の斬撃波となってAダムの霊を両断。
膨らんだ身体が弾けるように爆ぜた。
だが、これだけで終わらない。
「け…けけけ! けけけけけ!」
爆ぜた身体から細い神経の塊のようなものが出て来た。
顔は黒い体毛にびっしりと覆われ、ギョロッと血走った2つの目とボロボロの歯だけが露出している。
これがAダムの霊の本気の姿。
彼女は寄生虫の霊を呼び出して纏い、身体から黒い煙を撒く。
再び仕掛ける。
Aダムの霊がファントム目掛けて黒い煙を放出した。
虫の呪いの応用。
寄生虫霊の卵を煙状にして相手に浴びせ、支配して自滅させる。
このやり方で敵を返り討ちにしてきたが、今回は相手が悪かった。
ファントムが鉄扇を振るう。
巻き起こる毒の風によって煙は吹き飛ばされ、卵は毒殺されていった。
相性最悪。
全身から毒を分泌し、鉄扇によって毒ガスの風を生み出せるファントムは、彼女にとって天敵に等しい。
「~~~~~!」
威力が足りない。
ならば増やすしかない。
より多くの寄生虫を生み出し、ファントムの毒と風を圧殺させる。
そのためにAダムの霊は神経と寄生虫を“ゴミ箱”に伸ばし、生気を補充しようとした。
「やらせるかよ」
ソレを防がれた。
鉄扇を舞うように振るって伸ばされた神経と虫を切断。
同時、紫の斬撃波と毒の風がAダムの霊に降りかかる。
ファントムはAダムの霊と捕えられた男たちの間に立っている。
立ち位置的にファントムの妨害を喰らうのは当然の事だ。
以前、I水門の霊との戦闘での反省点。
浮遊霊を捕食する事で回復を許してしまった。
同じ轍は二度も踏まない。
無論、悪霊から男たちを守る為に立ちはだかっているというのもあるが。
「~~~~~!」
「無駄な足掻きを」
『Destroy! Omega drive!』
諦めずに何か仕掛けようとするAダムの霊。
溜息を付きながらファントムは必殺技の準備にかかる。
「はあッ!」
Aダムの霊目掛けて投擲される鉄扇。
身体を数周回転させて勢いを乗せて威力を倍増。
空中で回りながら加速していくソレは、毒の旋風を引き起こし、砂塵を巻き上げながらAダムの霊に迫る。
「ッ!!?」
飛来する二つの鉄扇。
小規模の嵐を纏ってAダムの霊に命中。
ソレは風と毒の檻に変わり、風で切り刻み毒で侵していった。
「~~~~~~~~ッ!!? た、助けて………!!!」
悲鳴にならない声をあげるAダムの霊。
彼女は自分のコレクションたちに救いを求める目を向ける。
結果、ソレが彼らの逆鱗に触れた。
「消えろ化け物!そのまま死ね!」
「死ね死ね死ね!苦しんで死ね!」
「きもいんだよ!さっさと死ね!」
しかし送られるのは罵声。
これまでの鬱憤と屈辱、そして憎悪を込めた声。
ソレに傷ついたのか、Aダムの霊は毒風の檻の中で絶望の表情をうかべた。
「あんなにかわいがってやったのにぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ヒステリックに叫ぶAダムの霊。
心の底からそう思っているあたり、本当に救えない。
そんな愚かな女目掛け、ファントムが背後から鉄扇を振り落とす。
「お前を愛してる男なんてここにいない。誰もお前を憎み軽蔑し、嫌ってるんだよ」
「だから匿ってやる。お前より綺麗で可愛い美女美少女の、女の園に」
「俺ら野郎は野郎同士で楽しくやらせてもらうよ」
「い、嫌だ!女は嫌!!アタシも野郎とがいい!!!」
最期まで無駄な抵抗を続けながら、アイコンに封印された。
Aダムの霊を倒した後、俺達とカップルはソレゾレの目的地に向かった。
カップルたちはファントムの事を秘密にしてくれると約束してくれた。
そもそも証拠が無いから誰も信じてくれないと笑っていた。
まあそうだな、ファントムは写真とかに映らないし。
これまでファントムを詠子や夜宵ちゃん以外に見られた事は何度もあったが、大抵は目の錯覚と疑うか、怖がって関わりを断って忘れようとするかだ。
そりゃそうだ。いくら見た目がヒロイックとはいえ、悪霊と殺し合いをするような奴と関わり合いになろうとは思わない。
いつ戦いに巻き込まれたり、悪霊の襲撃の流れ弾か当たるか分かったものじゃない。そりゃ避けるに決まってる。
詠子はマジの例外。当時は正直狂気を感じた。今でも感じる瞬間はあるけど。
捕らえられた男達も解放した。
ガンガンセイバーで霊の糸を切り、絞殺魔魂の糸で穴に落とされた人たちを引張上げて。夜宵ちゃんも手伝ってくれた。
救助後は霊道を作って全員成仏を手伝う。成仏自体は本人の意思によるものだが全員成仏してくれた。
旧旧Fトンネルみたいに犠牲者が悪霊化しなくて本当に良かった。
けど、もっと早く来てあいつをぶっ倒せたら…。
ということでファントム目撃事件は解決。
卒業生開放装置を置いて次の心霊スポットに向かった。
「早速面倒事だな」
そして現在、俺達は隠し通路で即身仏を発見してしまった。
刀剣類や銃火器だけじゃなく、鎖鎌や鉄扇も扱えるなんて…。
自分で書いておいてなんだけど、コイツ一体何なら使えないんだ?