仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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魄啜繚乱弟切花魁が封印されているあの狐のぬいぐるみ、もしかして女狐って意味なんでしょうか?
私にはそう見えてしまいました。
皆さんはどうです?



花魁

 悪霊(アイコン)はなかなか集まらない。

 

 今まで集めたアイコンは全部で10個。

 他にも悪霊を集めたが、以前手にした悪霊が勝手に食いやがった。

 どうやら所有している悪霊より強い奴じゃないとアイコンにしても無意味らしい。

 これがなかなかいない。雑魚は集まってくるが、本命の大悪霊はそうそう出会えない。

 

 幸い、俺にタイムリミットは存在しない。

 ゴーストの天空寺タケルみたいに死んだわけじゃないから、アイコンを必要としていない。

 だが俺には分かる。この力は悪霊を打ち倒せる代償を要求していると。

 返済期限はいつかは分からない。けど代償は確かに存在している。

 ソレを払うために俺は今日も戦う。

 

 

 

 

 

「(成程、そう使うか)」

 

 先日手に入れた呪いのビデオの悪霊。

 夜宵ちゃんが欲しがったのであげると、彼女はソレをぬいぐるみに封印した。

 アイコンのスイッチを押して悪霊を解放。俺たち3人の爪入りぬいぐるみに入れる事でソイツを身代わり兼蟲毒の生贄にした。

 まさかクズ眼魂をあんな風に使うとは思わなかった。

 

 これは便利だ。

 今までは取り込んでスペック強化ぐらいにしか使わなかったけどこれからはそう使おう。

 ファントムや他の眼魂の強化も頭打ちになってきたところだし。

 というわけで俺も身代わり人形を作ってもらった。

 怪我をしないというのは本当にありがたい。

 治す手段はあるけど、痛いのは嫌だし。

 

 で、今回は心霊スポット巡りとはまた別。

 卒業生という霊を封じている廃墟へと向かったのだが……。

 

「夜宵ちゃん、もしかしてっこって……」

 

 俺達は目的地に着いたが、その場所に少し狼狽えてしまった。

 

「そう。ここは日光東照宮から江戸城に流れる霊的エネルギーが滞留するポイントに建っている廃ラブホテル」

「………もっとマシな場所なかった?」

「無い。霊的エネルギーがあって周りに被害が出なさそうなんて場所、ここぐらいしかなかった」

 

 合理的な理由だな。

 教育には悪いけど、そもそも人間の悪意の塊である悪霊と関わる時点で今更だし。

 

「女の霊達の怨念が集まって出来た普通の方法は入れない部屋、秘密の部屋。私はそこに卒業生を隠している」

「また妙なところに。そんなとこに強い悪霊なんて置いたら、変な化学反応起こすよ?」

「そう。私一人ではどうやっても行けないようになった。秘密の部屋にたどり着いても、何故か入口に戻されてしまう」

 

 ほら見たとこか。

 

「恐らく、秘密の部屋は彼女のお気に入りしか通さない擬似遊郭になってると思う」

 

 遊郭?つまりソイツは花魁の悪霊という事か。

 

「ぶっちゃけ、私はその卒業生にめっちゃ嫌われてる。けど、螢多朗先生は男性だし霊媒体質だから積極的に招いてくると思う」

 

「ということで部屋の入り方送っとくから頭に叩き込んでおいて」

「うん、わかった」

 

 こうして、俺は秘密の部屋に向かったんだが……。

 

「クソ、ここ幽世かよ」

 

 何と、幽世に飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ夜宵ちゃん、螢くん一人で行かせても良かったの?」

「うん、螢多朗先生しか入れなさそうだし」

 

 所変わって詠子の車の中。詠子と夜宵は螢多朗が帰るまで待機していた。

 

「私は部屋に入れず、霊能力のない詠子は危険。だから消去法で螢多朗先生に取りに行かせるしかなかった。ソレに、螢多朗先生も卒業生を欲しがっていたし」

「もしかして、その卒業生って螢くんが欲しがっている悪霊?」

「うん、大悪霊。螢多朗先生が要求する眼魂になる悪霊は私の部屋に置いてある程度の子達じゃダメ。だからあの花魁を紹介したの」

 

 間を少し置いた後、夜宵は話を続ける。

 

「あと、螢多朗先生は実験したいこともあるって言っていた。蟲毒で生まれた悪霊も眼魂に出来るのか、封印している悪霊も眼魂に出来るのか。……これは私も気になる」

 

 今度は眼魂をポケットから取り出す。

 行く道中、螢多朗から貰ったものだ。

 

「それってもしかして……」

「うん、螢多朗先生から貰った。これはあの人曰くクズ眼魂。けど、それでも私の部屋のお化けぐらいはある」

 

「だからこれは前払いでもある。私の貴重な戦力をあの人に捧げる」

 

「……夜宵ちゃん」

 

 夜宵の覚悟の重さに、詠子は少し動揺する。

 その時であった。

 

 ズドォォォォォン!!!

 

「「!!?」」

 

 ホテル内の一部が爆発し、破壊音が響いてきたのは。

 

「あ~やっちゃったね螢くん」

「?どういうこと?」

 

 突然の出来事に対して慣れた反応を示す詠子。

 

「あのね、螢くんってね、ちょっと乱暴なところあるの。市街地とかだったら落ち着いてスマートに戦うんだけど、周囲の被害を心配しなくてもいいときはね」

 

 

「周囲を更地にするぐらいの勢いで暴れちゃう時があるのよ」

 

 

「………引くわ~」

 

 夜宵は若干早まったかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが秘密の部屋か」

 

 時を少し戻す。

 幽世の廃ラブホテルに招かれた螢多朗は目的地を目指していた。

 

「(呼んだら来てくれるかな、ファントム―ディー)」

 

 ファントムーディー。

 螢多朗の愛バイクであり、ファントムの専用マシン。

 最高時速300㎞を超え、特殊な手順を踏むことで幽世へと渡る機能を有している霊的高性能バイクである。

 また、ファントムの角部部から発せられる霊波で呼び出せる。

 彼はこのバイクを以って幽世に何度も訪れ戦っているため、こういった状況には慣れていた。

 

「ここか……」

 

 部屋から感じる圧。

 この感覚を彼はよく知っている。

 悪霊、しかも強大な個体の放つ霊圧(オーラ)だ。

 

「失礼しま~す」

 

 悪霊の圧力を涼しい顔で流す螢多朗。

 まるで、職員室に入るかのようにあっさりと部屋に入った。

 

「……助けて」

 

 部屋の奥の、曇りガラスの浴室。

 戸を開けて中に入ると、縛られている詠子がいた。

 

「助けて、螢くん。この縄を解いて・・・」

 

 媚びた声で助けを求める詠子。

 しかしそれは詠子ではない。長年悪霊と戦い続けて培った螢多朗の勘がそう言っている。

 

「借り物の姿じゃなくて、アンタのキレイな顔を見たいな」

「……あら、粋な台詞を吐くじゃない。坊やのくせに」

 

 詠子の姿が蜃気楼のように揺らめき、霧散する。

 代わりに、塩の入った袋に入れられ、その上から縄で縛られた狐のぬいぐるみが宙を浮いていた。

 しかしそれも数秒ほど。

 封印から漏れ出た呪力が炎となってぬいぐるみを包み、悪霊としての姿を顕現させる。

 

 圧倒的な邪気。

 霊感がない人間でも悪寒で全細胞が悲鳴を上げ、少しでも霊感がある者は卒倒しそうな程の圧。

 これが卒業生。並大抵の悪霊など歯牙にもかけない大悪霊。

 

「あんたみたいなお高そうな子、指名した覚えはないよ?持ち合わせがない」

「お代は結構よ。お前さんが封印を解いてくれるなら、たっぷりとご奉仕してあげるわ」

 

 しかし、そんな相手にも動じず、螢多朗は軽口をたたいた。

 

「(このガキ、見た目のわりに落ち着いているわね。それにこの感じ……いや、考えすぎね)」

 

「ねえ坊や、アタシを開放しておくれよ?そうすれば、お前の食わないでおいてやるから」

 

 螢多朗の態度に疑問を抱きながらも交渉という名の脅しをかける。

 所詮はガキ。ちょっと色仕掛けすればすぐに堕ちる。

 着物の胸元を少し着崩し、色仕掛けを仕掛けた。

 

「え~怖いな~。俺、臆病だから強そうな子にはちゃんと縄をかけておきたいんだよね」

 

 螢多朗も軽口をたたきながら、花魁に向かって目の紋章を描く。

 眼魂を生成するための印。原作の天空寺タケルが行っていたそれと全く同じ行為。

 しかし、ソレを行っても眼魂が出来る様子はなかった。

 

「(やっぱり他人のポケモンはゲットできないか)」

 

 効果が一切発揮されない。

 通常なら目の紋章が現れ、霊を吸い込むはずなのに。

 よって導き出される答え。封じられている霊には効果がないということである。

 

 

「あら、そういうのが好きなのかい? いいわよ、ちょっとだけ奮発してあげる」

 

「(やっぱり気が変ったわ。ただ縄を解くだけで抱ける程、アタシは安い女じゃないわよ!)」

 

 

 

「え!? いいの!? わーいやったー! じゃあお言葉に甘えてお願いします!」

 

「(安い色仕掛けだな。けど仕掛けている間は相手も油断している。その隙にやるか)」

 

 

 両者、表では本心を隠して相手に接近。

 そして螢多朗が縄を解いた瞬間、すぐさま行動に出る。

 

「掛ったなガキが!アタシを抱きたいなら全部置いてきな!」

 

 突如現れる炎の蝶。

 ソレが螢多朗に触れようと迫りくる。

 

『アーイ!』

 

「何!?」

 

 しかし、炎の蝶は突如現れたファントムパーカーによって振り払われた。

 炎のような紋章が描かれたパーカーが宙を舞う。

 ソレに目を向けていたせいで、花魁は螢多朗の変化に気づくのが遅れてしまった。

 

「変身」

 

『Wake up! Arsonist』

 

『Burning heartfire!』

 

 

「な…なんだいその姿!?」

 

 変身した螢多朗……ファントムを見た途端、花魁は動揺した。

 全身を覆う鎧のような服。羽織のようなものには己と同等か、それ以上の力を感じさせる。

 

「ファントム。お前の飼い主の名前だよ」

 

 

 

「身請けなんて人身売買みたいな真似はしない。ちゃんと縄繋いで可愛がってあげるよ、雌狐(めぎつね)ちゃん」

 

 

 

 ファントムは業火を放出して周囲の蝶を飲み込んだ。

 




この螢多朗の性格の割合は前世の影響3割ほどです。
生まれた時から記憶を持っていたのではなく、自我ができ始めて突然記憶を思い出したせいで前世に戻れきれませんでした。
前世の彼が強い自我を持っていたら話は違ってましたが、どちらかといえば希薄な方だったので、螢多朗の人格は乗っ取られてません。
違いといえば少し攻撃性が高くなり、闘争心が強いぐらいです。
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