仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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敵味方の判断が付くようになってから黒阿修羅君は螢多朗とそこそこ遊んでます
ファントムーディ―に一緒に乗って山の中を走ったり、一緒に変身ポーズを考えたりと、それなりに楽しんでます。


挑戦者の印

 

 

 夜空からファントムを見下ろす者がいた。

 夜宵に古本を渡し、螢多朗にアイコンの材料となる悪霊を渡した神主。

 彼は少し興奮した様子で光の階段の上で独り言を続ける。

 

「凄いね。政治的な理由で関われなかったけど、あの魔神を無傷で倒すなんて。相方がいたとはいえもっと苦戦すると思ってたんだけどね」

 

「これならあの鬼神を倒せるかもしれない。どれ、アイツに少し手伝わせて式神調伏の儀に仕掛けてやろう。そうすればまた一石二鳥だ」

 

「けど、今回は戦の疲れを癒すために少し手助けしてやろう」

 

 

 

 

 

 

「あ~疲れた。腹もメッチャ空いた!」

 

 俺は変身を解除してその場に仰向けになった。

 朝昼晩。一日に三回も変身して戦闘。しかも最後のは明らかに神クラスの敵だった。

 

 疲れた。

 滅茶苦茶疲れた。

 さっさと宿に行って暴食し、風呂入って爆睡したい。

 

「…つかれた」

 

 黒阿修羅も初陣で強敵にあたったせいか、お疲れの様子だ。

 

「お疲れ黒阿修羅くん。また次も頼むわね」

「こんど…またバイクにのせて」

 

 そう言ってライオンのぬいぐるみに戻って寝てしまった。

 

「じゃ、宿に行くか」

「待たれよ」

 

 詠子の車に乗ろうとすると、僧侶らしき人達に止められた。

 

「シシムラ様の封印について聞きたいのだが…よろしいかな?」

「「「・・・」」」

 

 有無を言わさない表情に俺らは渋々付いて行くことになった。

 まあ…うん。そもそも俺らって不法侵入した上に死体損壊の罪の可能性あるから強く言えなかった。

 けどソッチも即身仏って死体遺棄の上に自殺幇助の可能性もあるからな? 犯罪者になるのは同じだぞ?

 

 

 

 

 

「よろしかったのですか貞観和尚。彼らを見逃して」

 

 夜中の日照寺。

 細身で端正な顔立ちの若い僧侶が筋骨隆々で屈強な大男に話しかけていた。

 彼は西浄。日照寺から即身仏が破壊されたという報告を受けて東照寺から即刻再封印に駆け付けた僧侶の一人であり、その中では若く経験も浅い。そのせいでシシムラ様の霊障を受けて右腕を骨折してしまった。

 応急処置で腕を固定しているが、すぐに医者に診せた方がいいであろう。

 

「仕方あるまい。見たであろう、あの鬼神と神霊の強さを」

 

 大男が答える。

 彼は貞観。再封印に駆け付けた僧侶の一人であり、この中では経験が最も多く最大戦力である。

 彼がシシムラ様との対峙を担当していたが、その必要はなくなった。

 

「しかし信じられません。あのような何処にでもいそうな青年があれほどまで強力な鬼神に変化するとは」

 

 ファントム。

 黒阿修羅の協力があったとはいえ、シシムラ様を完封して撃破。

 本人も大した消耗を見せず、ただ一言「腹めっちゃ減ったー!」と言いながら元の姿へと戻った。

 あれほど強大な祟り神を倒しておいて腹が空いただけ? 大したダメージも受けず目立った消耗もしていない。

 

「彼奴は強い。そして奴に匹敵する神霊を操る少女も危険だ。迂闊に手を出せばこちらがやられる」

「で、ですが! だからこそあの場で何としてでも止めるべきだったのでは!?」

「無理を言うな西浄。ソレよりも賢行和尚…いや、元・和尚の処遇についてだ」

 

 二人の間を逞しい肉体をした強面の中年が割って入る。

 彼は禅仁。彼も再封印に駆け付けた僧侶の一人で日照時について調べていた。

 

 賢行。この寺、日照寺の和尚。

 本来なら十年前にシシムラ様封印のため即身仏となり死んでいる筈なのだが、末期癌を患った妻を即身仏にして身代わりにし、密かに生き永らえた。

 結果、不十分な封印になってしまい、夜宵が破らなくてもいずれ解けていた雑なものになっていた。

 また、照寺から支払われる多額の保証金を寺ぐるみで横領し、封印を解いた夜宵たちを貞観らが来るまでの時間稼ぎの囮に、外部から侵入出来ない結界では無く出さない結界が施された離れのお堂に閉じ込めようともしていた。

 このことが明らかになった以上、賢行を筆頭に日照寺の者たちには相応の処遇を受けることになる。

 

「そうだな。だがそのことについては決断が出たも同然だ」

「はっ、ではそのように」

 

 ソレだけ言って禅仁は行った。

 

「………賢行は、どうなるのですか?」

「お前の知る事ではない。では件の鬼神に話を戻すが…」

「あの者、やはり太歳と接触の跡があった」

 

 今度は左目に眼帯をした長身の老人が入って来た。

 彼は覚張。彼も再封印に駆け付けた僧侶の一人である。

 

「やはりか。あの印、分かりにくいが挑戦者の証だったか」

「挑戦者?貞観和尚、一体何のことを仰ってるのですか?」

「………以前、太歳は存在そのものが禁忌であることは話したな?」

「? ええ、まあ…」

 

 西浄は歯切れが悪そうに答えた。

 

「あの神に挑んだ猛者は少ないが歴史上確かに存在した。囚われの花嫁を救おうとした英雄、自身こそ至上の強者と驕る愚者。その中でもあの神が挑戦に値すると印を付けた者が…」

「挑戦者ということですか」

「うむ」

 

 彼らは、夜宵には危険な悪霊を持ち歩いていることや封印を破壊した事を咎める等の発言をしたが、螢多朗には終始ノータッチ。目も合わさなかった。

 理由は様々ある。そもそも封印が不完全だったり、ただ即身仏にされた妻を助けようとしたり、賢行たちを守り切った等。その中でも最も大きい理由があった。

 太歳星君。知る者全てが干渉どころか関わることすらタブーとする存在。

 其の者に挑む愚者に関わるなど、何時巻き込まれるか分かったものでは無い。

 

 

「あの青年に手を出すべきではない。下手に関わって何かあると、獲物を横取りされたと太歳が怒り狂うやもしれぬ」

 

「あの者たちは善意で即身仏となった細君を救おうとし、犠牲者を一人も出す事なく我らの課題に片を付けたのだ。感謝はすれど咎めることなど何もない」

 

「あれほどの強者だ。太歳が寛大な待遇をするよう祈るしか我らにやれることはない」

 

 夜宵のことは気に入った。

 彼女の覚悟を知り、その手助けの為に人払いの札を渡したり、弟子としてスカウトした。弥子も狙っていると知って手を引いたが。

 だが、螢多朗だけには関わらない。関わってはいけない。出来るなら、夜宵にもそうさせたい。

 

「並々ならぬ事情があるのだろう。だがあの凶神相手では…」

 

 そもそも、啖呵を切ったのは夜宵だと彼は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なかなかラッキーなことがあった。

 予約しておいたホテルに不備があり、急遽同系列店の高級ホテルに泊まることになった。

 部屋は豪華で一室に温泉付き。しかも朝食夕食共にバイキング形式の食べ放題だ。

 俺は思う存分食べて、露天風呂に入って、ふかふかベッドで寝て、翌日は全回復。

 かなり良い思いをさせてもらった。

 

「先生朝から食べ過ぎ。刃牙みたいに食べるじゃん」

「え?いいじゃん別に」

「目立つから少し離れて欲しい」

「え~・・・」

 

 そうは言いながらも夜宵ちゃんは料理を持って俺に近付き、ボスムラ―――マルバスからの戦利品を俺に見せた。

 

 マルバス。

 俺たちがボスムラ様と仮定したものの正体。

 降臨する際に現れた扉の紋章を手掛かりに詠子がネットで特定してくれた。

 シシムラ様はマルバスを現世に降臨させるための手下に過ぎない

 本来マルバスは獅子の姿をした魔神だが、召喚に必要なエネルギーが足りず不完全な状態で現世に降臨。

 あの姿は汎用的な魔の姿、バフォメットフォルムというらしい。

 しかしそれでも相性最悪のアイコンに変身した俺と、黒阿修羅とでやっと倒せた程の強さ。

 もし仮にフルパワーならどうなってたことやら。

 こんなのを72柱も使役出来たソロモンのポケモンマスターっぷりには驚かされる。

 

「で、その指輪を通じてマルバスと話したんだよな?大丈夫か?」

「うん、どうやら契約には律儀でその範囲内なら大丈夫」

 

 マルバスを倒して得た戦利品の指輪。

 残りの力があるらしく、夜宵ちゃんの夢に現れて経歴を映像で見せた後、使い方を説明。唆そうとしたところを前回現れた怪しい神主さんが助けてくれたらしい。

 その神主さん何者だ?というか倒したの俺なんだから俺に使う権利あるだろ。俺のとこに来いよ。

 

「この魔神は先生を恐れている。ソロモンの再臨だって」

「………無茶言うな」

 

 神はアイコンに出来ない。

 神に近い霊や神格を持ちかけの霊ならまだいけるが、完全な神だとアイコン化が反応しなくなる。だから俺はソロモンにはなれないよ。

 というか、アイコンにしたからって操れるわけじゃないし。

 

「(いや、待てよ。ネクロムなら出来るのか?)」

 

 仮面ライダーネクロム。

 俺のベルトの元ネタである仮面ライダーゴーストに登場する第三ライダー。

 名前の由来は死霊を使役する呪術師であるネクロマンサー。

 劇中でも死霊にあたる眼魔を使役するシーンがあった。

 そして、ベルトではなくブレスレット型デバイスで変身する。

 ブレスレット。そう、腕輪だ。

 

 ソロモンが悪魔を使役する際に使ったと言われるソロモンリング。

 指輪という説が有力だが、腕輪という説もある。

 

 使役、そして腕輪。もしかすると…。

 

「(流石に考えすぎか)」

 

 俺はあり得なくも無いが突飛している。

 そんな妄想を止めて飯に戻った。

 





神様が螢多朗に付けた印は敢えて分かりにくくしました。
あまりアピールすると悪霊が逃げてしまい、ファントムのアイコン集めに支障をきたすのでそうしました。
あと、自分の物だとアピールする為ではなく、逃がさない為の印なので自分以外に分かる必要が無いのです。
しかし、もし仮に螢多朗が誰かに殺されると烈火のごとく怒ります。暗殺や政治的な手段などでしたら関係者とその一族を祟り殺し、仮に事故であってもそうします。
正面から倒したなら怒りはするけどを力を認めてソイツを新しい挑戦者にします。
そのことを知ってるから和尚たちは螢くんに終始関わらないようにしました。
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