首塚大明神神社。
そこで二人の鬼が睨み合ってた。
ファントムブラッドアイ魂と酒呑童子。
酒呑童子は好戦的な笑みを浮かべてファントムを睨みつける。
「オメエ、東の
「知るかよ。お前は大昔に討伐されたんだろ。ならここはもうお前のじゃない」
「クカカカッ!生意気な奴だ。…躾け甲斐があるぜッ!」
飛び掛かる酒呑童子。
霊力で瞬時に武器を生成。
右手には金棒、左手には大太刀をソレゾレ逆手に装備。
鬼らしく怪力によってファントム目掛けて振りかざす。
「―――ッ!」
前に転がって避けるファントム。
酒呑童子の右脇を通り過ぎ、頭上を金棒が通過。
立ち上がった際に背後を取り、振り向き様の威力を利用して右フックを繰り出した。
「殴り合いか。いいぜ受けて立ってやる!」
武器を捨て、肘で拳を流す酒呑童子。
この距離では武器は邪魔になる。よって徒手空拳が妥当。
二人は原始的な殴り合いを開始する…。
「ッ!?」
咄嗟に横へ転がるファントム。
その際に酒呑童子の左フックを顔面に喰らってしまったが、大したダメージではない。
あのまま殴り合いに付き合っていれば受けていたものに比べたら。
「ぐおッ!? クソが!」
突然、酒呑童子が吹っ飛んだ。
まるで見えない何かにぶつかったかのように。
「この野郎、何が殴り合いに付き合うだ。分霊なんざ使いやがって」
「クソ、バレちまったか」
月明りで薄っすらと反射する透明な大蛇。
八岐大蛇を彷彿させる八つの蛇のうちの一匹が、ファントムが立っていた場目掛けて突っ込んだのだ。
ソレを霊感で察知したファントムは咄嗟に横へ回避。
一発貰ってしまったが、大蛇の毒牙から逃れる事に成功した。
更に、標的を見失った大蛇は酒吞童子に誤射。
毒牙は咄嗟に口を閉ざしたから喰らわなかったが、自身の分霊によってダメージを受けたのは確かだ。
不可視の大蛇。
八匹の透明な大蛇の分霊を使役する霊現象。
姿が透明の為、霊感があっても知覚することは非常に困難。
大蛇らしく締め付ける力は強く、毒蛇らしくちゃんと毒もある。
厄介な分霊。これを攻略しない限り、酒呑童子に刃は届かない。
「ソッチが分霊使うならこっちも似たようなモンを使う」
『
ファントムはアイコンを起動させる。
しかしパーカーチェンジは行わず、自身のブレストクレストにアイコンを近づけ吸収した。
アイコンの用途はパーカーチェンジのみではない。
封印の一部を解除する事でその能力を部分的に使う事が出来る。
使える能力はパーカーチェンジより劣る上に時間制限があるが、パーカーチェンジにはない強みがある。
『Wake up!
『Dissecting prey!』
パーカーチェンジと重ねて使えるという点。
一つの能力では対応できない相手や相性の良い能力を掛け合わせる時などに使う。
尚、仮面ライダーブレイドのようにコンボ技は出来ない。どちらかといえばウィザードリングに近い。
今回使ったパーカーチェンジは拷問師魂。
以前封印した旧FFトンネルの霊で、原作では夜宵の手持ちになった悪霊である。
専用武器は穂先が戦斧とレイピアとウォーピッグを組み合わせたかのような槍型武器ディセクトハルバード。
スペック自体は戦闘特化の切裂魔や撲殺魔に劣るが、螢多朗自身のバトルセンスと武器の扱い、そして能力が組み合わさる事で戦闘力は恐ろしい程向上している。
「ッハ、服を変えただけだろ?何の意味があるんだ?」
「ソレを今から教えてやる。かかってきな」
酒呑童子はパーカーチェンジを黙って見ていた。
余裕というより物珍しいもの見たさで。
千年間も封印された彼は娯楽にも飢えていた。
「じゃあ、行くぜ」
「来い。鬼退治だ」
武器を構えて二人はぶつかり合う。
睨み合いは一瞬。
次の瞬間には互いの間合いに入り、攻防を開始した。
切り払い、受け流し、ぶちかまし、立ち位置を変え、足場を変えて。
ほんの数分間の間、二人は何度も武器をぶつけ合う。
だが、ソレも時期終わる。
不可視の蛇が背後からファントムに襲い掛かる。
回避は困難。酒呑童子に足止めされている。
立ち位置を変えて酒呑童子を盾にしようとするが、その手も読まれて潰されてた。
脱出不可能。そのまま蛇はファントムに牙を剥いて…。
「ぐおあぁぁぁ!!?」
蛇は、酒呑童子に牙を剥いた。
本来ならファントムに直撃コース。
しかし牙が当たる寸前、突如空間に穴が開いた。
その先は酒呑童子の背後。所謂ワームホールというものだ。
拷問師の能力。
空間の接続と分断。
これによって野良時代は決して抜け出せない結界を形成していた。
ファントムとの戦いの際は終始ファントムに翻弄されてタイミングを掴めなかったが、今はそのファントムが使っている。
彼の類稀なバトルセンスに掛かれば、至近距離でもタイミングを見極めて使用できる。
「らあ!」
ファントムの槍撃。
自身の攻撃を喰らって混乱している間に仕掛ける。
しかし彼が槍を突き出したのは何もない虚空。
本来なら意味のない行動だが…。
「うごぉ!!?」
ファントムの槍撃が酒呑童子の脇腹を貫いた。
酒呑童子の脇腹あたりにワームを作る事で、全力の刺突を繰り出したのだ。
本来なら出来ない位置で至近距離から完璧な槍の刺突。
あり得ない攻撃に混乱中の酒吞童子は対処出来ず、直に食らって益々混乱した。
「こ…このぉ!」
無理やり反撃する酒呑童子。
膨大な霊力を辺りにまき散らし、怪力を振るう。
「ッグ!?」
我武者羅な力ずくの反撃。
しかし流石は日本三大化生の一人。
たとえ無茶苦茶な暴れ方でもそのパワーは凄まじい。
ファントムであろうと耐えられるものでは無かった。
吹っ飛んだファントム。
隙らだらけの彼目掛け不可視の蛇をけしかける。
四方八方から迫るソレらはワームホーでは防げない。
どれか一匹が直撃するかと思いきや…。
「ッ!?んな事も出来るのか!?」
ワームホールで脱出。
空中で小さく蹲り、ワームホールを通って脱出。
結果、標的を失った蛇たちは互いを噛み合い、互いの毒を受け合う。
「(なるほど、ああなるのか)」
武器をワームホールで回収しながら、毒を喰らった蛇たちの様子を観察する。
互いに咬みあった大蛇は咬まれた部分が5〜10倍に膨張して内から破裂。傷口から膿を垂れ流していた。
しかも、植物の根のようなものが張り巡らされ、養分を吸収して急速に成長していた。
蛇毒の呪い。
大蛇が持つ最も強力な霊現象。
毒牙から出血毒や神経毒などの自然毒や、霊的な猛毒を流し込む。
流された毒は体内の霊的エネルギーと反応して膿に変化し、膨張して内から破裂させる効果があり、他の毒と合わせて高い殺傷力を持つ。
蓮の呪い。
植え付けた対象の霊的エネルギーを吸って発芽・成長する蓮の花の種子の呪い。
大蛇の鱗に種子が挟まれており、対象に噛みつくと同時に埋め込む。
蔦と根で対象を拘束し、通常なら蓮の花が開花した段階でミイラとなる。
毒と拘束と吸収を兼ね備えた数段重ねの呪い。
厄介かつ厭らしい攻撃手段である。
だがソレを無効化した。
自身の力のせいか効きはそれほどではないが、足止めには成功した。
今のうちに仕掛ける。
「らあッ!」
「クソ、調子乗んじゃねえ!田舎の鬼ごときが!」
ファントムハルバードを振るって猛攻を仕掛ける。
迎え撃つ酒呑童子。
瞬時に生成した武器を両手に装備し、叩き落としていく。
流石は日本三大化生の一角を担うビッグネーム。
スペックも得物も酒呑童子が優位であった。
だが、技術と戦術性はファントムが上だ。
「ッグ!?」
払い落とした筈の槍が酒呑童子に命中。
ワームホールから現れたウォーピッグが酒呑童子の側頭部を殴打した。
「ざけんな!」
酒呑童子が金棒を振るう。
背後に倒れて避けるファントム。
ハルバードを逆手に持ち替え、棒高跳びのようにして更に距離を稼ぐ。
一瞬で敵の攻撃範囲から脱出すると同時、槍を振るった。
「ッ!?」
周囲を警戒する酒呑童子。
ワームホールによる攻撃の警戒。
しかしソレはブラフ。王手を打つための時間稼ぎだった。
『Wake up! Omega drive!』
「らあッ!」
発動される必殺技。
ハルバードを振るってトンネルの入り口を象ったブラックホールを発射。
迫り来る大蛇たちを呑み込み、内部に封印した。
既に大蛇たちは復活していた。
本霊と戦っている内に忍び寄らせ、一気に襲い掛かる。
そういう算段だったが、ファントムはソレを看破。
対処する為の手を立案し、実行したのだった。
「これでお前の分霊はいなくなったな」
「クカカかか…。舐めんじゃねえ!」
瞬間、凄まじい霊気の流れが辺り一帯を襲う。
強大な圧の前にファントムも数歩ほど押された。
遅れて、大蛇を閉じ込めたブラックホールが内部から破壊され、大蛇たちは霊気となりながら酒吞童子へと吸収される。
「高が分霊を少し閉じ込めた程度で調子乗んじゃねえぞ田舎モン!こっからが本番なんだよ!」
酒吞童子の姿が変化した。
手足が、頭が、胴体が、蛇の頭へと変化しながら巨大化。
その姿は昔話でよく見るヤマタノオロチのようだった。
「第二形態か。ならこっちも形態を変えてやる」
『アーイ!』
ファントムは巨大な敵の第二形態に対抗してパーカーチェンジした。
空間系の能力ってメッチャ強いですね。
呪術廻戦の東堂みたいな戦い方とか。
アレで団体戦出来たら無法になりそう。