仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

34 / 44
八つ首の大蛇

 

「いいの逃げちゃって」

「うん、あのままいても邪魔になっちゃうから」

 

 詠子は夜宵を連れて大江山から下りた。

 気配もなく突如現れた強敵。

 ファントムに強敵が集中しているうちに、詠子は夜宵を連れてこっそり離脱。

 気づかれる前にすぐさま退散した。

 

「大江山に現れた鬼みたいな霊。…そんなの、酒呑童子しかない」

「やっぱりそうなるか」

 

 恐怖ジャンキーである彼女が逃げた理由。

 ソレは怖いからではなく、螢多朗の為だ。

 目の前の敵に集中出来るように。

 

「私たちがいたら足手まといになる。ここは螢くんを信じるしかない」

 

 詠子が言い切った途端、山から突如巨大な影が現れた。

 八つの首を持つ巨大な蛇が、空目掛けて首を伸ばしている。

 そんな怪獣映画のような光景に、詠子と夜宵は口をあんぐりとあけて呆然とした。

 

「………本当に大丈夫?」

「き、きっと大丈夫よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「デカいな」

 

 姿を変え酒呑童子を見上げながら、ファントムは呟いた。

 全長十数mを超える巨体。

 山の一角を占領するその姿にファントムは仮面の中で冷や汗をかいた。

 

 拷問師魂のワームホールは質量制限がある。

 ワームホール以上に大きなものは転移出来ず、作れるのも一組だけ。

 つまり、巨大な相手には使えないのだ。せいぜい自身をテレポートするだけだが、その際もワームホールにサイズを合わせる為に身体を丸める等のワンテンポ入れる必要がある。

 よって今のアイコンでは不利。アイコンを変える必要がある。

 そして、相手がデカいからこそやり様もある。

 

「第二形態か。ならこっちも形態を変えてやる」

 

強盗魔(Racer)

 

『Driving hell』

 

 ファントムも形態を変更した。

 強盗魔魂。

 通常形態では空を飛ぶだけだっが、ブラッディアイ魂によって新たな能力と武器を獲得。

 銃剣型の専用武器、ドライビングガンを右手に装備して空へ飛び立つ。

 初速でマッハを超えるスピードで。

 

「ッ!?」

 

 あまりのスピードに酒呑童子は早速獲物を見逃してしまった。

 すぐさま見つけようと辺りを見渡す。

 しかしその姿を見つけるどころか、ダメージを負う羽目になった。

 

 八つある首の一本に傷が入った。

 まるで刀で一直線に斬られたかのような傷。

 傷自体は浅く大したダメージでは無いが、動揺するには十分だった。

 

「クソッ!何時の間に!」

 

 彼は周囲を更に警戒し、八つの首で全方向に目をやった。

 先手を取られたが、こっちは八つも同時に見渡せる。

 次来たら最期。一家受けても、すぐに囲んでやる。

 まさか、この包囲網を突破するなんて芸当は不可能のはず………。

 

「ッ!?またかよ!?」

 

 再び攻撃を喰らった。

 今度は別の首が二本やられた。

 来る瞬間は見えたが、反応出来なかった。

 すれ違いざまマシンガンのように銃弾を浴びせられ、全体的に銃創によって負傷。

 そして、捕捉される前に離脱。次の瞬間にはその場どころか影すらなかった。

 しかしこちらもダメージ自体は軽傷。鱗を削られ多少の流血はあるが大したものではない。

 

「クソが!ちょこまかと!」

 

 また食らった。

 今度は一気に三本。

 銃弾を喰らい、剣戟を喰らって、無数の傷を刻み付けられた。

 これも大したダメージは無いが、確かにダメージは入ってる。

 痛みを感じて振り向いた頃には、既に傷を付けられ逃げられている。

 自身の攻撃が当たるどころか存在すら認識出来ず、一方的にやられてるという現状は酒呑童子の思考を鈍らせ動揺させるのに十分だった。

 

「~~~~~~ちょこまかちょこまかと!蚊蜻蛉かテメエは!?」

 

 無茶苦茶に暴れ出す酒呑童子。

 八つの首を我武者羅に暴れさせ。広範囲攻撃を開始。

 しかしその全てが当たらない。

 どれだけ大蛇たちが暴れようが、目を見張らせようが、毒をまき散らそうが。

 全て避けられ、逃げられ、確実にダメージを蓄積させていった。

 

 超加速。

 強盗魔魂がブラッドアイ魂によって新たに得た能力。

 初速で眼に止まらぬ速度で飛行し、相乗的に加速し続ける。

 しかし加速には十分な距離が必要の上、思考速度自体はそのまま。

 だから、今回のような巨大な敵には打って付けだった。

 

「ッ!?そこか!?」

 

 斬撃を刻まれて振り返る。 

 既にファントムの姿はない。

 次の瞬間には別の首に連射している。

 

 再びファントムが仕掛けた。

 今度は胴体部分。

 超加速で威力の付いた突進でドリルのように貫通した。

 八つの首囲もうとするが、既に遅い。

 包囲網を完成させる前にその場を抜け出して再び傷を刻んでいく。

 

 一気に2つの首がやられた。

 通り過ぎ様に目を潰され、口の中に銃弾を喰らった。

 気づいた頃には既にいない。再び別の首に攻撃を仕掛けている。

 

「(な、なんだコイツは!?)」

 

 速過ぎる。

 あまりに速すぎて捕らえられない。

 これだけサイズ差があるというのに防戦すら成立していない。

 

 徐々に消耗していく。

 傷を刻まれ、目を潰され、脆い部分をやられて。

 時間を追うごとに決して無視できないものへと変わっていった。

 

 加速していく。

 スピードを上げて、威力を上げて。

 酒呑童子がダメージを受ける度、ファントムは更に速くなっていった。

 

『Destroy! Omega drive!』

 

 発動される必殺技。

 超高速で突進しながら、超高速スピン。

 赤黒いエネルギーを纏ったソレは、八つの大蛇を掻い潜ってその中心部へと叩き込まれた。

 

「ぐおわあぁぁぁぁl!!?」

 

 分散される八つの大蛇。

 ソレは空中で光の粒となって散って逝った。

 

 

 

 

「死んだふりしてんじゃねえ。まだいるだろ?」

 

 先程の一撃で加速した速度を使い切ったファントム。

 彼は大江山の山頂に着地し、別のアイコンを起動させながら、虚空に話しかけた。

 

「ケヒッ。バレたか」

 

 消えた筈の光が集まっていく。

 やがてソレは人型となり、酒呑童子に戻った。

 

 先程の一撃は酒呑童子を倒せたわけではない。

 ただ体に大穴を開けただけ。

 あまりにも大きすぎてダメージが行き届かなかったのだ。

 

「あ~あ、デカくなったのは失敗だな。いい的になってたってわけか」

「そうだ。その的のまま消えて欲しかったんだが」

「そう言うな兄弟!俺はなぁ、嬉しいんだよ。この俺と喧嘩出来る奴がいることがなぁ」

 

 好戦的な笑みを浮かべながら酒呑童子は話を続ける。

 

「武士共は毒殺なんてしょっぺえやり方! 陰陽師の根暗はコソコソしやがる! ンなモンは雑魚の発想だ! 男たるもの堂々と名乗りをあげてやり合う!そう思わねえか兄弟!?」

「正直な話、弱者の考えを否定する気は沸かないし、お前の考えもどうかと思う。だが…」

 

 

『Wake up! 拳闘士(Striker)!』

 

『Knock down knuckle!』

 

 

「殴り合いが好きなら乗ってやる。かかって来な」

「ケヒッ! やっぱ最高だぜお前!」

 

 二人は互いに拳が届く範囲まで歩いて移動し…。

 

「「らあッ!!」」

 

 同時に殴り掛かった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。