マイナー武器な上に使い方も複雑ですし。
けどカッコいいから使わせたい!
酒呑童子。
日本三大化生の一角を担う鬼神。
その正体は、八岐大蛇や九頭竜といった竜神の血を継ぐ子孫。
血統から神懸かりな霊力と神格を生まれ持って有した人間であった。
かつてはその力で京の都を荒らし、当時の武士や陰陽師たちと激突。
その力は死後に悪霊となった今でも健在。封印起きの為万全とは言えないが、ソレでも強大な霊力は今の弱体化した霊能力者など歯牙にもかけない。
彼を再び封印するには、少なくとも当時最強の陰陽師であった安倍晴明を用意するのが最低限といってよいだろう。
分霊を回収した今、彼はその力を存分に振える。
そんな相手に、一人の男が挑もうとしていた。
ファントムは拳闘士魂へと切り替えた。
両手には旋棍型専用武器、マーシャルトンファーを握っている。
盗撮魔魂の売りはその機動力と加速力。
足を止めた戦いや格闘戦には不向き。
よって拳闘士魂を選択した。
「「らあッ!!」」
二人は同時に拳を突き出した。
先に拳が当たったのはファントム。
トンファーを持つ彼は半歩分リーチが長い。
たったそれだけの距離だが、接近戦ではほんの少しの距離が勝敗を別つ。
「ッグ!」
トンファーが酒呑童子の顎を捉える。
一瞬揺らいだ隙を突いて畳みかけようとするが、すぐさま防がれた。
そう簡単には行かないか。ファントムはそう考えながらも手を攻防を続ける。
「フンッ!」
酒呑童子が刀を振りかざす。
スレッジハンマーと見せかけ、瞬時に作り出した打ち刀。
ファントムは咄嗟にトンファーを斜めにして刀を滑らせて受け流す。
同時、反対の手のトンファーを叩きつけた。
「温いぜェ!」
ダメージを受けたにもかかわらず、酒呑童子が刀を振るう。
もう片手に太刀を装備し逆袈裟で斬りかかる。
ファントムは下段受けで流し、反対の手で殴り掛かる。
しかし、打刀が飛んできたのでソレを上段受けで流した。
両雄共に武器を両手に握った。
そこから始まる、手数にものを言わせた弾幕戦。
切り払い、打ち払い、受け止め、受け流し、絡め捕り、ぶちかまし、互いの得物をぶつけ合う。
「「おおおおおお!!」」
咆哮を上げながら繰り拡げられる剣戟と旋棍の嵐。
マーシャルトンファーが酒呑童子を打つ度、酒吞童子の刀がファントムの装甲を切り裂き、血と火花を散らす。
両者の戦いは全くの互角であった。どちらかの攻撃が命中すれば、すぐ様にお返しとばかりに反撃が命中。
ソレは戦闘というより、一つの演舞。そんな風に見えるかもしれない程に両者の実力は拮抗していた。
強い。
酒呑童子は勿論だが、そんな彼とやり合えるファントムも強かった。
神秘と呪いの全盛期である平安時代でも最強の一角を担う酒呑童子。
そんな彼と打ち合えるファントムは、正しく鬼神の域に達していた。
拳闘士魂。
格闘戦に特化したアイコン。
切裂魔魂や銃殺魔魂のように戦闘力向上の他に再生阻害の呪いや魔弾の呪い等がない代わりに、ファントムの所有するアイコンの中で肉体面に関するスペック一位を誇る。
また、専用武器であるマーシャルトンファーには衝撃を操る効果があり、受けたり絡め捕る事で衝撃を分散、突く事で衝撃を集中させる等の効果がある。
呪いや霊的攻撃への耐性が低いのが難点だが、接近戦を仕掛ける相手には抜群。
まあ、いくら相性がいいとっても、こんな大悪霊と殴り合えるのはおかしいのだが。
「らあッ!」
長い方を腕に沿った形で持つ防御型の持ち方のトンファーで刀を受け、長い方を相手に向ける形で持つ攻撃型の持ち方の反対のトンファーで殴り掛かる。
しかしソレは逆手に持った刀を下から切り払う事で受け止められ、その勢いでファントムの身体が回る。
いや、回る事で勢いを流し、更に利用。
勢いを乗せた後ろ回し蹴りを繰り出す。
「「ッグ!」」
だがソレは相手も考えていた。
酒呑童子のヤクザキックとファントムの後ろ回し蹴りが互いを蹴り合う。
そのせいで両者共に中途半端な蹴りに終わり、どちらも蹴り飛ばされた。
「らあッ!」
再び攻防が始まる。
トンファーを棍棒の用に持ち替え、酒呑童子の刀を受け止め、持ち手の部分で引っかけて絡め捕りながら下げさせる。
続けて反対の手に持つトンファーの持ち手で殴り掛かるが、酒呑童子は首を下げて回避。
よって首に持ち手を絡める事で拘束し、そのまま引き倒そうとした。
「なめんな!」
力ずくで拘束を振り払う酒呑童子。
ファントムは吹っ飛ばされながらも空中でドロップキックを繰り出し、その勢いで離脱しつつ蹴り飛ばす。
着地したと同時、ドライバーに手をかけた。
同時、酒呑童子も刀を捨てて貴方な刀を生成する。
「ぶっ潰れろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
巨大な刀。
酒呑童子が全力を込めた一撃。
纏う毒々しくも禍々しくもあるオーラ。
酒呑童子の全身程はある巨大な刀身を、ファントム目掛けて叩きつけた。
『Destroy! Omega drive!』
赤黒く禍々しいエネルギーを纏うトンファー。
十字にトンファーを重ねる事で酒呑童子が作り出した巨大な刀を受け止める。
「おおおおおおおおお!!!」」
拮抗する両者。
雄叫びを上げて互いに力を込める。
ファントムは逸らそうと、酒呑童子は潰そうと。
赤黒いオーラと毒々しいオーラがぶつかり合い、互いに食らい合う。
ファントムが膝を付く。
ゆっくりと押されるように。
ソレをチャンスと見た酒呑童子は更に力を入れ…。
「うらあッ!!」
瞬間、入れた力が暴走。
受け流されて制御を奪われ、体勢を崩したのだ。
結果、トンファーが刃を破壊。反対のトンファーの一撃が酒呑童子の胴体を捉えた。
「―――ッカハ!」
綺麗に命中した。
腰の入った拳が、十分な加速と体重、そして力が乗った拳が。赤黒いオーラを纏って叩きつけられる。
全て一点集中し、トンファーに集結。その一撃は内部にまで浸透。
酒呑童子を大きく殴り飛ばした。
『Wake up! Omega drive!』
再び必殺技を発動。
赤黒いオーラが炎となって右脚に集中。
エネルギーが最高潮まで達するよう、ゆっくりと構える。
「クソッ!」
再び仕掛ける酒呑童子。
両手には自身の霊力で形成した巨大な刀。
ファントムのオメガドライブに遅れる形で霊力をチャージ。
霊力を圧縮し練り上げ、先ほどよりも強大かつ高密度の強力な業物を形成した。
「らあッ!」
「ッ!?」
牽制としてトンファーを投げつけるファントム。
ブーメランのように飛来するトンファーを払い落し、駆け出す酒呑童子。
咄嗟に作った小太刀でトンファーを迎撃。おかげで巨大刀の方は無事。
刀を順手に持ち替え、ファントム目掛けて一気に振り下ろす。
ファントムは片手しかトンファーを持ってない。
勝った。酒呑童子は処理を確信した…。
ズドン!
「ッ!?!?!?」
ファントムの回し蹴りが炸裂。
酒呑童子の側頭部に命中した蹴りは、彼の意識を奪っていく。
ここで何が起こったのか皆様にだけ説明しよう。
ファントムが投げたトンファー。あれは牽制では無くタイミングをズラす為。これによって酒呑童子は剣を振り下ろすタイミングがワンテンポ遅れた。
しかしそれでも先に必殺技を叩き込むほどでは無い。よって次の手を打つ。
いやコレが本番といってもいい。
片方に残ったトンファー。
棍棒のように持ち、持ち手部分で刀を受け、引っかけながら逸らす事で崩す。
同時、身体の回転を利用して回し蹴りを側頭部に叩き込む。
おかげでトンファーは破壊されたが、防御と同時に必殺技を決められた。
神業。
相手のタイミングを完全に見極め、力の流れを完全にコントロール。
それを実行出来る程の技術と経験、そして胆力。その全てが揃っている者だけが出来る芸当である。
「(な、何が…起こって………)」
状況が分からないまま意識が沈んでいく。
ただ、己の敗北だけは確かに感じ取った。
「お前の…勝ち、だ………」
ソレだけ言い残して酒呑童子はゆっくりと倒れた。
勝った。
俺は勝ったんだ。
あの三大化生と言われる酒呑童子に。
「やって…やったぜ!」
俺はその場に仰向けになって変身を解いた。
疲れた。
滅茶苦茶疲れた。
まだ朝だってのにすんごい疲れた。
これで本当に今晩あの神と戦えるのか?
「(ま、とりあえず今は軽く休憩するか)」
ダメージや疲労を負ったままはまずい。
俺は少し休むことにした。
やりたかったことの一つ、螢くんが自分で調伏して正式な式神を使役してほしい。