「あ、旦那に断りなくやっちまった。まあ、いいでしょ。旦那は器大きいし」
花魁は更に炎の蝶を増やして軍曹ごと太歳を燃やしていく。
『
『Burning fire!』
一瞬で放火魔魂にパーカーチェンジするファントム。
炎を身に纏って魄啜の呪いを防いだ。
「おや、釣れないねぇ主様。旦那は気前いいのに」
「はぁ…。分かったよ、ほら」
ファントムは炎を一部解いて、炎の蝶に触れた。
途端、エネルギーが花魁に供給されていく。
「ああ…。主様の力はいい。あたしも滾っていく」
ファントムの…いや、螢多朗とファントムのエネルギーを味わう。
悪霊や零落した神にはない独特なエネルギー。
これもまた螢多朗を主とした理由の一つである。
ファントムの特性によるエネルギー。
軍曹のように不死性や無限のスタミナこそないが、無尽蔵のエネルギーを誇る。
ファントムの胸部にある目玉の模様、ブレストクレスト。
変身者の強い意志をエネルギーに変える事で、半永久機関となっているのだ。
中でもファントムが得意とする感情は闘争心と義憤。
燃え盛る炎のように激しいソレは、吸収したものにも影響を与える。
戦いを楽しみ、悪を憎む心を誘発させるのだ。
加えて、螢多朗自身の生命力。
生前の安倍晴明をも上回るソレは、戦いを通して原作よりも強化されている。
螢多朗の生命力が薪となり、感情エネルギーがより燃え上がる。
花魁にとってこの滾りは、他では味わえない。
極上のスパイスだ。
「じゃあいくよ。主様も旦那もくたばるんじゃないよ」
繰り出される炎の蝶の大群。
軍曹は避けることなく受けながら巨大刀を振り回し、ファントムは軽業を披露しながら矢を放つ。
「いい!いいぞいいぞ!いいぞお前ら!いい連携だな!」
消滅の凶星で反撃しながら太歳は笑う。
後衛が増えたことによって戦略の幅が広がった。
前衛は軍曹が引き続き行っているが、先程まで後衛に集中してたファントムが時折前衛に加わって軍曹と共に猛攻を仕掛ける。
鬼軍曹。
不死性とタフネスをフル活動して食らいつく。
命中した相手の体を骨に変えるほどの衰弱効果を持つ大剣。
消滅の凶星に突貫し、切り払いながら太歳に呪いをかけ、切り裂いていく。
ファントム。
炎の矢を放ち、炎を纏った両刃で斬りかかる。
燃え盛る炎も厄介だが、本人の技巧が一番の脅威。
時には白兵戦、時には遠距離戦、焼夷弾や散弾と使い分けて軍曹をサポート。
消滅の凶星を避け、焼き払いながら太歳を穿ち、切り裂き、燃やしていく。
花魁。
炎の蝶によって太歳のエネルギーを吸っていく。
吸われる度に増える蝶。ソレがまた太歳から吸収して増えていく。この繰り返し。
前衛の浸り等お構いなし。軍曹は突貫を続け、ファントムは避けこそするがある程度吸われている。
狙おうとするも、軍曹とファントムが邪魔。この双璧を盾に更なる呪いを仕掛ける。
前衛が軍曹、後衛が花魁。
両方をファントムがタイミングを見て行き交い、適格に行動。
太歳をその場にしばり付け、凶星に対処しながら太歳に食らいつく。
だがソレだけ。決定打に掛ける。この膠着を打破する何かが必要だ。
「………ああ。精気が、力が…。血が滾る!」
花魁が動き出した。
吸収し続けた鬼軍曹と太歳星君、そしてファントムのエネルギーを解放。
瞬間、花魁の身体が漆黒に染まり、周囲を飛び交う炎の蝶が黒い重油状の水たまりに変化していく。
「今度はどんな芸だ?」
軍曹とファントムを捌きながら、楽しそうに眺める太歳。
ふと、蝶の一匹が変化した水面に映った自身の姿が視界に入る。
瞬間、彼は突然廓にいた。
何が起こった。
事態の確認を行う前に、呪いが発動する。
「堕ちろ…」
【苦界】
太歳の意識が、廓に投獄された。
第四の呪い、苦界。
鬼軍曹と太歳星君とファントムのエネルギーを吸収し続けて獲得した新たな呪い。
効果は、花魁が創り上げた仮想空間の遊郭に閉じ込められ、花魁のかつての苦しみ―――借金漬けで逃れられず他人に搾り取られて朽ち果てていく生き地獄を味わう。
発動条件は黒い重油状の水たまりに反射する自分の姿を見る事。
見たものはその中に展開された廓に意識だけ幽閉され、上記の苦しみを受ける事になる。
その間、行動不能になった対象の身体からは対象の霊力が黒い重油状になって顔の穴という穴から排出され続ける。
無論、ソレは花魁に吸収され呪いがより強化される。
更に、吸われれば吸われるほど出口を覆う檻が増え続けて脱出を阻む。
一度捕られられたなら時間経過と共に強くなっていく呪い。
そしてエネルギーを吸い尽くされたら最後。超高温に発火して燃え尽きてしまう。
まあ、今回はそんな悠長に待ってくれる者はいないのだが。
「(今だ!)」
『Destroy! Omega drive!』
ファントムが必殺の構えに入る。
バーニングアローのレバーを引きながら構えるファントム。
彼の動作に呼応するかのように、エネルギーが巨大な矢となって集中する。
「こほぉ~~~………」
軍曹も構える。
巨大な刀を脇構えにして呼吸を整える。
彼の動作に呼応するかのように、祈りが刀身に集中。圧縮させて制御下に置く。
太歳が動けないうちに決める。
チャージが十分完了したと同時に、二人は最大出力をぶちかました。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」」
繰り出される二人の必殺技。
軍曹の刀から大地を直線上に大きく抉るほどの破壊力を伴う斬撃波が。
ファントムの弓から周囲の大気を灼くほどの熱量を伴う火炎放射が。
巨大な二つの技はビームと見間違う程の規模と威力で太歳へと向かう。
斬撃波は衰弱の呪い。
少し掠るだけで骨になる程。
火炎放射は文字通りの獄炎。
重油が大量に撒かれた今、より大きく燃えるだろう。
大ダメージは必須。
もしやすればこのまま撃破できるかもしれない。
ファントムは仮面の下でほくそ笑む…。
【消滅の凶星:螺旋星雲】
瞬間、銀河が地上に顕れた。
「ッ!?!?」
眩い光がこの場にいる者の眼を焼く。
ファントムもその一人だが、彼の第六感と直感が最大級の警鐘を鳴らす。
早く逃げろ、さもないと死ぬぞ。
その声に従って彼はすぐさま離脱。
地面に伏して被害を最小限にとどめた。
彼の判断が適切であったと、すぐに分かることになる。
「………嘘だろ?」
立ち上がり様に周囲を見る。
辺り一帯に刻まれた破壊の痕。
大地を切り裂いた痕に燃やし尽くした痕。そして………。
「ほう、やはり残ったのはお前か」
凶々しい光によって滅ぼされた痕。
くり抜かれたかのように空いた穴の中心部に、太歳は服こそボロボロだが無傷で佇んでいた。
「(あの二人は…やられたか)」
周囲に二人の気配はない。
軍曹は兎も角、花魁が何もなく逃げるのは不可能。
可能性のある軍曹も性格上逃げるとは到底思えない。
やられた。
たった一撃で。
三人がかりの最大技を。
あれだけ力を込めた必殺技が、たった一撃で崩された挙句、二人やられた。
「(これが…太歳星君か!)」
圧倒的。
格がその辺の神とは違う。
卒業生二人にファントムが追加されても埋められない格差。
その前にファントムは膝を付きかけた。
「なかなか楽しませてもらったぞ。だが少々…いや、大分遊び過ぎた。もう視肉が切れてしまった。いつ以来だ?」
視肉が尽きるなんていつ以来か。
太歳は感心したように笑いながら、周囲に消滅の凶星を展開。
ファントムに一斉射撃する…。
「ズルいなぁ大将ォ。先に始めるなんてよォ」
「「ッ!!?」」
突如、ファントムと太歳の間に八つの蛇が遮るかように横切った。
八つの蛇に光弾が命中し、その箇所が爆発したかのように抉れる。
「ッハ!すげえ威力だな!俺の分霊が抉れちまったぜ」
酒呑童子。
彼は好戦的な笑みを太歳に向けた。
「遅かったな」
「雑魚の露払いに手古摺っちまった。本番はこっからだ。…こいつらもな」
彼の背後から遅れてやって来る。
千魂華厳自刃童子、月蝕尽絶黒阿修羅、そして過渡期の御霊。
彼らもファントムの前に現れ、太歳目掛けて呪いを行使した。
自刃童子の呪い。
無数の白い女性の手が太歳に伸びる。
太歳はソレを全て避けて接近した。
黒阿修羅の呪い。
スケッチブックの呪いで太歳を肉団子にしよとする。
太歳はソレを呪い返しで防いだ。
御霊の呪い。
重力波を太歳目掛けて放つ。
太歳はソレを防御壁のようなものを張って防いだ。
次々と呪いを放つ卒業生と、ソレを対処する太歳。
その間にパーカーチェンジした。
『
『Mad doctor!』
白衣のようなパーカ。
彼の両手には専用武器であるマッドチャクラム。
自刃童子の手を回避している隙を突き、ソレを投げつけた。
木々の間を縫うかのように飛来するチャクラム。
ソレは太歳の死角に潜り込むかのように通り、ドライバーのレバーを引いた。
オメガドライブによりチャクラムがオーラを纏う。
『Destroy! Omega drive!』
「貴様の行動などお見通し…!?」
命中しかけた瞬間、太歳はソレを腕で弾き飛ばした。
しかし太歳の手がオーラに触れた瞬間、太歳からエネルギーを吸い取った。
途端、ファントムの両手に白い光が浮かぶ。
闇医者魂が得た新しい能力。
専用武器であるチャクラムが刺さった者、或いは触れた者のエネルギーを吸い取る。
回収したエネルギーは他者にも譲渡可能。元の能力である治療とも併用出来る。
ファントムはソレで軍曹と花魁を治療した。
「ありがとうよ主様」
「…余計なことを」
復活する二人。
彼らはすぐさま戦線に復帰する。
「これで全員揃った。総力戦だ」
「いいだろう。ここからは一撃も食らわん!…技術戦だ!」