仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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このssで一番書きたかったのがやっと出せました。


生旺死衰

 

 朦朧とする意識の中、夜宵は螢多朗たちに目を向けた。

 

 変身を解除された螢多朗。

 しかし彼はまだ諦めていない。

 太歳を睨みつけながら立ち上がろうとしている。

 

「(私も…あの時、立ち上がれば………!)」

 

 思い出すのは母親を攫われたあの瞬間。

 もしあの時、立ち上がる事が出来たら。もしかしたら何か出来たかもしれない。

 

 今度は奪わせない。

 何が何でも。

 誰も奪わせてなるものか。

 

 鏡とアイコンを鞄から取り出す。

 螢多朗から預かったファントムアイコン。

 ブラッドアイ魂があるからと使わず、弑逆桔梗の為に渡されたものだ。

 

『いいかい、夜宵ちゃん。奪った“えねるぎぃ”というのは消えず流れていくものなんだ。だからソレを留める受け皿がいる』

 

 決戦前に神主から聞いた話。

 神様の力の受け皿。

 誰にするかは最初から決まっていた。

 

 最強の悪霊。

 恨みや憎しみではなく、己が闘争心を源に戦う戦士。

 悪霊でありながら、悪と戦い、悪を討つ戦士を。

 彼女が思う最強に力を託した。

 

「…生旺死衰」

 

 頭に叩き込んだ占事略決・外伝を元に彼女は最後の術を実行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 突然、ファントムの前に大きな眼魂が現れた。

 アイコンドライバーG。

 力を感じさせない灰色のソレ。

 ソレが現れた瞬間、螢多朗や夜宵が持つ全てのアイコンがアイコンドライバーGに向かった。

 

「ほう、まだ奥の手があるのか!」

 

 ソレを嬉しそうな声で眺める太歳。

 互いにボロボロだとは思えない程に。

 

 展開される曼荼羅のようなもの。

 中央に目の紋章が浮かんでおり、そこにアイコンドライバーGが浮かんでいる。

 曼荼羅の中には眼魂が浮かび、禍々しくも神聖な金の光を放っている。

 やがて、アイコンドライバーGは曼荼羅とアイコンを吸収。色のついた状態になった。

 

「こ、こいつは…まさか!?」

 

 アイコンドライバーGが螢多朗の腰に巻き付く。

 何故いきなりコレが現れたのかは分からない。

 だが、今はそんなことを考えてる意味も余裕もない。

 螢多朗はすぐさまソレを使用した。

 

『クライムフル! ガッチリミナー! コッチニキナー!』

 

 軽快な音楽が鳴る。

 ゴーストドライバーより本編に近いソレ。

 しかしそのアイコンは英雄ではなく悪霊。

 膨大な禍々しいオーラを吐き出し、太祭の神気とぶつかり合う。

 

「変身」

『ゼンカイガン!』

 

 独特な変身ポーズを取ってスイッチを押す。

 瞬間、ドライバーからパーカーゴーストが出現。

 ファントム魂やブラッド魂のトランジェント体より強靭堅牢な霊的装甲、アーマークライムを形成した。

 

『サギシゴウトウホウカニゴウカンカルトレンゾクサツジンキ!』

 

 パーカーゴーストがファントムの辺りを飛び回り、身体の各所に宿る。

 各々の部位が大悪霊の力を纏い、相乗効果でより強大になっていく。

 

 

『ダ~イ~ア~クト~~!』

 

 

 クライム魂。

 十五人の大悪霊と融合した姿。

 全てのアイコンの力を兼ね備え、尚且つその上をいく。

 元となるゴーストでいうところのグレイトフル魂にあたる。

 ファントムは次のステージへと至ったのだ。

 

「ほう、ソレがお前の奥の手か」

 

 ファントムが変わっていく姿を黙って眺める太歳。

 彼もまた姿を変えた。

 纏う光が圧縮され、人型を保っていく。

 しかし完全に再生したわけではない。

 あくまでも人の形にしただけだ。

 

「では、続きを…!!?」

 

 突如、背後にファントムが現れた。

 防御することなく蹴られる太歳。

 咄嗟に反撃するもファントムはその場から瞬間移動して安全圏へと離脱した。

 

「(なんだ、何が起こった?)」

 

 疑問に思う太歳。

 攻撃を当てられた。それ自体はさして気にはならない。

 殴られたとて今の身体は凶星の集合体。崩れた部位に集めさせればいい。

 問題なのは、殴ったファントムが何事も無かったかのように動いている点だ。

 

 今の彼は消滅の凶星最高圧縮率集合態。

 溢れ出るオーラの余波だけで相手を霊体だろうが遺伝子崩壊させてしまう。

 これは技でも何でもない。ただ息を吐く程度に近い。要は排気ガスみたいなものだ。

 ソレだけでも相手を絶命する危険な形態。よって環境破壊を危惧してこの姿には滅多にならない。

 だがアイツはどうだ?触れたというに何の異常もない。むしろ更に攻撃しようとしてくる。

 何だ?何が違う?何が変わった?

 

 ヘイトフルフード。

 ファントムの首元にあるフードは特殊なフィールドで全身を覆い、敵の攻撃から身を護る強力な結界となる。

 コレでファントムは太歳のオーラを無力化し、ダメージを与える事に成功したのだ。

 そのことを太歳は知らない。だが耐える術を手にしたのは理解した。

 だから、容赦する必要はない。

 今から奴は、対等な敵だ。

 

 

【消滅の凶星:流星群】

 

 

 再び姿が消えるファントム。

 その位置を予言で占い、特定。そこ目掛けて凶星を降り注ぐ。

 通常形態とは比べものにならない質量。

 直撃すればどんな大悪霊でも消し飛ぶ。

 そう、直撃すれば。

 

「織り込み済みだ」

 

 

【消滅の凶星:星海】

 

 

 超スピードで接近したファントム。

 しかしその存在を予言した太歳は慌てることなく反撃。

 再び高密度の弾幕を張ってファントムを撃ち落とそうとする。

 

「ッ!?」

 

 ファントムが姿を消した。

 超スピードではない。

 速度では逃げられないように弾幕を張った。

 だというのに、ファントムはソレを突破。

 瞬間移動したかのように、太歳の背後に現れた。

 この感覚に彼は覚えがある。そうアレはあの姿で…。

 

「グおっ!!?」

 

 凄まじい力で殴られた。

 両端がメイスの巨大な専用武器―――ブラジョンハンマー。

 咄嗟に凶星で防御しようとした太歳を、本来のソレより強力な威力で凶星ごと殴り飛ばしたのだ。

 

 吹っ飛ばされる太歳。

 オーラで補填した四肢が拉げ、消えていく。

 ソレを新たなに寄せ集めて再び手足を形成。

 同時に彼は気づいた、ファントムの新たな能力を。

 

「(あの姿、今までの能力と武器を全て使えるのか!?)」

 

 強力かつ多彩な能力。

 しかも、本来の形態より強力になっている。

 厄介な能力、しかし分かってしまえばどうという事は無い。

 面白い。その小細工、真正面から潰す!

 

 ファントムが再び姿を消した。

 再び予言で占って場所を特定。先程の焼き増しのように凶星が繰り出される。

 

「そう来るな」

 

 

【消滅の凶星:天ノ川】

 

 

 再び背後に現れるファントム。

 ソレ目掛け右手を翳し最高圧縮の凶星を繰り出す。

 オーラに触れてもダメージが無い事からただの凶星では無意味。

 極太レーザーのように最高圧縮の光が破壊力を伴って放たれる。

 しかしソレも避けられた。

 

「織り込み済みだ」

 

 極太レーザーが急旋回。

 ファントムが避けた地点へと跳んでいく。

 場所は予め占っておいた。このまま直撃…。

 

「これも予想通り」

 

 眼前に空間の穴が拡がり、レーザーが飛んでくる。

 ソレを瞬間移動で避ける太歳。

 何も空間操作はファントムの専売特許ではない。

 彼も似たような術を行使。

 超高速で逃げまわるファントムを捕まえ、超圧縮の凶星を直接叩きつけた。

 

 

【消滅の凶星:衝隕】

 

 

「ッグ!?」

 

 凶星によって吹っ飛ばされるファントム。

 いや、吹っ飛ばされる程度で済んだ。

 

 咄嗟にファントムが掲げたタワーシールド。

 アイコンナンバー14の専用武器、ソリッドシールド。

 能力も武器も防御に特化したピーキーな性能だが、瞬時に様々な形態の武器や能力を使用できるクライムフルになることで十二分に発揮する。

 砕けた盾を捨てながら次の武器を召喚した。

 

 

【消滅の凶星:環状星雲】

 

 

 繰り出されるオーラを纏った凶星の散弾。

 最高圧縮を超えて漏れ出すエネルギーは、一発一発が触れた程度で対象をズタズタにする。

 雨霰の如く降り注がれるソレを、ファントムは武器を次々と変えて迎撃、反撃していく。

 

 ヴェノムフィン。

 散弾を吹き飛ばして迎撃。

 本来の形態より強力な風を生み出し、猛毒が凶星を蝕み、無効化していく。

 

 マーシャルトンファー。

 撃ち漏らした凶星を叩き落す。

 本来の形態より緻密な衝撃操作を可能としたソレは、正確に凶星を無力化させた。

 

 バーニングアロー。

 凶星を貫き太歳を焼き尽さんとする。

 本来の形態より威力も爆発力も上がったソレは、文字通り地獄の業火となって敵を燃やした。

 

「ッ!? クソ!」

 

 瞬間移動で炎を避ける太歳。

 しかしファントムも超スピードで追いかける。

 縦横無尽に飛び回り、四方八方から攻撃を仕掛け、攻守を入り交ぜ、攻防を繰り返しながらより苛烈さを増していった。

 

 

「取った…!?」

 

 太歳が背後を取った。

 だが、ソレはファントムではない。

 幻影。詐欺師魂で作った精巧な幻。

 超スピードで逃げている際中に入れ替わっていたのだ。

 

「らあッ!」

『強盗魔!切裂魔!毒殺魔!ラッシャイ!』

 

 再び超スピードで現れるファントム。

 両手にはリッパ―ナイフ。

 一振りする度に繰り出される毒の風が、更に太歳を切り裂いていく。

 切断の呪いと猛毒の呪い。二つの強力な呪いが蝕み、太歳に消えない傷を刻み付けた。

 

「ッ!?」

 

 太歳の反撃。

 咄嗟にリッパ―ナイフで防ぐが、外側に構えたナイフが折れた。

 マルバスや酒呑童子でさえ破壊出来なかったファントムの専用武器。

 ソレをたった一発で粉々にした威力は流石太歳といえよう。

 

 追撃される前に離脱するファントム。

 再び高速移動で背後を取り、安全圏を確保すると同時に攻撃する。

 

『銃殺魔!放火魔!盗撮魔!ラッシャイ!』

「ぐおぉ!?」

 

 左手にナイフを、右手にスリングトリガーライフルモードを、周囲にはチェイシングレイを展開。

 ナイフを肩に担ぎ、ライフルを太歳に向けてチェイシングレイと共に一斉射撃。

 焼夷弾と強力な熱線で太歳を辺り一帯ごと焼き尽くしていく。

 地獄の業火ともいえる炎が夜空を照らす。

 

「調子に乗るな…!!?」

 

 

【消滅の凶星:赤色巨星】

 

 

 炎を振り払って現れる太歳。

 巨大な赤い凶星によって炎を一掃。

 燃え盛る炎を鎮火させながら、欠けた部分を再び補う。

 そしてファントムに再び凶星を繰り出そうとした瞬間…。

 

『絞殺魔!詐欺師!拷問師!ラッシャイ!』

「グオッ!?」

 

 ワームホールが複数現れ、太歳を縛り上げた。

 あくまでエネルギーである四肢だというのに、縛った上で金縛りをかけた。

 一瞬驚かされるも、拘束を無理やり消滅の凶星で破ろうとする。

 

『格闘家!撲殺魔!闇医者!ラッシャイ!』

「ぐわあああッ!!?」

 

 再びファントムが現れた。

 同時に繰り出される重い一撃。

 続けてその勢いを利用した連撃を繰り出され、ゴリゴリとエネルギーを削られ、同時に吸われている。

 

「(コイツ…同時併用も出来るのか!?)」

 

 やっと気づいた。

 連撃の嵐の中、最悪の事態に。

 自身が知らない能力、知っている能力。

 全てをノーモーションで同時に使える。

 強いて言うなら妙な音声が使うタイミング。

 だが、そんなことに今更気づいても意味はない。

 

『ゼンダイカイガン!クライムフル!オメガドライブ!』

「!?」

 

 飛んできた強烈な飛び蹴り。

 隕石の如き勢いのソレを最高圧縮の凶星で受け止め、数秒程拮抗。

 受け切れない勢いが反発し、大気と地面を震わせながら暴発。両者を吹っ飛ばした。

 しかしファントムはうまい具合に着地して体勢を立て直し、次の手に移る。

 

『ゼンダイカイガン!レッツゴー!全員集合!メガオメガフォーメーション!』

 

 ドライバーのドミネイトリガーを三回押す。

 瞬間、ドライバーから十五体の悪霊全てが太歳を囲むかのように出現。

 各々の立ち位置を起点に曼荼羅のようなものが地面に展開され、太歳の力を封じるようにエネルギーを循環させた。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 魂の雄叫びをあげながらファントムが悪霊たちと共に猛攻を仕掛ける。

 斬撃、銃撃、打撃、炎に毒、悪霊たちの援護を受けながら流れるように。

 各々の形態の必殺技、その上位版を次々と繰り出し太歳を更に追い詰めた。

 

「お…ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉお!!!」

 

 

『消滅の凶星:超新星爆発』

 

 

 太歳も全力で迎え撃つ。

 枯れた雄叫びを上げながら繰り出される大技。

 全力全開、最大出力の大爆発。

 弑逆桔梗から解放され、本気で暴れられる今、その破壊力は今日一となる。

 描かれた曼荼羅の封印を無理やり破壊し、迫って来る大悪霊軍団を一掃。

 京都御所どころがその周囲にまで余波が到達。

 文字通り無に帰していく…。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「ッ!!?」

 

 消滅の光の中、ファントムは突き進む。

 右脚を突き出して。

 エネルギーを纏ったソレを。

 光によって装甲を削られ、全身を蝕まれ、絶大な痛みに耐えながら。

 太歳に全力の蹴りを叩きまんとしていた。

 

「………見事」

 

 飛び蹴りが太歳に命中した。

 

 

 

 

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 光が止む。

 響いたのは太歳の断末魔。

 爆発と同時に彼は散り、膨大な白い光となって辺りに散った。

 

「やった…ぜ………」

 

 爆発の震源地。

 ファントムは変身を解除して倒れ込む。

 光を誰よりも直に浴びながら、螢多朗は意識を失った。

 

 

 

 

 

「何なんだ…何なんだお前は!?」

 

 

 突然、空間に穴が開く。

 ソレは散っていく光を集め、太歳に返還していった。

 

 

「殺せ!ソイツを殺せ!何が何でも殺せ!一秒一瞬でも早く!細胞の一片すら逃すな!」

 

 

 

 

「本霊め…!どこまでもゲスな………こんな屈辱、初めてだぞ!!!」

 

 怒りに震えながら、太歳は復活した。

 

 

 

 




神様をぶっ倒すシーン
このssで一番やりたかったことです。
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