仮面ライダーファントム   作:大枝豆もやし

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やっぱ仮面ライダーといえばバイクだよね!


鬼子母神

 

 とある峠。

 螢多朗は愛車―――ファントム―ディーを走らせていた。

 仮面ライダースペクターが乗っているマシンフーディ―を赤くした三本角のバイク。

 目的地は特にない。

 ただバイクを走らせ、風を感じていた。

 要するにツーリングである。

 

 最初、バイクはただの足だった。

 悪霊との戦いに向かう為、現場に直行する為の移動手段。

 中学の頃から乗っており、腕前は大分磨かれている。

 そのおかげか、彼はツーリングが趣味になった。

 

 別に、バイク自体が趣味というわけではない。

 ただかっ飛ばすのが好きなだけであり、同時に腕が落ちないようにするための訓練でもある。

 

「(……ちょっと行くか)」

 

 バイクのスピードを上げる。

 時速60㎞…80㎞…120㎞…と、メーターが加速的に上がる。

 普通に法定速度違反だが問題ない。法律など意味のない場所に行くのだから。

 

 突然、螢多朗の走る景色が変わった。

 赤い空に紫色の曇。道路脇には彼岸花が咲いている。

 幽世。生者の世界である現世から、霊達が住まう世界へと飛び込んだのだ。

 

 マシンファントムーディには様々な霊的機能が備わっている。

 幽世へと渡る機能、結界を突破する機能、瘴気から乗り手を守る機能、等等様々な効果を一定速度に達する事で発動させる事が出来る。

 今回は幽世へと渡り、バイクを思う存分走らせることにした。

 

 幽世に人も法定速度も存在しない。

 何も気にすることなく走れる。

 そう考えていたが……。

 

「ん?あれは…… 詠子の車?」

 

 幽世ツーリングの途中、見知った車両が見えた。

 通常、幽世から現世の光景は見えない。

 しかし、例外がいくつかある。

 

 例外その1、幽世から現世を覗ける能力がある場合。

 マシンファントムーディにもそういった機能が搭載されており、今では螢多朗も自力で出来る。

 例外その2、現世の者が幽世に近い場合。

 霊気が強い場所に近付いたり、死期が近い場合等、生者が霊や死などのあちら側の世界に近づくと、現世と幽世が交わる事がある。

 今回は後者。強力な心霊スポットに近付いたせいである。

 

「(詠子の奴、あれだけ一人で勝手な真似をするなって言ったのに!……いや、これは夜宵ちゃんのせいか)」

 

 螢多朗はバイクを走らせて一度現世に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃寺のお堂の中、夜宵は足を痛めて立てこもっていた。

 鬼子母神は子供に手出し出来ない。よって仮に失敗しても命は助かると。

 しかし甘かった。鬼子母神のほうは出だし出来なくとも、周囲の水子の霊は攻撃できる。

 鬼子母神対策も甘かった。確かに攻撃はできないが、保護する名目で捕らえる事は出来る。

 夜宵の目論見は容易く崩れてしまった。

 

「(………来た)」

 

 近くまで鬼子母神と水子が来てしまった。

 もうだめか。そう思ったっ瞬間だった。

 

 

 何処からか、けたたましいバイク音が響いた。

 

 

 派手にお堂の戸を突き破って侵入する一台のバイク。

 3本の角が生えたような、赤いスポーツバイク。

 それはまるで彼が………ファントムがモチーフになったようなバイクだった。

 

「夜宵ちゃん!」

 

 手を伸ばすバイクの乗り手―――螢多朗(ファントム)

 彼は片腕で彼女を拾い上げ、その場でスピン。

 方向転換した後は壊した戸目掛けて一気に加速させた。

 

「待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 夜宵を奪い返すため、鬼子母神がファントムに襲い掛かる。

 彼女が殺意を向けられる対象は成人であるファントムのみ。

 夜宵に攻撃が当たらないよう配慮して臓物の鞭を唸らせた。

 

 そして、それらを避けるファントム。

 車体を傾けて方向転換し、瞬時に体制を整え、再び避ける。

 鮮やか且つ大胆なバイクテク。ソレによって妨害を振り切った。

 

「スピード上げるぞ!夜宵ちゃん捕まって!」

「え!?」

 

 夜宵の返答を待たずにスピードを上げるファントム。

 

 唸るエンジン音。

 地面に刻まれるタイヤの跡。

 疾走するバイクは一気に鬼子母神を振り切った。

 

「先生!この先は行き止まりだから回り道して逃げるしかない!」

「わかってる!」

 

 参道から外れて疾走するファントムーディー。

 木々が障害物になるも、それらをバイクテクで無理やり回避。

 道とは言えない急勾配をバイクテクで無理やり抜けていった。

 

 跳び上がるバイク。

 急な坂を一気に駆け上り、その勢いで宙を舞った。

 

 激しく揺れるバイク。

 舗装されてない山道を走り、搭乗者にその反動が掛かる。

 

 山を疾走するバイク。

 丸太を飛び越え、木々の間をすり抜け、茂みを無理やり突破する。

 

 

 オフロードをオートバイや自転車などで行う耐久レースの一種をエンデューロ、特に険しい山岳部などの走行自体が困難な場で行われるレースをエクストリームエンデューロという。

 リタイアする者は勿論、死亡者も出る危険なレース。

 ファントムが行っているのは正にソレだった。

 

 

 

「お…おぇぇ………!」

 

 あまりに激しいコースに、夜宵は吐き気を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう二度と先生のバイクには乗らない」

 

 廃寺から最寄りのファミレス。

 螢多朗たちは一旦そこに集まっていた。

 

「大丈夫だよ、確かに戦いのときは運転が荒くなるけど普段の螢くんは安全運転だから」

「詠子は乗せてもらったことあるの?」

「うん、けっこう後ろに乗せてもらったわ。………螢くんの後ろにね」

「………何度も言わなくていい」

 

 ちょっとうざそうに夜宵はジト目を詠子に向けた。

 

「けど先生のバイクテクすごかった。もしかしてプロ?」

「いや、別に特別なことは…」

「そうよ!螢くんのバイクテクは一流よ!中学の頃からやっててね、高校の頃には首なしライダーとのデスレースにも勝ったの!」

 

 螢多朗に割り込むように、興奮して早口になる詠子。

 ソレに螢多朗は余計なこと言うなという視線を向けた。

 

「………暴走族?」

「違う!」

 

 パシッと、夜宵がさしてきた指を払う螢多朗。

 

「まあ、それはともかく………先生って神様より強い?」

「流石に神相手じゃ分が悪い。何度か戦って負けた」

「勝った時もボロボロになってからね~」

 

 うるさいと言いたげな目で詠子を睨む螢多朗。

 

「第一、神と戦っても旨味がないんだ。滅茶苦茶強いし、眼魂に出来ないし、大体の理由は人間側にあるし」

「?どういうこと?」

 

「神が人間に害をなすパターンってある程度決まってるんだ。1人間が罰当たりなことをした時。2、神との契約を反故にした時」

 

「ただここで厄介なのは、神は個人じゃなくて血族としてみる。だから当人じゃんかうても親戚がそういったことをしたせいで神罰や呪いを受けることだな」

 

「とまあこんな感じだ。神様への対処法の一番は必要ないのに近づかないこと。触らぬ神に祟りなしっていうだろ? 祟りとして信仰されなくてもそういう側面が出たり、分霊がたたり神だったりするからな」

 

 

「(神と単体で戦って勝つ時点で、この人強いわ)」

 

 夜宵はファントムの強さを再認識した。

 




この螢多朗は中学の頃からバイク乗ってました。
もちろん無免です。マネしないでください。
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