胸糞バッドエンドルートです、本編で綺麗に生還しているイメージを崩したくない方はおすすめしません。悪しからず
それでも読みたい業の方はお進みください。レフィーヤ酷い目に遭います
「ふりだしになってしまいました」
「……だね、でも慎重に行こう。危険な異変もあるし、これでいいはずだから」
「えぇ、そうですね……行きましょうか」
通路を巡る。異変を見つけて、異変に惑わされないように、僕らはこの無限の迷宮に挑んでいた。
難しくはない。必ず出られる、焦らず、時間をかけて道を進めた。
違和感を感じたのは、正解の可否を見る短い通路の黄色い看板、その隣のルールを示す看板。
「ベル、何かおかしいです……これ」
「……異変かな、いやでもここでは起きないはず」
「急ぎましょう、何か起こるかも」
「……そう、だね」
焦り、僕らは歩を早めた。
でも、この時にはすでに遅かった。
<<8番通路>>
「ベル、表示が変わってない……これって」
「引き返して正解だったんだ、このまま行こう……あと少しだ」
<<8番通路>>
ポスターの列、扉の有無
おじさんの存在、何も異変は無い
「異変が無い、進むのが正解……だよね」
<<8番通路>>
「え、どうして……どうして、変わってないの?」
<<8番通路>>
「……まただ、もう何十回も繰り返してる……レフィー、もしかして、僕達は」
<<8番通路>>
変わらない通路、引き返しても進んでも、表示はずっと同じ。
通路は無限、異変も起きない。
この通路は、文字通り通路でしかない。
<<∞番通路>>
表示が変わる、ルールの看板も消える。
ベル達が非情な現実を理解しきるまで、そう時間はかからなかった。
ベルとレフィーヤは、8番出口の脱出に失敗したのだ。
〇
…………————ッ
何度も進み続けた。もはや間違い探しなんて行為に意味はない。
ただ進み続けていた。留まることを止めると、僕らはもうそこで潰えてしまう気がしたから。
何かをしていないと、無為な行動でもし続けていないと、空虚なこの牢獄で僕らは孤独に押しつぶされる苦しみを味わってしまうから。
……終わらない
……全部、が、続いている
逃げようのない苦しみ、朦朧として思考が消えるならそれほど楽なことはない。
だけど、僕らはそれができない。
……消えない、意識が消えない、この通路のせいだ
眠ることも無く、お腹が空くことも無い。意識は消えない。
この無限ともいえる時間で、停止してしまえば思考が膨大な世界に引きずり込まれてしまう。
狂ってしまうのに、正気を保ってしまう。
「…………くひ、いひひ」
いずれ狂ってしまうことには変わらないかもだけど、それでも僕らは正気を失いたくない。心を壊したくない。
だから、進み続けていた。
「……ひひ、ぁ……ぁぁ、うぅ」
声を出していなかった。力無く漏れ出た音で声という機能を再認識する。
「……ぁ、あぁ」
出す、出ている。僕の声の音色を知る。
歩きを止めて、振り返ってそこにいる……かに、声をかけてみた。
「ぁ……ぁぁ…………なた、は」
動き出す舌、使い方を思い出して、ようやく言葉が形を得る。
目にしているぼやけた色にも、懐かしい姿が灯る。輪郭がはっきりとなって、その姿を久しく見ていないと思い出した。
「……ベル」
「!」
反応して、思い出した。
お互い、同じことをしているようだ。
「……レフィーヤ」
「久しぶり、ですね……喋るの、懐かしい」
「…………どれぐらい」
立ち止まる、ポスターが並ぶ通路で、もうずっと通過してきたこの道で
蘇る記憶の姿と今が重なる。びっくりするほど同じ、僕の上着を着て、扇情的な素足を晒している。
恥じらう顔をしていた。頬に赤みが映っていた。
「……レフィー、僕達は、もうどれぐらいここにいるのかな?」
今は、まったくそんな色はない。
あるのは美白な肌に、全く感情の熱がこもっていないから、ただただ白い顔でそこに立っている。
目の光は無い。何時から消えたのか、あるのは無力に折れた心の残滓だけ。
「ねえ、レフィー……ッ」
見ていて辛い。そう感じていた、僕はこんな彼女の顔を見たくなかった
でも、いまさら何ができる。
僕らは失敗した、たどり着けなかった
「……レフィー、僕らは、ぼくたちは……もう」
聞くまでも無い、だけど否定したい。
考えたく無いから無為に歩き続けた。止まったらだめだ。冷たくて重い現実を抱いて、息が出来なくなる苦しさに悶えるだけ。
「レフィ……答えてよ、ねえ!?」
「……ぃ、いヒ」
「!」
死ねない窒息ほどつらいものはない。
それを今、僕はひどく痛感している。
お互い、もうとっくに地獄の底にいる。
抜け出せない、終われない。
壊れてしまったことを思い出す、その繰り返しだということを、また僕は思い出した。
「ひ、いひひひ、あはは、あはッ……キィイイァアアアアアアアアアアアアッ!?」
「!?」
振り乱す髪、狂乱して泡を吹く。
暴れて、殺気立って、僕の方に飛び掛かってきた。
「……ッ」
真っ黒な瞳孔の奥に、どす黒い激情が込められている。
清く振る舞うレフィーヤさんはいない、あるのはその姿をしている似た誰かだ。
爪を立てて、歯を立てて、涙をこぼしながら僕という物を見ている。
「ベル、ベルベルベルベル……ひ、ヒヒヒッ……っくひ、ぅくひひ……アハハハハ!?!?!?」
精神病患者のベッドみたいなものだ。
シーツを握って、クッションを踏みつけて、暴れ狂う衝動を叩きつけるだけ叩きつけて、それでどうにか平静を取り戻す。
戻すために、必死に抗っている。
正気になるために、僕に、襲い掛かるのだ。
「レフィ……ッ」
襲い掛かる、手段は、暴力と快楽だ。
殴って、引っ掻いても、僕らは傷を負わない。どうせ治っている。
この世界は不変だ。ならば、何をしても後腐れは無い。
そして、ここには男女が二人いる。
「……ぁ、あああぁ……————ァッ」
快楽を欲して、正気に戻るために貴方は僕に獣の行為を提示するのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいッ……忘れさせて、お願いッ」
「……ッ」
応じるしかない。
僕らは、壊れている。壊れているから治療が必要だ。
…………————ッ
歩き続けて、発狂するたびに立ち止まって、僕らはこんなことをしてしまう。
何度か数えて、十を越えてからはもう知らない
……————————ッ————ッッ
獣のように、荒くなって、理性を捨てる交じりあい。そうでもしないと、僕らはもう耐えられなくなっている
「……————ァ————ッ、あぁッ……ァ」
…………————ッ……———————ッ!!
音がする。響く音、打ち付け合う音。
往復するたびに、僕らの目にはきっと光が戻っている。
「ぐす、ひぐ……ぅあ、あぁああああッ」
正気に帰る、でも傷は消えない。
癒えない心で正気に戻るのは辛い。だから快楽を混ぜる。
酒に酔って酔いしれても、開いた傷口は閉じることはないのだから。
「……嫌、帰りたいッ……もう、嫌ッ!」
「何も変わらない、どこにも行けないッ……どうして、どうしてこんなことになるんですか!こんな目に逢わないといけないんですか!!」
「皆に、会いだいッ……お外、見たい……寂しい、怖いッ…………壊れちゃう、壊れちゃうのが嫌、嫌嫌!!うわぁああぁあああああああああッ」
現実を見ると涙があふれる、正気になればなるほど心が傷つく。
何をしているんだ、僕達は。いっそ、消えてしまえれば楽になるのに、どうしてそうさせてくれない。この通路は、地獄の拷問部屋だ。
「……レフィ」
「最低、ですッ……わたし、わだしッ……あぁ、アアアァアアアアッ!!??!」
打ち付ける音が増すほどに、僕らは正気に返る。気が狂い、痛みで悶える。
痛みは和らげないといけない、その為の快楽だ。方法も知らない、ただ当てつけの様に重なり合って、乱暴に苦しめ合う。
気持ちよくも無い。ただ辛い、この無限の地獄の中で、苦しみの形を変容させているだけ。
地獄からは抜け出せない。久遠に冷めない悪夢を見続けるこの地獄から、僕達は逃れられない。
「……ベル、ベル、助けてッ……助けて、くださいッ……キャハ、アハハハハハハハハハッ!!!」
「————……ごめん、レフィー」
聞けない頼み、不可能な願い。
苦しむのはお互い様だ。ともに無事じゃない。
体を重ねても、キスをしても、僕らは現実の辛酸を舐めるだけ。
……————ッ——————ッッ!!
…………——ッ……ッ!————……ッ!!?
呆然と迷宮を彷徨うか、感情をぶつけて交じり合うか、そのどれかだ。
僕らにはそれしかできない。いずれ完璧に狂ってしまうまで、この延命治療の往復を繰り返すだけだ。
逃れられない、終わることも許されない。
僕らは失敗した。
取り返しのつかない失敗をした。
1・8番出口は閉鎖となりました。
2・異変は全て停止します。
3・通路内の時間は永久に停止中です。
4・通路のご利用方法はご自由に委ねます。
次回で完結、ちょっと困惑させるかも、というかショッキングですのでご注意を
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