8番出口から脱出するベルとレフィーヤ   作:37級建築士

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ランキング載りました。高評価頂き感謝、真心こめてベルとレフィーヤを曇らせる展開を書いていきます。

感謝、感謝の曇らせ


(4) 8番のりばで降車したいベルとレフィーヤ

 

 

 

>>ニノ塚>>

 

 

 

 

『異変発生中』

 

 

 

「ひッ!?……て、手形?」

 

 

 

「……血、本物」

 

 

 

 扉を開けて、新鮮な空気を吸った。

 

 けど、入ってすぐ肺を満たしたのは生臭い鉄の匂い。壁一面床一面、人の手形がびっしりと溢れかえった。

 

 これだけ、ただの驚かし?

 

 

 

……違う、そんなわけがない

 

 

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと手形は前に進んでいる。

 

 手形が、一斉に

 

 

 

 

「走れッ!!」

 

 

 

 

 考えるよりも前に、叫んだ時点で、僕の手はレフィーを引っ張って前に進んでいた。

 

 血でぬかるんだ床、だけど手形は確かな触感がある。

 

 手を踏みつけている様な、凸凹した質感がある。

 

 

 

 

 

 

……ビタ、ビタッ

 

 

 

「走れ走れ走れ走れッ!!」

 

 

 

 追いかけてくる。間一髪でドアを開けて、連結部分のスペースに体を入れて

 

 ドアを閉じた。

 

 

 その瞬間

 

 

 

 

ビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタビタ

 

 

 

 

 埋め尽くされたガラス窓の赤一色。手形の痕すら見えない程に、べったりと血の赤で覆われた。

 

 そして、覆われるその瞬間に、僕は見た。手を伸ばして、向かっている手痕を付ける人の形をしていたナニカ

 

 

 

「……ッ、ぁぁ……危なかった、また……また死ぬところだった?」

 

 

「たぶん、そうだと思う……見とれていたらきっと

 

 

 

 想像するに、難しくない。

 

 きっと、亡者の手につかまって、体はバラバラにされるか引きずり込まれるか。

 

 いずれにせよろくでもないことは確かだ。人を理不尽人殺しにかかる、最悪の初見殺しだ。

 

 やっぱり、これを作った奴はそこ意地が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 >>三挫>>

 

 

 

 

 

 

 ドアを開けた、異変が発生中と掲示板には流れている。

 

 おじさんがそのまま、特に何も見当たらない。

 

 慎重に歩を進めて、次の車両の入り口まで迫った。そこで、ようやく僕らは異変に気付いた。

 

 

 

 

「あ、開けてください!」

 

 

 

 声がする。だけど、扉は真っ暗闇のまま

 

 怖がるべき段階、でも僕らにとって今まさに頭にあるのは二つ、この扉を開けたら終わりだということ、そしてこの扉の向こうからくる男にどんな危険があるか分かったものじゃない。だから当然、後ろへ下がった。

 

 

「待てばいいんでしょうか、このまま」

 

「わからない、取り敢えず距離を取ろう……急に襲い掛かってくるかもしれない」

 

 

 目を見合わせて、僕らはさらに下がった。車両の真ん中まで、そして掲示板の異変発生中の文面にも目を向ける。

 

 

「……どういうことなんでしょうか、具体的な行動の指示が無いからわからないですけど」

 

 

「異変発生中……異変を消して進め、だね。消す方法を探せってことかな?」

 

 

 

 車両の中には何も変な所は無い。

 

 あるのは、はっきりしない掲示板の指示分。そして、進むべき場所に見える明確なトラップ。

 

 

 

 

「あの~……いますよね、開けてくれませんか?」

 

 

 

 相も変わらず、暗闇の向こうからは声がかかってくる。

 

 

 

「おかしいな、声は聞こえてますよね?……ねえ、そこのお二人さん」

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

「!」

 

 

 

 とっさに、僕はレフィーを抱えた。

 

 来るのか、声だけの存在に警戒心を向ける。

 

 武器は無い、必要なのは咄嗟の判断。

 

 

……異変を消せ、でもどうしたらいい?

 

 

 戦うべきか、それとも見落としがあるのか

 

 

 

 

「……切符、くれませんか?」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 右手でポケットを抑えてしまった。

 

 この状況で失えない、僕達の最後の砦、それを渡せと扉の向こうの男は言っている。

 

 

 

「……渡せば消える、そういうことなんでしょうか」

 

 

「かもしれない、嫌ダメだ……渡せるわけがない」

 

 

 

 罠だ。でも、かといって状況を打開する選択肢が二つしかない。渡すか渡さないか、碌に情報も無い中だ、提示されれば選択するしかなくなる。

 

 でも、それはリスキーすぎる。

 

 というか、あまりにも不都合すぎる。

 

 

……違う、視点を置くべきなのはここで切符を渡すか渡さないかじゃない

 

 

 

「レフィー、今から起きることに動揺しないで欲しい……きっと、後味の悪いことが起こるから」

 

「……ベル」

 

「大丈夫、きっと危害は負わない」

 

 

 

 そう、僕らには、だ

 

 

 

「……あの~」

 

 

 

「待っててください、今そちらに行きます」

 

 

 

「は、はい!切符渡してください!!」

 

 

 前に進む、下がった分今度は強気になってさらに前に

 

 男に、声が良く聞こえるように。

 

 真っ暗闇のドアガラスには何も映らない。あるのは、ノックの音と声だけ。

 

 

「切符、くれませんか?……帰れないんです。だから、切符」

 

 

 

 か細くなる声。

 

 無機質な、どこか与えられた役割に従う舞台装置にも思えた。でも、今は感情が乗っている。

 

 妙に、切羽詰まっている

 

 

 

「……た、たのむ……切符を、切符をくれッ……じゃないと、帰れないッ!」

 

 

 

「————」

 

 

 後味が悪い。どうせ、この八番のりばを仕組んだ奴のことだ。

 

 気味の悪いことが起きるに決まっている。

 

 まるで、進むことの対価とばかりに、僕らに罪悪感を擦り付けてくる。本当に趣味が悪い。

 

 

 

「……ぅ、はぁ」

 

 

 

 ドアを開ければどうなるか、あからさまな罠だ。

 

 かといって切符を渡すなんて論外だ。

 

 であれば、出来ることはきっとこれしかない。語り掛けてくる相手には、同じく言葉で返すしかない。

 

 

 

……切符を持っていない、なら

 

 

 

 

「……お客様、切符をお持ちでないみたいですね」

 

 

 

 落ち着いた声で、僕は告げた。

 

 扉の向こうで、男は声を消した。

 

 怯えている?

 

 

 

……ガチャ

 

 

 動揺が走ったのか、一瞬扉を揺らした。と、次の瞬間には

 

 

 

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

 

 

 

「!」

 

 あからさまに取り乱した。開けようとしているのか、けど扉は開かない。

 

 こっちに襲いにかかろうとしているのか、いや違う。逃げようとしているのだろう。

 

 それこそ、向こうの車両で何かが向かってきているかもしれない。

 

 

 

……やっぱり、こうなるのか

 

 

 

 扉の向こうの人は切符を要求してきた。つまり、現実的に考えるとこの人は無賃乗車をしているということになる。

 

 その事実を突きつけたなら、きっと解決に繋がると思ったら、その通りだ。

 

 

 

通報、ご協力いただきありがとうございます

 

 

 

 

 何かが起きてもおかしくない。

 

 切符を失うこと、それの意味する結末を僕らは今目にするのだ。

 

 

 

 

 

 

「ひ、やめろ……ぁ、あぁあ、あああああああああああああッ嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だッ!!か、帰るんだ私はッ!妻の元に、帰るんだ!頼む、一枚だけで良いッ私に慈悲を、お願いだッ助けて、タスケテ助けて助けてッ!!助けろ、たすけろよ、タスケロヨタスケロヨタスケロヨッ!!!!?

 

 

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

 想像通りのことが起きた。

 

 僕もレフィーも、同じ顔をしている。真っ暗闇のガラスに映る自分たちの顔。酷い顔だ。

 

 見えるものには何も変化はない。ただ、ただ聞えて来るだけだ

 

 

 

 自分達が突き離した人が、死にゆく最後の断末魔をだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ、嫌だよぉおお、帰らせてくれ妻に会いたい娘に会いたい家族に会いたい、会いたい、会いたい会いたい愛、が、ぁ、ああいたぁ、痛いイタイイタイイタイッイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ

 

 

 亡骸になっていく声がする。

 

 貪り食らう音のせいだ。切り刻む音のせいだ。磨り潰す音のせいだ。

 

 およそ、生き物を決して生かさない行為の音がする。

 

 

 

痛い、痛いッ……痛い、ぁ、い

 

 

 

「————ッ!!」

 

 

 

 耳を塞ぎたい。

 

 でも、体が動かない。

 

 何かがいる。僕らが呼んだからなのか、ナニカがいる。

 

 ガラスの反射で映る僕らの姿に、大勢のナニカが立っている。協力の感謝を示しているのか、敬意を示すように頭を上げていた。

 

 

「……ッ」

 

 

 僕もレフィーも、何もできない、動けない。でも、唯一分かることはある。

 

 このまま何もしていない僕らは、危害を受けないこと。

 

 危害を受けているのは、今も向こうにいる誰かだけ

 

 

生きたい、生きたいッ……痛い、生きたいッ……あ、会いたい……ぁ、会いたいよぉッ……娘に、妻に……なんで、なんでダメなんだ……嫌だ、嫌だ嫌だ、ぁあああああああッんぐぁあ、あがぁああああああッ!?!?!

 

 

 

「ひ、ごめんなさいッ……ごめん、なさいッ」

 

 

 

あ、謝るのか……ぁ、ああぁ、なら切符をくれッ!!切符を、切符を渡せッ!!!!

 

 

 

「い、ひぃいいッ……べ、ベル、ど、どうしたら」

 

 

 

 怯えるレフィー、向かってくる声の主に押されてその手が僕のポケットに伸びようとしている。

 

 命がかかっているモノを捨てようとする行為、強く手を掴んで止めた。怯えた顔をして僕を見る。怖がらせて御免、酷い思いをさせてごめん

 

でもこれは仕方ない。だって、安全と引き換えにすればこっちが取るべき正しい道だ。正しい行動は罪悪感を伴う方だ。

 

 今、聞こえている音も、漂う新しい血の匂いも、そして扉の下からこぼれ出ている赤い液体も、全部本物。

 

 きっとただの幻、舞台装置の演出に過ぎない。仕掛けてきたナニカは、僕らの正気を損なわせて狂気に落としたいみたいだ。 

 

 

……悪趣味な異変だ

 

 

 

 きっとこれも作ったものだ。だけど、あまりにもリアルだ。心を削りに来る仕掛けとして見るなら、これ以上のものはない。

 

 ダンジョンで、日々命がけで戦うからわかる。

 

 今聞えているのは、正しく生きた人間の断末魔だ。

 

 

……でも、それでも

 

 

 

「……それがどうした、そう思わないといけない」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 これは異変だ。

 

 化け物を作り出す空間だから、当然仮初の人間の一人や二人ぐらい作れるはずだ。

 

 ならば、ここは判断を間違うな。冷徹にならなければいけない。

 

 

 

……心を、鬼にしろッ

 

 

 

 

「レフィー……ごめん」

 

 

 

「!?」

 

 

 

 抱き締めた体は震えている。

 

 罪悪感という痛みで心が血を流している。

 

 

「悪夢だから、これは悪夢だからッ」

 

 

 

 目を閉じて、耳を塞いであげて

 

 今はただ異変が消えるのを待つだけだ。それ以外は何もいらない。

 

 

「……べ、ベル……わ、わかってます……でも、でもあの声」

 

 

 

「そうだね、心が痛むよね……でも、それでも僕らは進まないといけない。だから、だから、これぐらいのことだって、思わないといけないんだッ」

 

 

 

 断末魔が消えない。

 

 でも、音は徐々に小さくなる。

 

 きっと、声も上がらないぐらい、それぐらいの目に遭っている。

 

 

「……目を閉じて、僕が動いたら鼻も口も閉じて」

 

 

「は、はぃ……わかり、ましたッ」

 

 

 

 嫌な臭いも、嫌な音も、僕だけが飲み込んでいる。

 

 言葉は聞こえない。

 

 あるのは、濡れたものを叩きつける音だけ。

 

 声は消える。

 

 

 

「座ろうか、レフィー」

 

 

「……ッ」

 

 

 

 床に広がる赤い液体。

 

 

 

 およそ人一人から出るとは思えない量のそれが足に届きそうになったから、半ばまで下がって椅子に座った。

 

 音は、離れても鮮明に響いている。構造のせいか、どれだけ距離を置いても変わらない。

 

 通報に協力したから

 

 僕が、僕が指摘したから

 

 

 

 

 

 この結果は、僕達が進むために引き起こした。ただのその事実を無情に突きつけられている。

 

 

 

 

 

 悪趣味だ。

 

 

 

 

 異変を作り出して、この遊戯を見下ろしている何かがいるとするなら、ソイツは本当に悪趣味だ。

 

 

 

 

「————ッ」

 

 

 

 

 けど、その悪趣味が、ここから先に続くだろう異変の数々対して立ち向かうヒントとなる。

 

 状況は依然最悪のまま、けれど光明が無いわけじゃあない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ガララ

 

 

 

 

 

「…………終わった、みたい」

 

 

 

 

 

  音が止んだ。

 

 

 

 

 

不審者の処分を終えました。ご利用のお客様方、大変心よりお礼を申し上げます

 

 

 

 

異変に気を付けてお進みください

 

 

 

 

 

 

「……うるさいッ」

 

 

 

 言われずともわかっている。

 

 まっさらな車両の中で、聞こえてきた無機質な声に僕は苦言を吐いた。

 

 次の車両へ向かう。床一面に広がる生臭い血と肉片、そして骨と髪、磨り潰されただろう臓器。

 

 レフィーが踏まないように、蛇行しながら歩いていく。開いた扉を抜けて、次の車両へと足を運ぶ。

 

 

 足を滑らさないように、気を付けて進まないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>>四蝸川>>

 

 

 

 

「……少し、助かったかな」

 

 

 

 

 電光掲示板を見た。

 

 四蝸川と書いてある。

 

 

 

 床を見た。

 

 床にでかでかと、わざわざ丁寧にそれが置いてあった。その上で、メッセージまで付いていた。

 

 

 

 

「……ベル、もう、もういいですか」

 

 

 

 荒く息を整えている。言いつけ通り、レフィーは目も鼻も口も閉じていた。

 

 

 

「あなたに、また無理をさせてしまった……わ、私」

 

 

「気にしないで、僕なら大丈夫だから……大丈夫、だから」

 

 

 正気を測る尺度があるなら、僕の方がレフィーより幾分か余裕があるだろう。

 

 あの八番出口を終えてから、状態が悪かったのははっきり言ってレフィーの方だ。

 

 負担は、出来る限り僕が負う方がましだ。

 

 

「……気にしないで、本当に。少し、ここで休めば大丈夫だから」

 

 

「そ、それなら、いや……待ってください、ここって次の車両ですよね。い、異変は……また、なにか」

 

 

「いや、それは大丈夫だと思う……ほら」

 

 

 指して教えた。レフィーもようやくそれに気づいた。

 

 明かりに照らされたピカピカの床。そこに書かれた文字と、そのすぐそばに置いてある手紙のようなもの。

 

 

 

協力のお礼です。

 

 

 

この車両に異変はありません。

 

 

 

 

 車両を見渡しても異変は無い。おじさんはそのまま、扉も開くとか明かりが消えるとか、妙なことも置きそうにない。

 

 あからさまな嘘は付かない、ナニカにも弁えている部分もあるのだろうか。

 

 

 

「少し落ち着こう」

 

 

 

「……ええ、そうしましょうか」

 

 

 

 まだ四両目

 

 もうかなり来ている。座り心地の良い柔らかい長椅子、クッションにお尻を鎮めると一気に力が抜ける。

 

 揺れが心地よいまである。

 

 レフィーも僕の隣に来た。同じように、大きく息を吐いた。

 

 

「無理して……もう、貴方って人は」

 

 

「ご、ごめん」

 

 

「でも、助かりました……ベル、ありがとうございます」

 

 

「……どういいたしまして」

 

 顔が熱くなる。

 

 こんな状況でも、反応してしまうぐらいには余裕があるのかも

 

 

「……自分ばかり前に出て、本当あなたって男の子なんですね。良い意味で、悪い意味でも」

 

 褒められてけなされた

 

 でも、ちょっと心地よい。小言を聞いていたくなる。

 

 

「無理したなら休んでください……ほら、私の肩にもたれてもいいですから」

 

 

「……いいの」

 

 

 流石に悪いと思って遠慮していた。そんな本心を見抜いたように、というか見抜かれた。

 

 レフィーヤ、僕の彼女は察しが良い。 

 

 

「いいんです。むしろ、悪いと感じているのは私の方なんですから……貴方ばっかり負担をかけたくありません」

 

 

「…………ッ」

 

 

 窘められて、少しだけ我に返った。

 

 無理をしている。女の子を守る為に、いい気になっていたとまではいかなくても、変に気負い過ぎている部分はあっただろう。

 

 

「負担をかけるのは、仕方ないです……私は、貴方よりもずっと、余裕がない」

 

 

「……ごめん」

 

 

「いいんです、だから甘えてください……ほら、どうぞ」

 

 

 

 肩をポンポンと叩いて招いて来る。

 

 抗いがたい衝動が内から沸き起こる。女の子に触れたい、甘えたい、そんな意識が体の力を抜いて来る。

 

 強がりが、崩れてしまった。

 

 

 

……ぽふん

 

 

 

「……素直でよろしい」

 

 

「————」

 

 

 言葉に甘えて、レフィーの肩に頭を置いた。

 

 柔らかくて軽くて、体重を預けたから少し傾いたけど、しっかり踏ん張って支えてくれた。

 

 落ち着く。すごく、落ち着いて瞼が重くなる。

 

 

「……重くない?」

 

 

「重いです、だってあなた男ですから」

 

 

「……知ってる」

 

 

「それに、もう慣れてます……ふふ、よしよし、甘えん坊なんですから」

 

 

「……ッ、ちょっと」

 

 

 肩に置いた頭を、レフィーはわざわざ胸元まで下ろした。

 

 力を抜いていたから、いきなりの抱擁に抗えなかった。

 

 

 

…………いい匂い

 

 

 

 こんな状況なのに、いやこんな状況だから体と心は安らぎを欲してしまう。

 

 

「……私に気を遣う気持ちには感謝します。遠慮はいらないですから、いつもみたいに触れてください……匂いを吸って、癒されてください」

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

 

……ガタン……ゴトン

 

 

 

 揺れる、この乗り物は依然どこか遠くへ走っていくばかり。

 

 どこに向かうも知れず、ただ暗い中を永遠と走るだけ。気味が悪いことこの上ないけど、この揺れの心地良さは嫌いになれない。

 

 ほんの少し、少しだけ休憩を取る。

 

 折り返しなんだ。不安は慎重さをくれるけど、そればっかりじゃ神経が擦り切れてしまう。

 

 休める時はしっかり休もう。

 

 理不尽で悪趣味で、僕らが望んで来たわけでもない。そんな状況ではあるけど、これもまた冒険だ。命を懸けて生還を勝ち取る、やることは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 




以上、折り返し地点です。異変は残り三つ、無事、クリアできるかお楽しみに

SAN値の方は、まあきっと大丈夫。冒険者って精神もタフなはず、知らんけど




感想頂き励みになります。クトゥルフ風味で本作書いてますので感想で見る知らない知識は素直に参考になります。いっぱい勉強しないと、主に曇らせの為に


魔心を込めてレフィーヤを曇らせてあげたい。そろそろ失禁でも……嘘、やっぱりなんでもない、失禁なんてかわいそうなことさせませんよ。品性って大事、る~るるる♪
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