8番出口から脱出するベルとレフィーヤ   作:37級建築士

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正月休み終わってから中々筆が乗らないぜ。まあでもあと数話で終わる、はず。


(5)

 

 

 

<<5番通路>>

 

 

 

 先を行くレフィーが積極的に異変を探す。

 

 見つからない、先へ行こうかと僕が言葉を出そうとした。けど、それを制して

 

 

 

「……これ、ドアノブの位置が変です」

 

 

 

 レフィーが見つけすぐに引き返す。

 

 頼もしく、異変を見つけ出す彼女の注意深さには思わず関心を抱いてしまった。

 

 

 

「……感心しないでください、これぐらいのことで」

 

「いや、でも……二人いて助かるわけだし」

 

「……わたし、役に立てません」

 

 かしこまった物言い、冷静で落ち着いている、なんて楽観的には思えない。

 

「そんなこと」

 

「ありますから……現に私、今弱くなってます」

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

「気づきませんか、たぶん……ここの影響ですよ」

 

 

 

 レフィーは語る。

 

 それは、僕自身もここに落ちてから如実に感じていたものの、恐怖で気が回らず見過ごしていたこと。

 

 確信を持つまではいなかったけど、予期して恐れていた展開だ。

 

 

「出せないんです。普段の力、普通の人よりも身体能力だって上なのに……今の私、あなたに守られるにしても、もっと自分のことは自分で守れるはずなんです」

 

「そんな、でも僕は」

 

「腐った化け物に囲まれて、何も抵抗できなかったのに……あなたは、強引に出し抜けた」

 

「……それは、そうだけど。……でも、じゃあなんで」

 

 

 違いがあるのか。

 

 指摘されて、うすうす感じていた疑念がはっきりと輪郭を持ってしまう。

 

 違和感は、あの壁に擬態していた男との闘争だ。長く伸びる廊下と追いかけてくるあいつの早さ、でも冷静におもいかえすと、アレは逃げ切れるはずだった。

 

 僕も確かに調子が出ていない。 

 

 その上で、僕異常に調子が出ていないレフィーヤさんとなれば、そこにある原因と差は

 

 

「恐怖の差……それが、僕らのステイタス不調の理由」

 

「……怖い、こういうの、本当に嫌い」

 

「あ、ああぁ……な、泣かないで」

 

 しくしく泣きだす女の子を前に、かける言葉は流暢に出てこない。とりあえずハンカチを取り出すけど

 

 

「……いいです、袖で拭きます」

 

「それ、僕の……ま、まあいいや……大丈夫ですからね、僕がいますから」

 

「うぅ……慰めるなぁ」

 

 涙腺を余計に開いてしまった。

 

 先行きに不安が募る。

 

 

 

<<6番通路>>

 

 

 

 異変は早々に発見した

 

 通路を進むとおじさんが向かってくる、けど、その挙動が明らかにおかしい。

 

「早く!」

 

「……ッ」

 

 

 早歩きで自分たちを追ってくる異変。即時撤退でサクサクと通路が進行する。

 

 

 

<<7番通路>>

 

 

 

 通路に躍り出る、二人で注意深く観察して、どこにも異変は無いように見えた。

 

 

 

「……レフィー、そっちは」

 

「扉にはなにも……通気口も、どこにも異変はありません」

 

「……無い」

 

「まって、よく探して……読めない文字も、もしかすると」

 

「……いや、それは、どうだろう。でも、異変は今のところちゃんとわかるものばかりだし」

 

 あるようで無い。疑心に駆られて、あるはずのない異変を見てしまう。

 

 決断が鈍る。このまま、意見が分かれて、運に任せるのは避けたい。後二回、できれば正解を引いて最短が望ましいけど。

 

 

「……ベル、私が決めます」

 

 

「!」

 

 

「……異変は、ある……戻りましょう」

 

 

 強く決断を提示する。気おされながらも、周囲を念入りにチェック

 

 

……大丈夫のはず

 

 

 

 言い聞かせて勇気を作る。

 

 つま先を元いた方向へ、向かって左に曲がり右に曲がるが。

 

 

 

「あ……これは、レフィー」

 

 

 

 黄色の看板が0を示している。

 

 間違えた、あと少しのところでだ

 

 

 

「……ごめん、なさい」

 

 

「ぁ……そんな、こういうのは連帯責任だから」

 

 

「……ベル」

 

 

 目を見る、恥じらいを抱きながら、ちゃんと僕の前に近づいて

 

 

「!」

 

 

 深く頭を下げる。腰を曲げた態勢で、ずり上がる上着のせいで背中の肌が少しだけ覗く。

 

 

「……大丈夫、僕は……気にしてない」

 

「でも」

 

「言ったよ、僕は構わないって」

 

「……それは、そうですけど」

 

「挑みましょう……ただ、ふりだしに戻っただけです」

 

 

 

 そう、間違っても死にはしない。警戒すべきは、本当に危険な異変だけだ。タイル壁の男や、さっきの早歩きで向かってきたおじさん

 

 成果を焦ってもいいことは無い。ここは、確実に一歩ずつ

 

 

 

 

…………大丈夫

 

 

 

 

……間違えても、何度も挑戦すればいい。

 

 

 

 

……それで、必ずゴールに届く。

 

 

 

 

 

「…………………そうだ、きっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………本当に?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<3番通路>>

 

 

 

 

 

 1、2と問題なく異変無しで通過する。

 

 3番通路、ここは一見同じかと踏み込んで、ポスターを通り過ぎた瞬間、もう無いかと油断していた所へ、それは発生した。

 

 

 

「走って!」

 

 

 

 同じパターンだ。けど、向かってきたのは男でもおじさんでもない。

 

 水だ。真っ赤な血だ。

 

 

 

「早く、早く早く」

 

 

 見つけた瞬間襲い掛かってくる血流に、僕もレフィーも一心不乱で走る。

 

 けど、その走る距離が異様に長い。そう、増えているのだ。

 

 この異変は、確実に僕らを殺しに来ている。

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

「ベル……きゃぁあッ!?」

 

 

 

 

 迫る洪水の濁流はすさまじい速さで迫ってくる。だから、とっさに抱えて

 

 瞬間的に、脚部のチャージを開放。いける、この距離なら、英雄願望で十分

 

 

 

 

……ずさぁあああ

 

 

 

 

 

「レフィー……ごめん」

 

 

 

 抱きかかえた体を地に降ろす。おじさんが見えている前で、気まずさでつい視線をおじさんに向けてしまう。

 

 

 謝って、どうにか許され

 

 

 

 

「……構いません……ありがとう、ございました」

 

 

 

「え」

 

 

 

 触れた太腿とお尻の感触、消えるまで頭を殴られるのも覚悟した。けど、レフィーは不自然なまでに怒らない。

 

 まるで関心が無いように、今も距離を開けて顔を見せずに歩いているぐらいだ。

 

 

 

…………不思議だ。

 

 

 

 そっけない、言葉が少ない

 

 だけど、妙に距離の狭さを感じる。

 

 

 許してくれる貴方は、ひょっとして

 

 

 

 

「……異変?」

 

「————ッ」

 

「なわけないですね、レフィーヤさんです……はい」

 

「……はぁ、もう」

 

 

 ため息、けどこわばった表情が緩むと、浮かぶのは

 

 

 

「…………もう、いや」

 

 

 青い、覚め切った怯え顔だ。

 

 

「レフィー……大丈夫、じゃないよね」

 

「少し落ち着かせてください……怖いですけど、もう慣れました。だから、心臓が収まったら……動けますから」

 

 胸に手を当てて、何度も呼吸を繰り返す。

 

 上から押さえつけていないと、その鼓動は収まりそうにないのだと。やっぱり、今のレフィーヤさんは

 

 

「……なにか、できないかな?」

 

 

 怯えてしまったレフィーヤさんの心が問題だ。

 

 怖いことに不慣れ、その上ここの影響か力が普段通り出せないことで無力さを抱いている。

 

 さらに、守られて、足を引っ張っていることの罪悪感。

 

 要素は絡まり、悪循環は増していく。

 

 

 

……このままじゃだめだ、気休めでもなんでも、何か

 

 

 

「気分を変えましょう……レフィーの気持ち、僕が変えてみます」

 

「……そんなの、どうやって」

 

「えっと、怖いときは……そうだな、どうしたら」

 

 

 悩んで、考えて

 

 こういう時に思い起こすのは自分の体験、実際に受けた施しの記憶が呼び起こされる。

 

 怖い体験を知って、眠れず落ち着かない僕に春姫さんがしてくれたこと。皆には言えない、恥ずかしくて、幼くて、話すこともできない秘密。

 

 

 

 

「……ハグと、よしよし」

 

 

 

 

 

「————」

 

 

 

 

 失敗した、その顔を見て真っ先に思ったのは、そんな感想だった。

 

 だけど、レフィーヤさんは少し考えた様子で、何か腑に落ちた顔を見せた。

 

「…………ッ」

 

 

 妙に間を置いてからの、物言い。身構えて、そして静聴して待っていると。

 

 

 

「それ、あなたが実際にされたこと、ですよね……恥ずかしい秘密だったり」

 

 

「……ぁ、ぁあッ」

 

 

 爆発、というか何か頭の上から噴き出た。

 

 熱い、熱くて前を見れない。

 

「みたい、ですね……くす、あはは…………あなた、へぇ……子供みたいな話ですね。もしかして、怖い夢を見た後だったとか……それで、あなたのファミリアの誰かに、よしよしされて添い寝、だったり」

 

「ちょ、ちょっと……どうしてそこまで」

 

「勘です……というか、だいたい想像できます」

 

「アマゾネスのフリュネ、あの人に夜這いされる夢にうなされて……怖くて、怖くて怖くて」

 

「ちょっと待って、流石にそれは想定を超えてますッ!……と、というか、どうしてフリュネ?あの、恐ろしい男性冒険者殺しの、あなたなんでそんな夢を見て……まさか、歓楽街に」

 

「……無理やり、捕まって……あの時は、あぁああ」

 

「あ、ちょっと……ストップ、思い出すの止めなさい!あ、あなたが怖がってしまったら今よりもっとピンチになっちゃいますから」

 

 肩を揺さぶり、懸命に語り掛けるもその声はイマイチ入ってこない。

 

 あぁ、今なんであの時のことを思い返すのか。暗い石壁、漂う媚薬成分たっぷりの薫香。それまで食われて潰されただろう男たちの苦悶の声が未だ残って反響している様な、そんな地下牢の音が今でもこびり付いている。

 

「……や、やだ……蛙はもう、嫌だ」

 

「あぁ、さっきの私みたいになっている……駄目!戻って来なさい!!」

 

「……だ、だって」

 

「も、もう!」

 

 思い返す。滴る唾液は胃酸を含んでいるのか、近づかなくても危険臭が漂っていた。

 

 

「……い、いやだ……頭ごと食べられる口にキスなんてされたくないッ」

 

「ほ、本当にどんな過去が……もう、どうすれば」

 

「は、春姫さん……うぅ、あああぁあ」

 

「……ああ、もう……仕方ない人」

 

 

 思い返す。トラウマで眠れなかった僕に、春姫さんは丁寧に接してくれた。

 

 眠れなかった僕の為に、わざわざ部屋に訪れて、僕が眠るまで傍で手を握てくれた。でも、それでも眠れなかったときは

 

 そうだ、恥ずかしかったけど、抱きしめてくれたんだ。

 

 自分も、男の人の鎖骨を見たら恥ずかしさで倒れてしまうのに。でも、あの時だけは、そんなこともなく、ただずっと自分の上の立場の存在で傍に寄り添ってくれた。

 

 頼って良い相手、情けなくなってもいい上位の相手。

 

 膝立ちで、座っていた僕の頭を抱きしめて、何度も頭を撫でてくれた。

 

 そう、今みたいに

 

 

 

 

 

……今?

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

「よし、よしよ~し……だ、大丈夫です、大丈夫なんですから」

 

 

「……れ、れふぃ」

 

「喋らないで、恥ずかしいのですからこっちは……黙って、頭で一分だけ数えていなさい……それまで、その間だけ、ですから」

 

「…………ぁ、うん」

 

 

 予想外、だけどされている行為は紛れもなく現実。

 

 濡れて冷えた体を包む自分の服、抱きしめる腕からは未だ振るえる感情の落ち着きなさが受け取れる。

 

 だけど、だけどこの手のひらの感触は

 

 

…………ナデ、ナデナデ

 

 

……とんとん、ナデナデ

 

 

 

「……ぁ」

 

 

 抗えない。落ち着く心地は薄れて、もうとっくに心はドギマギしている。

 

 こんなにも、良い匂いがしていたなんて。

 

 近くで、近づいてくれたレフィーヤさんは、ものすごく女の子だった。バカみたいな言葉だけど、そんな形容しか今の僕の感情を表せない。

 

 女の子、レフィーヤさんはとっても女の子。

 

 意識してしまう、綺麗でかわいくて、怯えてしまう繊細な心で、だけど芯は強くしなやか。

 

 魅了なんてされていないのに、意識する心があなたの魅力を拾ってしまう。

 

 

 

 

「変な声出さないでください……もう、なんで私が、本当に……どうかしてるッ」

 

「………す、すみません」

 

「謝らないで……わたし、もらってばっかりなんですから……返さないと、だから、気にしないで」

 

「…………はい」

 

 

 心配をしていた。だけど、今のレフィーヤさんにそれは不必要に思える。

 

 

……不思議だ 

 

 

 怖がっていたはずなのに、今も恐怖は染みついているのに

 

 さっきまでにはなかった、レフィーヤさんの生きた温度が骨身に感じられる。

 

 守らないといけない相手、自分が背負わないといけない重責、そんな見方はもうしていない。

 

 

 

「……頼ってください、ベル」

 

「!」

 

 

 早鐘の鼓動、密着している額の感覚。

 

 そして、借りを返さんとする勇ましいあなたの言葉、それが僕に勇気をくれる。

 

 守るじゃない、頼る。

 

 一緒に、この困難を乗り越える。

 

 

「……レフィー」

 

 

 表を上げる。涙をぬぐって、目元を晴らしたその顔

 

 いつかに見た、僕が知っている格好いいレフィーヤさんだ。

 

 守るべき無力な女の子じゃない。共に手を取る仲間、冒険者の貴方。

 

 

「一つ、命令です」

 

「え?」

 

 さあ、ここから再始動だ。そう、意気込む矢先、レフィーは意地の悪い笑みで僕の手を掴んだ。

 

 離さない。強い力、華奢な守られる女の子じゃない、冒険者の握力で、逃がすまいと

 

 

「わたし……あなたにいっっっっぱい、恥ずかしいところを見られました。それはもう、不愉快なぐらいに」

 

 

「……そ、それは」

 

 

 僕の上着と下着だけ、そんな姿のレフィーを思い出して目を背ける。

 

 

「何目を背けているんですか、私の体が見るに値しないと思っているんじゃないでしょうねッ……まさか、もっとヤラしい経験を積んで……この変態!!手練れスケコマシ!?」

 

「風評被害が尋常じゃない!」

 

「今更です!……と、とにかく……私からの、お願いッ」

 

「……ね、願い?」

 

 

 

 

「ひ、ひとつ……だけ…………だから、わたしあなたにッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く

 

  

 

 

 




今回はここまで、折り返しが済んだのでサクサク攻略していきたい。そんでベルレフィ加速させたい。


感想・評価大変励みになってます。そういえばランキングにも乗ってたみたいで、ベルレフィ健全作品が目に留まるのはうれしい。健全ばんざい



可愛い女の子の曇らせと失禁は健全!
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