昔の友達がイケボでアトミックしてる俺はどうすりゃ良いですか? 作:富竹14号
呪術廻戦を書くのに疲れたからと何気無しに投稿していく今日この頃、何が酷いって多分疲れた関係なく呪術廻戦に戻ろうとするところ。
なんてことない、なんてことない子供の頃の憧れが、今の俺を生み出した。
───あのキャラみたいになりたい。
そんな小さな憧れ、子供なら誰もが抱えるであろう空想の中への憧景…俺もまた、例に漏れずそんな憧れを抱いた子供の一人だった。
…ただ、他の子供達と違ったのは、俺のソレは何時まで経っても消えず、俺の中に存在し続けていたことだろう。
アニメ、漫画、ゲームに小説、おとぎ話…一度は誰もがそれらに憧れ、そしてそれを目指そうとする。
しかし同時に、誰もがそれらに対しての憧れを失っていく、子供から大人へと成長していく過程で現実を知り、空想と現実のすり合わせの果てに、抱いた憧れを次第に忘れていく。
あんな存在になりたい…そう確かに想い望んでいた自身のソレを、根底から無理だと否定し捨て去ってしまう。
きっと…いや、きっとではなく、それこそが普通なのだろう。
空想に憧れる自分にケリを付けて、現実に向き合って毎日毎日少しずつ前へ前へと進んで大人になっていく…それが普通なのだろう。
……だけど…俺はそうはなれなかった。
腹から流れる大量の赤色を見ながら、俺はふとそう思った。
地べたに寝そべって天井を見上げている、目に差し込む電灯の光が嫌に眩しい。
周りから喧騒が聞こえてくる…早くしろと怒鳴り上げる声、俺の周りを一定の距離を離して囲んでいる人混み。
誰も彼もが好きなように喋っていて、それは本来なら耳を刺すレベルでうるさいはずなのに、奇妙なことにどれもこれもが遠くに聞こえる。
腹部が熱い…子供の頃から鍛え上げ、その結果としてバッキバッキに割れた腹筋が自慢のそこからは、今尚夥しい程の赤色が…血が流れ出している。
一体何故そうなっているのか、それは思い出せない…いや、思い出せないと言うより、思考がぼやっとして定まらない、思い出したいことを思い出せない。
ゴフッと息を吐き出し、それと同時に喉の奥から何かが込み上げ、それを息と一緒に吐き出してしまう。
口から溢れ出した血液、それと連動するように腹部に痛みが奔り、息をするのが苦しくなってくる。
熱かった腹部が急に寒くなってくる、ついさっきまであった手の感覚が徐々に徐々に手の先から消えていく。
そして俺は、ことここに至ってようやく気がついた。
───あぁ、俺は今、死にかけているのだと。
そんな恐ろしい事実に対して、しかし俺の心境はどうしようもないくらいに穏やかだった。
今から俺は死ぬのだと、そんな事実が突きつけられているのに、俺は酷く安心したような心地の中でそこにいたのだ。
何故かと思ってみても、思考が定まらず何が何だか分からなくなる、昔のことばかり思い出してしまう。
小学一年から始めた筋トレ、その次の年から始めた空手に剣道、更にとその次から始めた柔道にボクシングにその他諸々。
あんな風になりたい、その為に何をするべきかと考えて、とりあえず強くなろうと始めた武術達、ある程度満足行くまで鍛え上げたら次の技術へと移っては覚えてを繰り返していた幼少期。
楽しかったなぁと何でもない風に思って、ふと考える。
アイツは一体、どうなったのだろうか? と。
陰の実力者になりたい…そう言っていたアイツは一体どうなったんだろうと。
何処かの道場で会って、本気でやり合って、互いが互いの秘密を打ち明けたあの日から、俺達は約束した。
成りたいものに成れたら、また会おう…そんなガキみたいな、まるで厨二病患者みたいなことを、当時の俺達は本気で約束していたのだ。
その日から、俺はアイツに…影野実には会っていない、その直後に俺は引っ越してしまったからだ。
でも絶対に何処かで会えると俺は確信していた、だってそう約束していたんだからと、そう思い出を振り返っている時…ふと気づいた。
視界がチカチカと点滅する、耳が遠くなる、最早身体から痛みどころか寒さすら感じられない。
そろそろ本格的に限界かなと、俺は何処か他人事のように、そう思った。
死の淵に立っている、俺は今ここで俺という人生を終える…それなのに、どうしてなのだろうか?
俺は、一欠片も怖いと感じないのである。
死ぬことに対しての恐怖がまるでない、現実感がどうとかの話ではなくて、俺は心の底から自分が死ぬという事実に何も感じていない。
それどころか、こんなんだから何時まで経っても夢を諦めきれなかったのだろうかと、そんな馬鹿みたいなことすら考え始める俺が居た。
思うところがないというわけではない、でもそれは夢を叶えられなくて悔しいという、極々ありふれたものだった、断じて死に際の人間が考えるようなことじゃない。
何処か壊れているじゃないかと、自分自身に突っ込んでみて、いやいやこれが俺だからと何故か自分で弁明してみる。
意味が分からんと思わずと吹き出してしまう俺の視界に、唐突とも言うべきタイミングで人影が割り込んでくる。
男と女と、一人の少女…それが俺の視界に入り込んできた。
最早俺の視界に色は無い、モノクロで白黒な風景…それでも分かる程度には、その三人の顔はグシャグシャだった。
涙と鼻水が顔中に張り付いていてそれはもうグシャグシャ、綺麗な顔が勿体ないとそこら辺に拘っていない俺ですらそう思ってしまうくらいにはグシャグシャだった。
三人が何かを言っている、しかし俺にはもう何を言っているのか聞こえない、口の動きから何を言っているのかを読み取ろうとするが、昔の記憶が脳内に過り続けているせいで集中出来ない。
視界が暗くなっていく、モノクロの視界が黒一色に染まろうとしている…それでも俺の中に死に対する恐れが湧き上がることは無かった。
やっぱり何処かしらが壊れてるんだなぁっと、そんな自分自身に呆れたように吹き出して、流石にこのまま終わるのはアレだろうとどうにかこうにかと手を動かしてみる。
手が動いたような感覚はしない、ただ目の前にあるモノクロの視界を頼りに何とか腕を動かして、どうにかこうにかと手を男の頭に充てがう。
綺麗に整えられた髪の毛を手でくしゃくしゃと乱雑に動かして、一声掛けてやろうと口を動かそうとしたら動かなかったから諦めて、じゃあどうしようかと無駄に時間を掛けて考えて……そんなことをしている内にどんどん俺の視界は黒に染まり切っていって…最終的に……。
俺の視界は、黒一色に染まった。
そうして次に目を覚ました時、俺は一人の女性の手の中にいた。
開くはずの無い瞼を無意識的に開いて、真っ先に目に入った光景は無数の人間が俺を見つめている光景。
何処か不安げに俺を見つめる無数の視線、俺を抱いている女の人に視線を向ければ、その女性も俺を不安げに見つめる始末。
何が何だか分からない…この人達は誰だ、死んだはずの俺がどうして知らん女性に抱き抱えられているのか、なんで誰も彼もが俺のことをそんな目で見るのか…何もかもが分からない。
けど、そんな俺の思考なんて欠片も知らないと言わんばかりに、俺の身体は勝手に動き始めた。
何気無しに、半ば本能的に女性へと手を伸ばす、何故だか短く小さな紅葉のようになった俺の手を、必死になって女性へと伸ばす。
そんな俺の様子に、女性は目を丸くして俺を見つめ、そんな俺の手に合わせるように、自身の指を俺の元へと近づけた。
その指を、俺を必死に逃さぬように、まるで捕まえるようにして両手の中に収め、そして───
「きゃっきゃっ…!」
まるで自分のモノとは思えないような高く無邪気な声で、笑った。
自分でも、なんでそんなことしたのかなんて分からない…でも、そんな俺の姿を目にした女性が、涙を流しながら笑顔を浮かべる姿を見て…まぁ良いかなと、なんとなくではあるが…そう思った。
主人公
兄と義姉(予定)の二人の結婚式の日に唐突にやってきた義姉(予定)の元交際相手に義姉(予定)を庇って刺された男、因みにその際に元交際相手の顔面を粉砕して殺害した。
陰の実力者になりたい系男子と友達になった経験あり。