昔の友達がイケボでアトミックしてる俺はどうすりゃ良いですか? 作:富竹14号
陰実書いてて楽なこと…伏線とか考えずに脳死で書けるところ。
俺の友人曰く、戦いとは対話である…らしい。
指先の動きから足先の動き、視線の動きに獲物のブレ、それら全てに意志が宿るのだと、実は言っていた。
最初は分からなかったが、アイツと色んな環境で戦う内にそれを理解出来るようになった…あぁ、確かにこれは対話と呼ぶ相応しいものである…と。
だから…あぁ、だから。
「アッハッ…!」
俺は今、どうしようもなく、楽しい。
黒衣の少年の剣と俺の血の刃が交差する。
時に激しく時に緩やかに、何度も何度も何度も何度も、この世界に来てからまず味わうことの無かった技と技のぶつかり合いが、今ここにある。
楽しい。
払うような蹴りを少年の足元へと振るう、当然ながらそこから俺特製の血の刃が飛び出し、少年の足を斬り飛ばしてやろうと迫るが、少年はそれをぴょんっと子供が遊ぶように跳ねて躱す。
楽しい。
少年に一気に肉薄して腕を振るう。
視線の誘導に加えて足先と手先のフェイントを混ぜ込みながら繰り出される無数の斬撃、姉も父もまともに対応するどころか気づきすらしなかったそれ、しかし少年はそれら全てを認識した上で本命の斬撃のみを弾き躱し受け止める。
耳に響く心地の良い鉄の音、交差し弾けてぶつかり合う至極の音が飢えに飢えていた腹を満たすように俺を潤していく。
楽しい。
見れば分かるぞ、お前のその圧倒的なまでの練度が。
練り上げられた魔力、肉体の内で爆発し圧縮し更に爆破し更に圧縮し…ただの一度でも間違えれば内側から吹き飛びかねないそれを平然と熟すその技量、俺の魔力技術とは比べ物にならない程のその技量、これこそが俺の求めていたものだ。
楽しい。
奴の剣に俺の刃が激突する、斬れない。
魔力伝導率100%の俺の血の刃、触れようものなら問答無用で全部纏めてぶった斬ってきたそれが、小さな子供の剣一つすら折れやしない。
それはつまり、目の前の少年が使っている剣が、俺と同じ魔力の伝導率100%かそれに近しい数値を叩き出しているということに他ならない。
見たこともない剣だ、色も真っ黒で調べた限りじゃそんな物は見つけられなかった…つまり答えは至極簡単な訳で…要するに作り出したのだろうコイツ自身が自分の手で。
こんなに嬉しいことがあるだろうか、俺の他にもそれをやろうとする人間は、少なくとも俺の近くには居なかった。
楽しい…楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!!!
久方ぶりのまともな戦闘、フェイントを織り交ぜた読み合いと磨き上げてきた基礎と基礎のぶつかり合い。
次の一手は? 右か左かはたまた上か? それともフェイントかカウンターか攻めの一手か? そんな思考の元に完成する戦いが、今ここにあるのだ。
少年もまた笑っている、楽しそうに嬉しそうに大口を開けて笑っている…あぁそうだな、俺も同じだよ楽しくて楽しくして仕方がない。
無数にぶつかり合う斬撃と斬撃の嵐、ただ火花だけがこの夜闇を照らす中で、俺達はただただこの至福の時を無造作に感動的に過ごしていた。
出来ることならずっと続いてほしい、もっともっと幾らでも続けていたいと、少なくとも俺はそう願った。
……でも、時間っていうのは誰しも平等に流れるからこそ時間な訳で、結局訪れる結末ってやつも基本決まってるのである。
荒く息を吐いて地べたに寝転がる俺の姿を、奴は上から見下ろしていた。
結論から言って俺は負けた、技量とか魔力量とかそんなもんじゃなくて、もっとも基本的なことで俺は負けた。
それこそ単純、スタミナの問題だ。
どうやら魔力を全開使用した全力戦闘は、想像以上に俺の体力を毟り取っていたらしい、お陰でもう全然動けん。
身体強化に加えて奴の服を構成する物質、それを超えるための魔力運用と使用方法、そしてそれらを模索する為に使用した時間…全てが俺の敵に回った。
大方、剣と同じ材質で出来ているのだろう、刃を直撃させた時の感覚が伝導率100%(仮)の剣とほぼ同じ感覚だった。
傷は付けられても即座に与えた手傷ごと治された、お陰で俺は一撃でこいつを殺す方向性の手段にシフトさせなきゃいけなかったのが余計に疲れを生んだ、マルチタスクも真っ青である。
「強いね、君」
何処かねっとりとしたような声でそう言う奴に、俺はどうもと言葉を返してぐでーと寝転がる…いやまぁ、寝転がる云々以前に起き上がれないのだけど。
…いや、というか───
「どうだい? その力を僕の元で───」
「お前実だろ? 何やってんだよこんな所で」
その時、空気が凍った気がした。
「なんだ蓮だったのか、も〜そうならそうって早く言いなよ、殺すところだったじゃないか」
「いや、有無も言わさず襲ってきたのはお前の方なんだからな?」
パチパチと弾ける焚き火の前で、俺と実…現名『シド・カゲノー』は二人仲良く肉を貪り食っていた。
材料は主に俺が狩った鳥に盗賊共が何故か持っていた調味料、肉の上に丁度良いくらいの配分で配合した調味料をたらーとかけてがぶりと肉に齧り付く。
…うん、結構旨い、下手なりにやってみるもんだなと自慢気にしてみる。
「狭いよなぁ世界って、よりにもよって生まれ変わったのが俺とお前のロクデナシ二人なんだもんなぁ」
「酷いなぁロクデナシだなんて、僕は盗賊狩りに精を出す善良な一般貴族なのに」
「善良な一般貴族は後ろから斬り掛かるようなことしないんだよ」
ついでに言うと、お前みたいに盗賊の身ぐるみも剥いだりしないんだよ…という言葉を飲み込みながら、俺は肉に齧り付く友人に視線を向けた。
何処かキョトンとしたような顔で俺を見る実…じゃなくてシドの顔は相も変わらずと言うべきか、見事までに普通そのものだった。
目の位置から鼻の位置やら何やらと言った顔のパーツの配置全てが普通、何処にでもいるようなこいつ風に言うなら一般的モブ、通行人Aのような容姿をしていた。
生まれ変わった先で得た容姿がモブ顔だった…大抵の人間ならその事実にガッカリするのだろうが…如何せんこのシドという人間の目的の関係上、寧ろ喜んだであろうことが容易に想像出来る。
「…それで? 今でも目指してるのか? 例のやつ」
「当然、それは君だって同じなんだろ?」
あまりに唐突に口に出した問いかけ、普通の人間なら答えるのにある程度は時間を置くであろうその問いかけにシドはさも当然のように即答し、流し目を俺へと向けて半ば確信しているかのような口調で俺へと問いかけた。
まだ諦めていないんだろうと黒色の瞳が俺を射抜き、それに対して俺は口角を思い切り吊り上げる。
諦めていない? 当たり前だ、諦められているならこんなことしてないしそもそもあの時死んでいない。
あのキャラクターの様になりたい…今やその対象が何人にも増えたその憧れが潰えたことはただの一度も無く、ましてや諦めたことも忘れたことも無い、今尚俺はそれを目指している。
そしてそれは目の前の友人も同じで、だからこそこうしてここにいるのだろうと勝手ながらに推測する…まぁ、概ね間違いなんて無いのだろうけど。
「僕の願いと君の願いの行き先は違う、行き先が違えば道だって違う…だけど───」
「それでも道が重なり混じり合うこともある…か」
唐突に始められた問答、一切の主語無しで始められたその言葉遊びは、きっと他人が傍から聞けば意味の分からないものであることだろう、下手すれば重度の厨二病患者に思われるかもしれない…でもそれで良いのだ俺達は。
だって、その果てのドンデン返しは、きっととてもとても楽しいことのはずなんだから。
あの言葉にはこんな意味があったのか、あの行動はこの時の為のものだったのか、そんな風に周りが唖然と愕然としている中でただ俺達だけが不敵に笑うというシチュエーション…それはきっときっと頭がおかしくなるくらい楽しいことに違いない。
やることは変わらない、今まで通りただただ憧れに馬鹿みたいに手を伸ばして伸ばして伸ばし続ける、何時か自分が満足するその時までずっとずっと。
片や憧れ、もう片やも憧れ、同じく絶対に届くはずのないモノにひたすら手を伸ばし続けた大馬鹿二人…あぁ、実に良いじゃないか上等だよ。
シドが笑みを浮かべて俺を見ている、まるで俺がなんて言うのか分かってるみたいなそんな表情を浮かべて、楽しそうに俺のことを見つめている。
そんな友人の姿に、何も変わらないんだなと呆れたような笑みを浮かべて、自然な動作で俺は右手を差し出した。
その右手が握られるのに、数秒も経たなかった。
主人公の好きなキャラ①:アーデン
主人公について
善人よりの悪人、少なくとも性欲もあるし間違いなくシドよりも良心はある…その代わりはっちゃけるとシド以上のやらかしを起こしたりする。