昔の友達がイケボでアトミックしてる俺はどうすりゃ良いですか?   作:富竹14号

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 血を扱うキャラで真っ先に思い浮かぶキャラクター:俺はお兄ちゃんだぞ!!


陰の実力者には悪の組織が必要である。

 

 

 シドと出会ってから約数週間、俺はシドの隠れ家的な場所を住処にしていた。

 

 家の奴等全員ぶちのめして家出したきたとか言ったら、なんか悪役っぽいとか成り上がり系主人公っぽいとか色々言われて、あれよあれよと上機嫌なアイツにその住処を提供された。

 

 場所的に悪くはない、窓は無いし所々ボロボロで崩れそうだけど、少なくとも雨風は多少は防げる、仮住まいを作るまでの繋ぎにはなるだろう。

 

 そんなことを考えながら、毎日毎日盗賊を殺したり仮住まいの為の材料を集めたり、後は時たま仮住まいを改修しまくって立派な家にしちゃったりと…まぁまぁそれなりに忙しい毎日を過ごしていた時…アイツは唐突にそれを持ってきた。

 

 

「拾った」

 

「元居た場所に返してらっしゃい」

 

 

 軽く、まるで猫でも拾ったような軽い感覚で、シドはそれを拾ってきた。

 

 まず感じたのは腐臭、今の今まで嗅いだことが無い程の腐った匂い、周囲を飛び交う無数の蝿が嫌に鬱陶しい。

 

 青い瞳に変色した肉体の色、元々は生物か何かであったろうその姿には元の原型は欠片も無く、ただぶよぶよとした肉の塊と化している。

 

 

 『悪魔憑き』…世間一般では悪魔の呪いだとか神のあーたらこーたら的な扱いを受ける、まぁ要するに忌み子ってやつである…多分だけど。

 

 そして、それをわざわざ拾ってきたこの馬鹿は妙にニコニコとしており、その手は今か今かとワキワキとしているような気がした。

 

 なんだか、とても嫌な予感がした。

 

 何気無しに悪魔憑きへと視線を向けて、何だったらと悪魔憑きに触れてみる。

 

 感覚は本当にぶよぶよした感じだ、ただ気持ちの良い方のぶよぶよした感触ではなく、何処かねっちょりとした嫌な感覚が手を通して伝わり…それと同時に奇妙な感覚が手を通して伝わってくる。

 

 瞬間、伝わってくる強烈な痛みと魔力の激流、ある程度の魔力操作が出来なければまず止めようが無い程のソレが、俺の手を通して伝わってきた。

 

 咄嗟に手を離す、バチリと音を鳴らして弾かれたそれの身体には、赤黒いスパークが無数に弾けていた。

 

 

「…魔力暴走か」

 

「正解」

 

 半ば無意識的に呟いた言葉を、シドは笑みを浮かべて肯定する、その顔はまるで悪戯に成功した子供のようだった。

 

 分かってて触らせたなと恨めし気な視線を向ける俺に対して、シドは肩をすくめて良いでしょこれっと悪魔憑きへと視線を向ける。

 

 俺は自分の魔力を血そのものに流し込んで使用する、純度100%の魔力効率を有するそれを幾度無く繰り返し使用した俺の血液は、何時しか流し込まずとも血液そのものが魔力を有する別種の血液へと変貌を遂げていた。

 

 なんと言えば良いのか…そう、分かりやすく言うなら某お兄ちゃん構文で有名なお兄ちゃんみたいな状態の血液と化しているのが、今の俺だ。

 

 だからなんだろうか…俺は何時の間にか俺が触れたモノに流れる魔力ってやつに敏感になった。

 

 理由は分からない、何をどう原理として解説すれば良いとかそういうのはまだ分からない、ただ難しく考えずそういうものであると思ってくれればそれで良い。

 

 今問題なのが、悪魔憑きが単なる病気…それも魔力操作技術がとにかく未熟なこの世界に於いて、絶対的に治しようが無いソレであったということであり…それを拾ったのがよりにもよってこのバカタレであったという事実だった。

 

 

「実験台にするつもりで持ってきたなお前」

 

「そりゃ当然、こんな便利なものを使わない手はないよ」

 

 

 多分、その言葉を聞いた俺の顔は、ドン引きしたようなモノになっていたと思う…というかこいつ言い切ったよ、仮にも人間を実験台にすることに対して何ら躊躇が無いってどういうことだよお前。

 

 こいつの考えてることは分かる、大方こんな機会滅多に無いやとか自分の身体じゃないから試し放題だとか、そういうことを考えているのだろう。

 

 何せ、目指したモノの為に自分から様々なモノを切り捨ててきた男だ、今更そこら辺の倫理観なんてありゃしないだろう…まぁ、俺も似たようなものなのだが。

 

「…多分俺なら()()()けど…やっていいか?」

 

「駄目だよ、これは僕が使うんだから」

 

 そう言って、シドは悪魔憑きの肉体にその手を突っ込み、魔力を流し込み始めた。

 

 輝く紫色、膨張し弾けるのでないかと悪魔憑きが蠕き始める。

 

 そんな光景を見てもシドの表情は喜色そのもの、当然その頭の中には悪魔憑きが感じる痛みなんて一欠片も考慮していないに違いなかった。

 

 御愁傷様…心の中で痛みに悶えているであろう悪魔憑きに言葉を残し、俺は住処から外へと出る…流石に生き物が実験台にされる光景を長々と見る趣味は無いのである。

 

 強いて言うなら、恨むなら先にそいつに見つかった自分の運の悪さを恨んでくれ…そんなことを考えながら、俺は今日の飯を狩りに出かけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、俺が帰ってきた時、俺の住処には何故か全裸な金髪美少女なエルフが居た。

 

 俺に対して警戒の眼差しを向ける彼女に対して、俺は何処か呆然としたように立ち尽くし、ふとその後方でカッコつけた様子で座っているクソボケへと視線を向けた。

 

 何やってんだと視線で問いかける、そんな俺に対してシドは口パクで答えた。

 

 一音一音がはっきりと分かる様に大袈裟に表現されたソレに、俺は思わずと言ったように吐息を吐き出す。

 

 伝えられた言葉はたった一言、悪魔憑きの子…である。

 

 つまりこの馬鹿は俺が狩りに言っている間に魔力暴走を完全に制御してみせ、その結果として何故かあのぶよぶよのドロドロと化していた悪魔憑きを元の姿に戻してみせたと…そういうことなのだろう。

 

 実際そうなのかは知らんけど、少なくともそう思っていた方が今は楽だと、とりあえず背負ってきた猪やら鳥やら何やらを適当な場所に下ろして───

 

 

「年頃の女の子を何全裸のまま放置しとんじゃボケェェッッ!!!」

 

 

 

 シドの馬鹿たれに、不意打ち気味に蹴りを叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ごめんごめん、ちょっと衝動が抑えられなくてつい」

 

 

 頭を掻きながら、出来るだけ笑顔を浮かべてそう言う俺に、エルフちゃんは何処か戸惑った様子で俺の事を見ていた。

 

 あの後、シドを蹴り飛ばした後のことだ、俺はとりあえずエルフちゃんの服を用意し、何があったのかをシドに聞くことにした。

 

 その内容は概ね俺の予想通り、こいつは魔力暴走を完全に制御してみせ、見事この悪魔憑きと呼ばれたエルフちゃんの姿を元の状態に戻してみせた…まぁそこまでは良かったよ。

 

 その後に会話に混じってきたエルフちゃん…シド命名『アルファ』が、とんでもない爆弾を投下してくるまでは。

 

 シャドウ? シャドウガーデン? ディアボロス教団? ちょっと待ってほしい何だそれは全部初耳なんですけど?

 

 エルフちゃん…アルファがシドのことをシャドウと呼ぶ度に、シャドウガーデンの拡大という如何にもな単語が出される度に、ディアボロス教団とか言うどっかで聞いたような名前が出る度に俺の頭は混乱し、そしてなんとなくではあるが察してしまった。

 

 こいつ、あることないことでっちあげやがった…と。

 

 陰の実力者ムーブにする為に必要な物は何か…それに対してのアイツの答えは大凡三つ。

 

 一つは組織、陰の実力者ムーブをする為の組織であり、この世の裏側に位置する陰の集団。

 

 二つ目は絶対的なまでの実力、こいつの価値観からして陰の実力者は誰にも負けないしその正体を知られることは決して無い、だからこいつは貪欲なまでに強さを追い求めるし、その為ならアルファにしたようなことを平然とする。

 

 そして三つ目は…それらを彩る悪の組織的な存在だ。

 

 なんでも良い、この世を裏から牛耳る謎の組織、歴史を闇に葬ったり王族やら何やらを平気で食い物にしていたり、邪神やら何やらの復活を目論んでいたりとか、目的は何でも良いのだ。

 

 ただそこに、陰の実力者ムーブが出来る存在がいれば良いとか思ってそうなシドからしてみれば。

 

 だったらどうするか…それこそ簡単だ、でっち上げれば良い。

 

 自分にとってもアルファにとっても都合が良い悪の組織ってやつを、存在しないモノをでっち上げれば良い、そうするだけでこいつの望みは叶うのだ。

 

 ディアボロス教団って名前からして、モチーフにしたのは有名な御伽噺か何かだろう、丁度良く今の状況にも合致する。

 

 大凡台本はこうだ、御伽噺のラスボス『魔人 ディアボロス』と三人の勇者達は実在した、魔人ディアボロスは死に際に勇者達に呪いを掛けてその結果として悪魔憑きが生まれた。

 

 悪魔憑きになったってことは勇者達の子孫の証明…そんなわけで忌み子どころか神子的な存在として扱われていた悪魔憑き、しかし何時しかその存在は疎まれ憎まれ穢れとして処分され始めた。

 

 それをしたのがディアボロス教団……的な感じの話をアルファに吹き込んだんだろう、アイツならこういう話程度なら即興で作れるし違和感無く話してくる、何も知らなきゃ多分騙される。

 

 そうしてそんな事実を察してしまった俺は何をしたか…まぁ、持ってた解体用のナイフを握り潰したよね。

 

 バキィと甲高い音を立てて砕け散るナイフ、それに驚いて俺を見るアルファに言い訳染みた笑顔を浮かべる俺…それで持って、今の状況に至る。

 

 そうして作り笑いを浮かべた俺は、とりあえず気晴らしにシドに模擬戦を申し込んだのだとさ。

 

 





主人公の実家について

 実はディアボロス教団の傘下、母とそのメイド以外の全員がディアボロス教団の実態を知っている、何だったら娘も早めに教えられている。

 なお、それを何も知らずに叩き潰したのが主人公。
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