昔の友達がイケボでアトミックしてる俺はどうすりゃ良いですか? 作:富竹14号
あの後の事だ、兎にも角にもシドの姉さんは救出した。
手の部分とか何かを引き千切ったみたいに抉れてたけど、まぁ生きてるなら問題無しということで俺は引き上げた、傷はあのバカが治すだろうしな。
因みに俺の目の前でバラバラになった女の遺体は燃やして埋めた、死ねばみんな仏って言葉もあるしな。
まぁ、なんか燃やして埋める時に周りの皆から妙な目で見られてたのが気掛かりだったけど、そこはまぁ大丈夫だろう勝手に納得しておく。
そんでまぁ……なんて言ったら良いんだろ、まぁそこからシドの姉さんは王都にある魔剣士学園に入学する為に家を出た、家を出る時にシドに何かしたら殺すと脅しも掛けられた…なんでそれを俺に言うの?
まぁ、そんなこんなで時間が経って、その内に俺達もその魔剣士学園に入学することになった。
ん? ざっくりし過ぎ? 仕方がないやん特に話すようなこと無いんだから。
よしんばあったにしてもあれやぞ? なんかデカい龍みたいな奴と戦ったくらいである、正直な話をしてしまうと不死身なだけでシドより弱かったから特に思い出に無い、龍を名乗るなら強さのレベルをもうちょい理不尽になさい。
まぁ、そんなこんなで俺も15歳になって、魔剣士学園に入学したというわけなのだ…そして悲しいかな、入学して以降特にこれと言った出来事は無かったのである。
無い、本当に何も無い、あまりに何も無さすぎて誰にも認識されていないのではないかと言わんばかりに影が薄い、そのせいでシドに嫉妬ないし羨ましがられるレベルで影の薄い生活を送っていたのである。
友達も作った、成績もそれなりに良い、教師からの覚えも悪くは無くなんならそれなり以上には頼られたりもする…が、しかし、それはそれとして影は薄い。
何故だろうか…だなんて、そんな考えるようなことでもない、単に剣士としての実力が無いから目立たないというだけの話なのだろう。
成績は多少上、教師からの覚えも悪くはないが魔剣士としての能力は微妙、突き抜けた箇所も無ければ秀でた能力もない、あまりに模品的で一般的なモブ生徒…少なくとも、それが他者から見た今の俺はそういう存在だった。
「───代わってよ」
「───やだよ」
何処か不満そうにそう言うシドに対して俺は半ば即答気味にそう言葉を返す、二人揃って何処ぞの飯屋で肉やら何やらを突っつきながら頬をムグムグと動かしながら、ふとシドは唐突にずるいよ、と俺にフォークを向けた。
「僕はこんなに苦労してるのに…君も少しは苦労したら?」
「お前の苦労の大半はお前自身の自業自得が大半だろうが、それに俺は俺で苦労してるっつーの」
言いながらモグモグと飯を食べる、美味しいか美味しくないかで言えばまず美味しいの部類に入るのであろうものを口に運びながら、俺は呆れたような目付きでシドへと言葉を投げかける。
「王女様に告白してOK貰えたんだって? …お前が一番望んでなさそうな展開じゃないか、何をどうしてそうなったよ」
「そんなの僕が聞きたいよ…あぁ、折角築き上げた僕のモブ生活がぁぁっ…」
何処かガッカリしたように、頭を抱えるような声色でそんなことを喚く親友の姿に俺はため息を吐き出しながら飯を口に運ぶ、肉汁が美味しい。
…最近、何やら何処ぞのポッと出の男が麗しの王女殿下を射止めただとか、分不相応だとか弱みを握っただとか…兎にも角にもそんな噂が流れていることは知っていたし、気になりもしたから調べもした…結果、この馬鹿に行き着く。
何をどうして告白することになったのか…罰ゲーム告白というやつか、それとも単に告白してからわざと振られることでモブとしての段階を上げたかったのか…何方にせよ、どうしてこうこいつは…と、そう思わざるを得なかった。
擬態そのものは出来ているのだ、誰からも注目されずただそこにいるだけのモブという意味では寧ろ完璧に近い…ただ、そこにこいつ特有の美学が付け加えられるとかなりの確率でそれが明後日の方向へと進む。
モブの美学という良く分からない意味不明なこいつ特有の流儀…その一つとしてかつて披露された兎にも角にも相手にボッコボコにされるという傍から見たらそれはもう酷い代物…それが逆に相手からの関心を引くことになることにどうして気が付かないのか。
前もそうだった…こいつ曰くのモブ式なんとか奥義の練習として盗賊を相手にしていた時のことだ…偶然、助けに入る形で襲われていた馬車の連中にそれを見られたことがある。
結果、シドはそこの娘さんに盛大に気に入られた…シドは何故にとか思っていたのかもしれないが、そりゃそうだろとしか言いようが無い。
だって何度斬られても何度殴られても、何度痛めつけられようと向かってくるのだ…背後にある馬車、つまりは自分を守ろうとその身を張る少年の姿を誰が嫌いになれよう、誰が無関心を保てよう。
何度斬られても立ち上がる、何度痛めつけられてもその剣を取りこぼさない…傍から見たそれは単なる不屈だ、絶対的な意思の強さから生まれた百折不撓を誇る不屈の剣士だ…多分、見かねた俺が途中で割って入らなかったら、きっと相手さんが逃げ出すまで続けていたと思う。
こいつは気がついてなかったかもしれないが、相手さんの表情はそれはもう傑作だった…自分より遥かに弱い相手にジリジリと追い詰められる、何で倒れないと言いたげなその顔は有利さを感じさせない…正直見ていて面白かった。
まぁ…あの時は俺がそこいらの人間で試してみてはどうかとかそんなことを言ったせいで引き起こされた事変だったから、アイツだけのせいとは到底言えないが…それでも、こいつの美学はやりようによっては主人公のソレだということをいい加減に理解して欲しいとは思う。
今回の一件は一体何方なのか…こいつの美学が爆発した結果として告白を受け入れて貰えたのか、平凡なこいつに逆に惹かれてしまっていたのか…それとも単に都合の良い男避けとして使う気なだけのか。
その何れかにせよ、こいつは妙な所で人を惹きつける…ひょっとしたら、その王女様はその内俺達の仲間になるか…或いは本当にこの馬鹿に惚れてしまうのかもしれない…まぁ、どっちにしろ俺は困らないのだが。
何時の間にやら調子を取り戻し、美味しそうに食事を食べ始める前世来の友人の姿を見て、俺はふとしたように笑みを溢すのだった。
どうしてこうなった。
深夜の王都、響き渡る轟音に無数の悲鳴…何かを切り裂く音に続いて響く何かを叩き潰すような音が辺りに響く。
死体が俺の側を転がっていた、辺り一面血だらけだった…そして、それを成し遂げてみせた怪物。
白い髪に人とは思えぬ程の大きな身体、鋭く尖った爪に幾ら斬られても突かれても関係無いと言わんばかりに再生してしまうその身体…喚くように、獣ように、ただ吠えて吠えてを繰り返す文字通りの化物……それが、何故か、どうしてか───
「すぅ…すぅ…」
小さく寝息を立てながら眠る一つの影、穏やかな表情を浮かべながら俺の腕の中で静かに鼓動を奏でるその少女は…つい先程まで化物であったはずの存在だった。
…いや、言い訳をさせて欲しい、俺だってこんなことになるとは思ってもみなかったのだ。
最初は単なる同情だった…露骨に人体改造みたいなことをされた跡があったし、何処からどう見ても魔力暴走を引き起こしている状態でもあったから、可哀想だと思ってしまったのだ。
叫び喚き散らす声も何処となく耐えきれない激痛に悲鳴を上げているように見えた、どうしようもない絶望を叫んでいるように思えたのだ。
だからせめてと思った、せめて痛み無く眠るように終わらせてあげようと思った…だから荒れ狂っていた魔力を安定させて、そこから更に痛みを発していた原因のモノを取り除いたりと色々としたのだ……そしたら、なんかこうなってた。
降り注ぐ雨が辺りの血を流す、未だにすぅすぅと寝息を立てる少女の…衣服を纏わない血色の良い肌を晒すその少女へと俺は布を被せながら、大きくため息を吐き出した。
本当に、どうしてこうなるやら。
背後に降り立つ騎士団の気配、そして俺の目の前に降り立ったアルファの姿を見て、俺はなんとなくそう思った。
陰実自体久しぶりだから何を書けば良いのか分からぬ。
化物について
シン的には助けるつもりじゃなくて痛みも苦しみも感じさせない安楽死的な感じで殺すつもりだったが、その準備段階で治ってしまった…なんで?(そこはかとない疑問)