青の彼方へ   作:微塵切られ

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初投稿です


墜落

UC0096、ラプラス事変という話があった。

それは地球を、宇宙(そら)を巻き込み、いずれは忘れられていくだろう。

その時生まれた暖かい虹は、人が起こした奇跡そのものだった。

そして、それもいずれ……

これは、その虹の光の中心にいた、ある少年に纏わる物語…

その、些細でけったいな、長い長いプロローグの話。

人はそれを、ブルーアーカイブ(青春)と呼んだ

 

 

─────────────────

 

「……………」

 

暗い意識が目を覚ます。

風を切るような感覚が、段々と呼び覚まされていく。

重い瞼をこじ開けると、眩しい光が目に刺さった。

 

「……………?」

 

そうしてはっきりと覚醒した己を確認し、目の前の現実に目を向けると……

 

「……うわあああぁぁぁ!!」

 

青い空を切って、茶色の地面に向けて顔面から落下していた。

身体を振り回したりしても重力に抗うことはできず、ただ落下していくのみ。

まっすぐ地面に落ちていきながら、ただ毒づくことしかできない。

 

「くそっ…寝ていたんじゃ無かったのか!?」

 

自分の言う通り、自分はついさっきまでソファーで横になっていたはずだ。

確かミネバと一緒に外を歩いていたのに疲れて、そのまま熟睡していたのだ。

回想している間にも、重力は自分を地面にキスさせようとしてくる。

 

「くっ…」

 

もう地面はあと数十メートルまで来ている。

このまま墜落死を待つしかないのか?

 

「……あれ?」

 

何か…違和感を感じる。

 

(俺の声…こんなに高かったか?)

 

目が覚めてから何度か発した声に、まるで自分のものでないかのような感覚を覚える。

身体を見下ろして(見上げて)みても、馴染みのあるパイロットスーツや隊服でもなく。

ただ、それをはっきりと見ている時間も自分には残されていない。

 

「……この感覚…」

 

地面までは後数メートル。

不意に、自分の心の中に何かを感じた。

それは、いつか虹の中で感じた暖かい感情。

もし…まだ()()が自分の中にいるとするのなら。

そう結論付け、大きく息を吸った。

肺に乱暴に空気が入って咳き込みたくなるが、今は我慢。

 

「……ユニコオオォォン!!」

 

そして、轟音と共に砂埃が舞い、少年(少女)はこの大地に降り立った(激突した)

 

この日、アビドスには新たなる歴史が刻まれることになる。

その内のひとつは、この男…

バナージ・リンクスが、キヴォトスに生を受けた日として。

─────────────────

 

地面に激突した後、なぜか怪我がひとつも無かったのですぐに体勢を立て直す事が出来た。

周囲には砂埃が舞っていて、呼吸をする度に咳き込みそうになる。

それはいずれ落ち着くだろうとして、現状を把握することにした。

 

「服は…着ていたものじゃない」

白色のオーバーサイズのパーカーに、インナーのシャツは鮮やかな赤色。

スカートは白と赤の縦ストライプ柄。

 

「…あんまり恥ずかしく無いんだな、スカートって」

 

素足を覆う靴も白と赤で、全身が見覚えのある色で包まれていた。

あとは、腰にホルスターから下げられていた銃。

右手でそれを握ってみると、確かな重さを感じた。

ホルスターから外して両手で担いでみると、どこか懐かしい。

 

「ビーム・マグナム…」

 

明らかに、かつて白色の一角獣が使用していた銃だ。

そのパイロットであったから、この見た目も馴染み深い。

右手でトリガーを握り、左手で銃身側面に立てたグリップを握り締める。

そうしてトリガーに指をかける。砂埃の向こうに誰もいないといいのだが…

 

「ビームマグナムを…使います!」

 

誰にでもない宣言をして引き金を握ると、想像よりずっと強い反動が両腕を襲って……

 

カン!!

 

と想像もしなかったような銃声が耳に刺さった。

 

「ビーム・マグナムじゃないのか?」

 

銃弾が砂埃を巻き込んだのか、前方の視界が晴れる。

そうして見えた世界は…

 

「…ここは、どこのコロニーなんだ?」

 

砂漠そのものだった。

─────────────────

 

周辺を歩いて分かったことが何個かある。

ひとつ、言語が分かること。

砂漠に突き刺さるように立っていた廃墟の中に砂を被った雑誌があったのだが、それを問題なく読むことができた。

ふたつ、ここは宇宙世紀ではないこと。

雑誌に並べられていたのは聞いた事の無い地名ばかりだが、俺の立っているこの世界が()()()()()と呼ばれていることは分かった。

俺はこのキヴォトスで生き抜いて、いつか元の世界に帰らなくてはならない。

みっつ、俺はなぜか女になっていたこと。

スカートを履いていることに羞恥していないのも、女性の感性が無意識にあったからだと思う。

体つきがそこまで変わっていないことは安心した。

 

「早くこの砂漠を抜けないと…」

 

前にもこんな風に砂漠を歩いたことがあったが、その時は1人じゃなかった。

食料がある訳でもなく、消耗はいずれ命を奪うだろう。

異世界に来てまですぐに死ぬ訳にはいかない。

食料を求めてさ迷っている内に、ある程度綺麗な建物を発見した。

 

「あれは、校舎…?」

 

俺が通っていた所ほど大きくないが、それは確かに学校だった。

手入れがされている痕跡もあるし、人がいるかもしれない。

 

「待ってて、オードリー…!」

 

(俺は彼女を託されたんだ。こんなところで朽ちる訳にはいかない)

 

意気揚々と建物に向けて歩みを進める。

少女(少年)は、こうしてこのキヴォトスを取り巻く破滅の物語に足を踏み入れるのだった。




需要があったら続きます
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