青の彼方へ   作:微塵切られ

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3話です


不意

もぐもぐとスティック状の食べ物を咀嚼する。

ネエ達から食料を分けてもらって、腹の虫を収めることに成功した。

 

「ご飯まで、ありがとうございます」

 

「礼なんていいさ。私達で消費するには多い量だったし」

 

ヘルメットの下にガスマスクを被っている彼女の表情は分からないが、恐らくは嘘を付いている。

バナージは聡明で、NT(ニュータイプ)だったから分かったのだろうか。

 

「あんた、バナージ...だったか。服からしてそれなりに余裕はあったんだろ?どうしてこんな不良の溜まり場に来たんだ?」

 

「.......分かりません。気づいたらここにいました」

 

嘘は言っていない。気づいたらここに来ていたのだ。

 

「ふぅん...ま、アタシ達とつるむのも悪くないぜ?」

 

「とはいえそろそろ作戦の時間ですよ、ネエ」

 

「おっとそうだったかトラよ」

 

ネエはガスマスクを右手で掴んで、外した。

その素顔は、卑屈で、活発で、そんな雰囲気を湛えた眼差しをしていた。

 

「さ、行こうかバナージ」

 

「アビドスを...襲撃する...」

 

ネエはにこりと笑い、ガスマスクを着け直した。

食べ物を世話になった身だ。たとえそのような行為でも、最大限やれることはしよう。

そうバナージは意気込み、深呼吸した。

 

「こちらアルファ。作戦を開始する」

 

ウシが懐から取り出したトランシーバーで通信をする。

銃を持った少女達は、砂上の楼閣に向けて進軍を開始した。

─────────────────

 

そして、いよいよ校舎の姿が見えるまで近づいてきた。

 

「これが、アビドス......」

 

「昔はマンモス校と言われるまで大きかったんだが、今じゃこのザマだ」

 

砂に浸食されつつある小さい建物は、閑古鳥が鳴くような風体を醸し出している。

 

「こんな所を襲って、何の意味があるんです?」

 

「さあな。いくらネエ様でも分からないことぐらいある」

 

「それと三次関数の計算もね」

 

「うっせーぞウーちゃん、お前のアイス食べてやる」

 

騒がしく、楽しく会話している彼女達は、本当に自称する程の不良なのだろうか?

なんて思い始めて来た所に、ウシの声が聞こえた。

 

「こちらアルファ、目標地点に到達。11:30の五秒後に作戦を開始する、オーバー」

 

「ネエさん、今の時刻って?」

 

「あんた、時計持ってないのか...11:28だ」

 

ネエが自身の左手首に視線を落とす。

作戦開始までの時間はあと二分ほど。

今のうちに武装の確認だけしておこうと思い、自身の銃を手に取った。

 

「うん........動作に問題は無さそうだ」

 

「そうだ、これやるよ」

 

そう言われ何か筒のようなものを投げられたので、慌てて右手で受け取る。

 

「フラッシュだ。少しは役に立つと思うぜ」

 

「トラさん...ありがとうございます」

 

「さ、11:29になったぞ。そろそろ突っ込む」

 

ネエさんの一声でみんなの気が引き締まるのを感じる。

数秒後、バナージ達は正門から校舎に向けて走り始めた。

 

─────────────────

 

「あっ」

 

すんなり校舎に侵入することができたので、校内の制圧をしようと廊下を歩いていたところ、アビドスの生徒と思わしき人物と出会った

金色の髪に、柔和な顔立ちをした彼女は、じっとこちらのことを見つめている。

 

「こ、こんにちは...」

 

彼女が担いでいる銃はガトリングガン。一対一なら普通のライフルのこちらが有利だろう。

しかし、彼女の只者ではない気配が、バナージにビーム・マグナム擬きを使わせるのを躊躇わせていた。

 

「こんにちは〜、私は十六夜ノノミと言います。よろしくお願いしますね♧」

 

「よろしく......」

 

今から、目の前の女の子を撃たなくてはならない。

しかし、子供に銃を向ける罪悪感は、バナージから引き金を引く意思を削いでいく。

 

「アビドスに何か御用ですか〜?」

 

「い、いえ、その......」

 

しかし、作戦は作戦。一食の恩義を返さなくては。

 

(手足だけを狙って、無力化する。それなら問題ない)

 

バナージはできる限りの速さでビーム・マグナムを抜き、ノノミと名乗った少女の右足を撃ち抜こうとした。

しかし。

 

「っ!」

 

「もしヘルメット団の仲間なら、容赦しないですよ~?」

 

バナージが遅すぎたか、相手が早すぎたか。

いつの間にか踏み込んできたノノミの匂いが感じられる程に接近され、懐に入り込まれていた。

こちらのビーム・マグナムを持った右手はまだ相手を捉えていないのに、相手のガトリングガンの銃口はこちらの腹を狙うばかりか、銃身が身体に触れている。

右脚でガトリングを蹴り上げ、相手の狙いがぶれたと同時に左脚で地面を蹴って飛び退く。

 

「あらあら~♧」

 

「ごめん...!」

 

ビーム・マグナムの狙いは、変わらず右足。

引き金を引けば乾いたような銃声と、肩を貫く反動を感じる。

 

「その銃は、スナイパーライフルですかね~?」

 

しかし、当たらない。

左脚を軸にくるりと時計回りに回転され弾は避けられた。

 

(残弾はあと三発...一撃必殺でいかなきゃこっちが負ける)

 

アビドスの生徒が何人いるか分からないが、いくら擬きであったとしても得物の火力に自信はある。

 

「今度は、こっちから行きますね?」

 

「くっ...!」

 

相手がガトリングガンを腰だめに構えたのが見える。

そして、バナージは......

 

「やあああぁぁっ!!」

 

走り出した。

モーターが回る音が聞こえ、銃弾の雨あられがバナージに向けて降り注ぐ。

 

(一秒、一秒だけでも時間を作れれば!)

 

その時、頭に鈴の音が響く。

バナージはそれを感じるや否や全力で姿勢を倒し、廊下に置かれていた机を蹴っ飛ばして横倒しにした。

 

「あら~?」

 

机に飛び込み、その裏で地面に散見していた砂に手を突っ込む。

当然身を隠している机に弾丸が集中し、机の天板がチーズのようになっていく。

しかし、一秒は稼げた。

 

「そらっ!」

 

机の裏から筒をノノミに向かって投げる。

当然、ノノミの意識はそちらに向かう。

 

「グレネード?」

 

しかし、それは空中で起爆することはなく。

接地すれば、それは()()()

 

「っ!ダミー!」

 

バナージが机の裏で作っていた砂でできたグレネードのダミーは、その効果を覿面に発揮していた。

バナージは当然その隙を見逃さず、ノノミの懐に潜り込む。

ビーム・マグナムのマズルをノノミの腹に当て、バナージは囁く。

 

「武器を捨てて投降してください。あなたを傷つけたくない」

 

「......分かりました~♧」

 

ノノミはすんなりとガトリングガンを捨て、その場で両手を上げた。

その様子に、バナージは少し呆気なさを覚えた。

 

「もう少し抵抗すると思いましたが......」

 

「そんな必要はありませんから。だって.....」

 

また、鈴の音。

感じた気配は後ろから。

バナージが勢いよく振り返ると、そこには二つのシルエットが立っていた。

 

「“ノノミ、大丈夫?”」

 

一人は、背の高い大人の男性。

 

「うへ、大事な後輩ちゃんに何をしてるのかな?」

 

一人は、小柄でピンクの髪色をした少女。

 

「あなた達は......」

 

「“はじめまして、私はシャーレの先生。よろしくね”」

 

「丁寧だね~、流石は大人って所かな?」

 

バナージは丁寧だ。向けられた挨拶は返してしまうものである。

 

「こ、こんにちは」

 

「“二つ質問があるんだけど、いいかな?”」

 

バナージには、ここから踵を返して全力で逃走するプランもあった。

しかし、先生と名乗る男の傍に立っている少女が放つ気迫は、決して逃がさないという剥き出しの敵意を感じた。

よって、バナージは大人しく応答に応じることにした。

 

「“一つ。ノノミは無事かな?”」

 

「もちろん、元気一杯ですよ~♧」

「増援が来るのを分かって、あっさりと投降した...」

 

バナージの推測は当たっている。

ノノミの笑顔を見て、バナージもそれを確信していた。

 

「“二つ。彼女達に見覚えは無い?”」

 

そう言うと、先生は懐からタブレット端末のようなものを取り出した。

 

「“こっちにおいで。攻撃はしないよ”」

 

「わ、分かりました」

 

依然として小柄な少女からの敵意を感じるが、一旦は先生の言葉を信じることにし、先生の元まで歩み寄る。

 

「“ここに見える二人...どっちかに見覚えは無い?”」

 

そこに映し出されていたのは、傷ついて床に伸びているウシとトラだった。

 

「これは...っ」

 

「“でも、君はヘルメットを被っていないね......”」

 

バナージの驚きに、先生は疑問で返す。

 

「“もしかして、脅されて協力させられてたり...?”」

 

「うへ~、そうだとしたら見逃せないね?」

 

何やら彼女達が疑われているので慌てて弁明する。

ちなみに、バナージは既に銃のトリガーから指を外していた。

 

「違います!彼女達はいい人で...」

 

「“でも、学校を襲われた”」

 

先生の言葉に、バナージは何も言えなかった。

たとえいい人であったとしても、テロリストはテロリストで、敵は敵で。

そんなような人を良く知っているバナージだから、何も言い返せなかった。

 




ゆーえーとやらが1000にいきそうです
みんなのおかげだ!
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