TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「登場!二号ライダー!」

 ペンギンゴレイムを討伐してから二日後。

 

 

「また事情聴取されましたわ……」

「お疲れさまですヴェーセル様」

 

 

 庭園にて、ヴェーセルはテーブルに突っ伏していた。

 ちなみに、ジニーは聴取が本当にストレスだったらしく、寝込んでいる。 

 基本的に、彼女は人と関わらない。

 ヴェーセルや他の直属メイドとは会話することがあるものの、それすら週に一度あるかどうか。

 あとは王立図書館の司書さんくらいだ。

 そんなだから、聴取を終えてかなりげっそりしており、気の毒だった。

 

「一応、容体は安定しているみたいですから、一日ゆっくり休めば動けるようになると、お医者様が」

「それならよろしいのですが。またあとでワタクシも見舞いに行きますわ」

「フッ、それは大変だ。お大事にと伝えてくれたまえ」

 

 

 ルーナの紅茶を飲みながら、一息ついている。

 王城ほどではないが、グラスホッパー家の庭園もそれなりに広い。

 

 

「今回は簡略化されましたし、次回以降はもう報告書のみでよくなったようですけれど、最初からそうしてほしいですわ」

「仕方がないさ、王都に、それも貴族街にゴレイムが出るなんて建国以来一度もなかったんだからね」

 

 

 テーブルをはさんで、ヴェーセルの前にいた(・・・・・・・・・・)男が、口を開いた。

 

 

「改めて久しぶりね、ローグ」

「フッ、そうだね、お久しぶり、ヴェーセル」

 

 

 綺麗な顔立ちの男だった。

 腰ほどまである銀髪を後ろで一つくくりにし、端正なマスクには不敵かつ気障な笑みを浮かべている。

 瞳は晴れた空を連想させる青色であり、鋭い眼光は鳥を連想させる。

 白を基調とした服装も、紳士的でありながら

 それらの様相を総合した評価を下せば、中世を舞台にしたミュージカルにでも出てきそうな男、というのが適切だろうか。

 

 

 彼の名は、ローグ・ウッドペッカー。

 ヴェーセルの旧友であり、彼女と同じ立場にあるいわば同盟相手でもある。

 ウッドペッカー家は伯爵位を得ているが、ローグは伯爵の地位を継ぐことはできない。

 仮面騎兵『ローゼイド』の資格者である彼には、ヴェーセルと同様生殖能力がないからだ。

 いわば、今は同僚と言えるかもしれない。

 

 

「そういえば、どこまで行ってきたんですの?」

「フッ、ああ、海洋都市まで行ってきたんだよ。魚型のゴレイムを討伐してきたのさ」

「お互い、大変ですわよねえ」

「ははは、慣れればどうということはないさ」

 

 

 ローグとヴェーセル、この二人には仮面騎兵であること以外にも、共通点がある。

 

 

「お土産ですよ」

「わあ!お刺身ですわ!」

「まあ、同郷のよしみってことで」

 

 

 ルーナが淹れた紅茶を、ティーカップを傾けて口をつける。

 ヴェーセルは、紅茶にミルクや砂糖は入れない。

 それは、紅茶の風味を損ねるからだ。

 前世では紅茶を飲むということも滅多になかったが、今は違う。

 というか緑茶などが手に入りづらいので、刺身と紅茶を合わせることも珍しくない。

 

「うん、今日も最高においしいですわ」

「あ、ありがとうございます!」

「フッ、確かにそうだね。このミルクや砂糖も極上だ。これがあるからここでの茶会はやめられない。いいメイドを持ったね、ヴェーセル」

「痛み入ります」

 

 

 うやうやしく、ルーナは頭を下げた。

 茶会に出せるメイドはルーナしかいない。

 ジニーは人見知りが激しい性格だし、もう一人のメイドは、他にやることがあってこの場には来れない。

 あと、二人とも紅茶を淹れるのが恐ろしく下手だ。

 

 

「本当に、貴方の言うとおりになってしまいましたわね」

「だから言ったでしょう?」

「この世界が、ゲームだなんて初めていわれた時は信じられなかったのですけれどね」

「確かに、私も今でも信じたくはないですよ」

 

 

 それは本当にそうである。

 ローグいわく、この世界は生前の「彼女」がかつてプレイしていた乙女ゲームである「ドラゴンライド・アルブヘイム」というゲームに酷似しているらしい。

 

 

 そしてヴェーセル・グラスホッパーは、主人公キャラクターであるアメリア・ローズマリーに対して何かと突っかかり、やがては悪役令嬢と呼ばれ疎まれ憎まれるキャラクターであるらしい。

 最終的には、正体不明の力に取りつかれて闇落ちし、死んでしまうのだとか。

 ついでに言えば、ローグ・ウッドペッカーもまた闇の力に取りつかれて闇落ちして死んでしまうらしい。

 

 

「けれども、我々がゲームのキャラクターであるという前提で、我々は手を組むことを選んだ。お互いが死んでしまうという未来を変えるためにね」

 

 

 その話を聞いてから、ヴェーセルは彼女なりに奮闘してきた。

 その結果、アメリアはほとんどフィリップに接触することなく、着々と結婚できるように取り計らっていった。

 まあ、それもつい最近になってヴェーセルが仮面騎兵ヒールになったことですべてが頓挫してしまうのだけれど。

 

 

「まあ、何もかもゲームの世界観通りというわけではないんだよね。君が仮面騎兵を手にするのは、婚約を破棄された後のことだし」

「ああ、闇落ち云々ってのはやっぱり仮面騎兵のことなんですのね」

 

 

 言いたいことは、わかる気がした。

 仮面騎兵に変身するとき、蛇のような、あるいは蔓のような何かが体内に侵入していく感覚がある。

 さらに言えば、仮面騎兵についてはほとんど知らないにもかかわらず、シェリアは動きまわり戦い、ヒールの力を使いこなすことができている。

 まるで、それが常識であるかのように。

 闇落ちと言われれば、それはそうなのだろう。

 少なくとも得体のしれない力であることは確かだ。

 

 

「仮面騎兵、貴方の仮説通りということを実証する羽目になりましたね」

「うん、仮面騎兵は」

ワタクシたち(・・・・・・)のような、転生者にしか適合しない(・・・・・・・・・・・)

 

 

 二人には、貴族であることや仮面騎兵の資格者であるということ以外に、もうひとつ共通項がある。

 ヴェーセルや、ローグは前世の現代日本の記憶を引き継いで転生している。

 彼いわく、他の仮面騎兵たちも前世の記憶を有しているのだとか。

 まあ、ヴェーセルはローグ以外の転生者と会ったことはないのだが。

 

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