TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「ゴレイムの正体」

「アナタは最大火力を出せない、つまり、ワタクシがぶち壊さなきゃならないってことなのですわよね」

「そうなるね、お任せするよ」

「じゃあ、先日獲得した形態をお見せいたしますわ!」

 

 

 ヴェーセルが使うのは、先日「一撃でストーンゴレイム撃破」の条件を達成したことで解放されたもの。

 この状況に適した装備をまとい、打破するために使う。

 

 

『Punching chimpanzee』

 

 

 音声とともに、ヒールの体が変化する。

 天から降りた猿型の覆面を被り、さらに両腕にはゴリラのようなガントレットが取り付けられる。

 左拳を左顎に添えて、右拳で右の腰をホールドして、叫ぶ。

 

 

「さあ、悪役劇場、第二ラウンド開幕ですわーっ!」

 

 

 巨漢よりもなお二回りほど大きな、ゴリラのような拳をふりかざして。

 

 

「うおおおおおおおおお!」

「ぎゃっ」

 

 

 拳を嘴に打ち付けた瞬間、嘴に罅が入った。

 『猿』は腕の防御力とパワーに特化している形態である。

 それとは対照的に、スピードは遅い。

 それこそ、初期形態よりもスピードでは劣っている。

 仮にペンギンや鶏が相手であればたやすく逃げられてしまっていただろう。

 だがしかし、ペリカンゴレイムは既に足と翼をもがれている。

 ゆえに、殴ることができる。傷つけることができる。

 さらに言えば、ローゼイドの炎熱攻撃によって嘴が脆くなっているのもあるのだろう。

 小さな罅が徐々に広がっている。

 

 

「ヴェーセル!そろそろ決めろ!」

「わかっておりますわ!」

『Exseed charge――Gong Kong』

 

 

 仮面を右のガントレットに装備し、構える。

 拳を掲げて、必殺の一撃を打ち放つ。

 

 

「せいやーっ!」

「ぎゃああああああああああああっ!」

 

 

 嘴が砕け、更に罅が全体に広がり。

 内部にあったコアに、拳が当たる。

 嘴が、頭骨が壊れて、コアすらも砕けていく。

 ゴレイムは崩れて、壊れて土に還っていく。

 

 

「P、ペリドット」

「は?」

「え?」

 

 

 ただ一言、残してゴレイムはボロボロと崩れていく。

 残されたのは、変身が解除されてドレスとタキシードに戻ったローグとヴェーセルのみ。

 

 

「そういえば、断末魔が人の言葉ですわね。アイスだとかペリドットだとか。何なんでしょう?」

「え?」

「今の、ヴェーセルにも聞こえていたのか?」

「え、ええ、そうですけど」

「じゃあ今のは聞き間違いではない、ということだね」

「…………?」

 

 

 ヴェーセルには、ローグが何を考えているのか全く分からない。

 元々何を考えているのかわからなくなることはあった。

 ただそれは、元々『ユグドラシル・アルブヘイム』をどの程度やりこんでいるかの差だったはずだ。

 

 

「アイスだのなんだのはどういうことだ?」

「どういうことって、今まで倒してきたゴレイムの断末魔ですけど」

 

 

 あの場に、ローグはいなかった。

 だからわからなくても無理はないなと、疑問にこたえるべく回答したのだが、

 

 

「そういう、ことか」

 

 

 どういうわけか、更にショックを受けたようだった。 

 ふらふらとローグがへたりこむ。

 

 

「どういう、意味ですの?」

「ずっと不思議には思っていた」

「え?」

「ゴレイムのコアが、どこから来るのか」

「何の話ですの?」

「近くで、私はゴレイムと戦ったことがなかったんだよ。いつも遠距離から魔法を打ち放つだけで、こうやって断末魔を聴くことなんて一度もなくて」

「何を、言っているんですの?」

「人の言葉を話せるのは、人しかいない」

「オウムとかもいると思いますけど」

「そもそも、どうして気づかなかったのか。ペリドットなんて言葉はこの世界に存在しない」

「はあ?」

 

 訳が分からなくなった。

 いったい何を言っているのか、何を言おうとしているのか。

 

 

「このゲームにおいては橄欖(かんらん)石と呼ばれている。ペリドットなんて言うテクストは存在しないんだ」

「言われてみれば、聞いたことがないですわね。あら、ではどうして」

 

 

 金剛石だとか、紅玉だとかみんな和名だったはず。

 定期的にフィリップが送ってきていたので記憶に新しい。

 オウムとは、わけが違う。聞いたことがないはずの言葉を発している。

 

 

「どうやって、その言葉を取得したのか、私のような転生者と接触したのか?いや違う。こいつは生まれたばかりだった、学習する余地はない、最初から知ってたんだ。生まれた時から、生まれる前から」

「つまり」

「ゴレイムの正体は、元人間だ」

「え?」

 

 

 思いもよらぬ結論に、彼女が目を見張る。

 

 

「人の魂が、土の肉体を得て、あるいは土を肉体に変えた結果が、ゴレイム。人ばかり攻撃して捕食しようとするのは、人に戻ろうとしているのか?だとすれば高位のhゴレイムが人に近い見た目なのも納得ができる」

「それって」

「ああ」

 

 息を深く吸い込んで、ローグは言葉を吐き出す。

 

 

「ゴレイムは私達と同じ、元現代日本人の転生した姿(・・・・・・・・・・・・)だ」

 

 

 ヴェーセルやローグ達にとって、現在の立ち位置を根本的に揺るがしかねない言葉を。

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