TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「戦うモノの運命」

 先日、ペリカンゴレイムを倒したヴェーセルとローグ。

 二人は、とある部屋の扉の前にいた。

 ただの扉でありながら異様に大きく、金や宝石などで華美な装飾がなされており、美術品と言われても違和感はない。

 ここで、とある人物からの入室許可が出るのを待っている。

 

 

「三時間待ちか……」

「仕方がありませんわ。忙しい方ですし、何よりいうまでもなくワタクシたちより格上の方。ことがことだけに必死になって時間を作って下さった、というのが本当のところでしょうし」

 

 

 やがて、奥から「入っていいよ」と声がした。

 いかんなる手段によってか、扉の向こうにいるのがヴェーセル達だと知っているらしい。

 扉を開け、中に入った。

 豪奢な家具がずらりと立ち並ぶ中に、一人の男がいた。

 

 

「お時間を取らせてしまって、申し訳ございません、陛下」

「いや、構わないよ、楽にしてくれたまえ」

 

 

 ソファに優雅に腰かけて、紅茶を飲んでいるのは、レグルス・フォン・アルブヘイム。

 現在の国王であり、フィリップの父親であるため、つい最近婚約破棄をされてしまったヴェーセルにとっては気まずい相手でもある。

 しかして、それを特に何とも思っていないのか、悠然と何事もなかったかのように彼はたたずんでいた。

 

 

「失礼いたします」

「失礼いたします」

 

 

 レグルスの許可が出たため、ヴェーセルとローグはそれぞれ客用の椅子に腰かける。

 国王である彼の書斎。

 本来ならば、伯爵家に過ぎない彼らが入れるような場所ではないのだが、しかして彼らの能力と今の状況がそれを可能にしてしまっている。

 

 

「それで、今日は具体的に何について訊きたいのかな?捜査権を用いられれば私としても拒否できないからね」

「貴重な時間を割いていただき、感謝いたします」

 

 

 深々と、頭を下げる。

 捜査権は、仮面騎兵の特権である。

 ゴレイムに関する情報提供限定で、貴族や王族ですら仮面騎兵に協力しなくてはならないと定められている。

 

 

「王都のロックゴレイムは見つかりそうかい?」

「現状、学園関係者に擬態している可能性が高いと見ています。ストーンゴレイムが、セキュリティの高い学園に現れたので間違いないでしょう」

「セキュリティの高い王城関係者の線は?」

「それが、直近に王城で大々的なパーティがあったことで、結構な数の人々が王城に出入りしておりまして。貴族やその関係者に擬態していれば、王城に卵を仕掛けることは容易かっただろうと」

「なるほどね。それで、何が訊きたいの?」

「実は」

 

 

 ローグは、ゴレイムが人間だったのではという仮説を語った。

 驚くでもなく、彼は黙って聞いていた。

 

 

「まあ、そうだね、君達の想像通りだよ」

「はい?」

「正直に答えたよ。それは事実だし、僕はそれが事実だと知っている」

 

 

 仮面騎兵は、ゴレイムを殺しうる唯一の存在。

 ゆえに、ある程度の特権が与えられている。

 その一つが、捜査権。

 ゴレイムの討伐に寄与すると王に認定された場合のみ、憲兵や騎士団のような捜査がかのうになる。

 つまり、市民も貴族も全面的に情報提供に協力しなければならず、しなければ罪に問われる。

 ゆえに、だろうか。フィリップによく似た美麗な顔立ちを持つ国王陛下はあっさりと、認めた。

 ゴレイムは仮面騎兵については、ごく一部のものしか触れられない情報がある。

 それを管理しているのは、王族と仮面騎兵のみ。

 だから、彼に訊くのが一番確実だった。

 流石国王というべきか、とんでもない剣幕で詰め寄ったローグを受け流しつつ淡々と答える。

 

 

「転生、という現象があります」

「ええ、知っていますわ」

「……私たちがその当事者ですよ」

 

 

 というか、ローグやヴェーセルはそれを経験している張本人である。

 

 

「死後、魂が他の肉体に宿るという事象なのですが、霊魂自体はあちらこちらに散らばっているのです。それが認識できないだけで」

「それは、聞いたことがあります」

 

 

 この世界においては、魂というものが存在する。

 ゆえに、転生という事象さえも当たり前のように受け入れられている。

 実際のところ、そう珍しいものでもないらしい。

 転生者の割合は十万人に一人と言われる。

 ヴェーセルたちのいる王都の人口はおよそ百万だから、あと八人いる計算になってしまう。

 奇妙な現象ではあっても、ありえなくはない、程度。少々珍しい特殊な体質、で終わってしまう。

 酒の席での話題には使える程度でしかない。

 

 

「そして、人の魂と土より作られたのがゴレイムです。死んだ人の彷徨える魂を核として作られた仮初めの生命、それが彼らの正体です。人語を話すゴレイムがいるのも、ロックゴレイムが人に擬態するという習性も全ては彼らが元人間だからでしょうね」

「……なぜ、それが世に広まっていないのですか?」

「あなたなら、おのずと理解できるのでは?」

「…………」

 

 

 当然わかるだろうという顔をしたレグルスに対して、ローグは何も言えなかった。

 

 

「刃を鈍らせることなく、ロックゴレイムを倒してくださいね。仮面騎兵ローゼイド、仮面騎兵ヒール」

「…………」

 

 

 殺人を容認する言葉に、ローグは何も返せなかった。

 ヴェーセルも、特段反応しなかった。

 

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