TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「卵・殻・破・壊」

 以前、ゴミ捨て場の傍にあったものと同じだった。

 人の背丈より遥かに大きな『卵』がアルの言った場所にあった。

 

 

「今度はトイレ、ですか」

 

 

 二件の事件から、規則性のようなものが、見えてくる。

 人気のない、人に見られる確率が低い場所。

 ロックゴレイムは、目撃されることを恐れている。

 人に擬態しており、ただ一人にしか擬態できないがゆえに、誰に擬態しているのかを見られてしまうということを警戒しているのだ。

 

 

「本当に居ますのね」

「信じてなかった?私の能力」

 

 

 アルは、表情をさほど変えないままそっぽを向く。

 そんな姿もかわいいと思ったが、それについて言及している場合ではない。

 

 

「まさか、でも本音をいえば外れていて欲しかったとも思ってしまいますわね」

「そう。ならいい」

 

 

 アルは、満足そうにうなずいた。

 

 

「それで、どうするの?」

「卵を破壊しますわ。何もしないうちに」

「いいの?」

「ええ、残しておく意味もありませんわ」

 

 

 今この瞬間にも、卵が割れて暴れ出すかもしれない。

 すでに騎士団主導で避難は始まっているとはいえ、安全を優先するなら壊しておくべきだ。

 以前はリスクがあると判断してためらっていたが、今は状況が違う。

 一番ヴェーセルが恐れるべきは、この卵に入ったゴレイムと、元凶のロックゴレイムに挟み撃ちにされることだ。

 フィリップが最有力容疑者である以上、迅速に討伐する必要があった。

 

 

「アル、貴方は騎士団の皆さんに報告をお願いいたします。そのあと、安全なところにお逃げなさい」

「ヴェーセル、私は、んっ」

 

 

 首を横に振るアルの頭に手を置く。

 それだけで彼女の首振りは止まる。

 ヴェーセルには、アルが何を言わんとしているかはわかっていた。

 彼女はヴェーセルだけをおいて行きたくはないのだ。

 かつて自分が犯したと認識している罪と、同じことだから。

 

 

「アナタは、逃げなくてはなりません。人には人の役回りというのがございますわ。アナタにはゴレイムを察知するという役割がありこれからもそれを続けてもらいますの」

 

 

 だから生きなくてはならないのだと、ここは余計なリスクを冒さず引くべきだとヴェーセルは諭すのだ。

 合理的にはヴェーセル一人で対処するのが正しいから。

 感情的には、アルに生きて欲しいから。

 

 

「アナタは、自分だけが助かったと思っていませんこと?」

「そう、私はあの日私だけが生き延びた。あの時みたいなことはもう」

「アナタはもう既に2回もゴレイム探索に協力してくれています。アナタのやってきたことは無駄ではありません。無駄には、させません」

 

 

 頭に置いた手で彼女の銀髪をそっと撫でる。

 心地よい感触と、体温が手のひらを通して伝わってくる。

 

 

「だから、あとはワタクシに任せてくださいまし。これから先は、『悪役』の仕事ですわ」

 

 

 そういって、ヴェーセルは不敵に笑った。

 

 

「わかった」

 

 

 アルは、ヴェーセルから五メートルほど離れて、また彼女の方に向き直る。

 

 

「ヴェーセル、終わったらまた添い寝して欲しい」

「アルとの添い寝なら七日七番でも大歓迎ですわ!」

「お風呂入らないと臭くなるから七日は無理」

「あ、そうですわよね」

 

 

 現実的な反論にヴェーセルは面食らう。

 

 

「では、また」

「ええ、またですわ」

 

 

 アルは振り返らずに、騎士たちの誘導に従って走り去っていった。

 ヴェーセルは、髪についた『仮面』をバックルに装着して。

 

 

「変身!」

『Change――bind weed』

 

 

 『仮面』に触れて、紫のスーツと覆面を纏う。

 

 

「さあ、悪役劇場開幕ですわーっ!」

 

 

 口上を遠くまで、アル達がいるところまで届くように叫んでから。

 

 

「せいやあっ!」

 

 

 『卵』に飛び膝蹴りを打ち込んだ。

 

 




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