TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
校外学習から一週間。
ヴェーセルとローグ達の動きは速かった。
まず、ロックゴレイムに成り代わられている最有力容疑者であるフィリップを軟禁。
口実としては、新種の病にり患している可能性がある、ということを伝えた。
余談だが、毎日のようにヴェーセルやローグの元にアメリアから抗議の手紙が届いている。
そのすべてに、ヴェーセルは目を通しつつも無視している。
もしかしたらそれで悪評が立つかもしれないが、仕方がない。
悪役令嬢と呼ばれようと、それ以下の外道とそしりを受けようとも。
やるべきことをやると決めているから。
「これで、終わりですわね」
「す、すごいですね、ヴェーセル様。イクシードスキルを使わずに討伐するだなんて」
「いえ、これも騎士団の皆様との連携あってのことですわ」
フィリップを軟禁して何をしているのか。
それは、あちらこちらにいつの間にか仕掛けられていた『卵』の破壊である。
騎士団人海戦術で捜索したり、仮面騎兵の仕様を活かしていつも通りに探索をしたり。
何しろ、そもそもが二メートル以上の大きさの物体だ。
魔法で隠蔽されているでもないし、必死になって探せば発見すること自体はたやすい。
むしろ、これまで見つかっていなかったのが不思議なくらいである。
『卵』が消えたことで、ヴェーセルの変身も解除される。
「きっと、大々的な捜索をしていればもっと早く見つけられたんでしょうね」
「あの、あまりご自分を責めない方がいい、と思います」
「ありがとう、ルーナ」
とはいえ、あまり責めているわけでもない。
フィリップを幽閉してからというもの、かなり先んじて動けているという自負があるからだ。
ヴェーセルの傍ではルーナが、黒電話を抱えて通信を行っている。
魔量の供給さえあれば、屋外でも使えるタイプであるらしい。
もう少し軽量化できないのか、と思わないでもない。
「ヴェーセル様、ゴレイムが現れたと報告がありました」
「場所は?」
「は、はい場所は――」
ルーナが、騎士団から聞いた場所をヴェーセルに伝える。
こうして、次々と見つかり次第壊しているのだ。
「やはり、ですわね」
「ヴェーセル様?」
ヴェーセルの言葉の意味がよくわかっていないルーナが、どういう意味かと尋ねる。
「いえ、大したことではありませんわ。それより、現場の状況は?」
「孵化してしまったそうですが、騎士団が対処しているそうです。死者はゼロとのこと」
「さすがですわね」
騎士団というのは、王国内の武力組織である。
主に、武力による治安維持を担当している。
例えば、犯罪者を捕えたり、熊などの害獣が人里に降りてくれば、駆除したり。
ゴレイムの捕縛も、彼らの仕事の一つ。
ゴレイムに傷をつけることは、仮面騎兵以外には決してできない。
だが仮面騎兵の数は限られており、王国内すべての区域で即座にゴレイムに対応できるわけではない。
ゆえに、仮面騎兵が現れるまで、民衆の避難誘導やゴレイムの拘束をしてくれるのが、騎士団というわけだ。
それこそ、先日の孔雀ゴレイムもそうだったし、何より普段からヴェーセルとローグだけでは間に合わないところに先んじて救護や足止めをしてくれている。
それで犠牲者が出ているので、素直に喜べもしないのだが。
「ある意味、私達よりヒーローと言えるかもしれませんわね」
ヴェーセル達は今回がそうであるように遅れてくることが多い。
だから、全ての人々を守り切れるわけではない。
何しろ、「仮面騎兵」の数は国内全体でも数人しかおらず、初動では後れを取ってしまう。
さらにいえば、一体のゴレイムを仮面騎兵は倒せるが、巻き込まれた大勢の人間を、一人では守り切れないことも多々ある。
そんなときに避難誘導などをしてくれるのが騎士団だ。
討伐ならばともかく、守護や救助という意味では数や連携に勝る騎士団の方が優れている。
全員助けているとは言わなくとも、助かっている人間がいるのは間違いなく騎士団のおかげである。
「そういえば、アルは今どうしているのかしら」
「アルなら、ヴェーセル様のご指示通りにジニーと一緒に調べ物をしているようですが」
「学校には、行っていませんのよね?」
「ええ、最近はヴェーセル様がおひとりで通われておりますから、代理出席の必要もありませんし」
アルとジニーは、仮面騎兵とロックゴレイムについて調べさせていた。
ローグいわく、ロックゴレイムは今まで基本的に一対一で倒してきたらしい。
ただ、今回はそれに当てはまらない可能性が高い。
ゴレイムは、人を捕食した数だけその力を増すと言われている。
王都のロックゴレイムが捕食した人間の数は、判明しているだけでも百を下らない。
加えて、王城にゴレイムが発生する直前に、平民街で行方不明者が多発している。
このことから、ロックゴレイムは王都の平民街で数百人を食らい、そのまま貴族街に侵入した可能性があった。
異常なほどにまで強化されているであろうロックゴレイムは、ローグとヴェーセル二人で倒すしかない。
あるいはそれでも勝てるかどうか。
「それゆえに、少しでも情報が欲しいところですわ」
「ヴェーセル様、急ぎましょう」
「ええそうでしたわね。今足止めをしてくれている、彼らの努力を無駄にしてはなりません」
ヴェーセルは、駆けだした。
誰もが、騒動を終わらせるために全力を尽くしているのだ。
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