TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「奇襲作戦」

 全速力を以て駆け付け、現場にたどり着くと。

 

 

「うあああああああああああああああ!」

 

 

 重力魔法によって、体を地面にめり込ませ、雷の網によって動きを封じられている姿がそこにはあった。

 

 

「何だ、もう終わっているじゃないですの」

「とどめをさしていませんから、終わってませんよ」

「なんだか横取りみたいで申し訳ありませんわね」

 

 

 数十名の騎士たちがゴレイムの周りを取り囲んでいる。

 貴族がいるということで、ここら一帯の警備を強化していたのだろう。

 現れていたのは、パン工場の周囲だった。

 

 

「これは」

「何か」

「いえ」

 

 

 やはり、学校にロックゴレイムがいるというヴェーセルとローグの仮説は正しかったようだ。

 おそらくは、先日の校外学習でパン工場で卵を仕掛けた後になって、隠蔽するために劇場にあのゴレイムを仕掛けたのだろう。

 そして、やったのはフィリップであろうとヴェーセルは考えている。

 しかし、仕込んだゴレイムも孵化した後になって騎士団に拘束されてしまっているわけで。

 ローグを通じて、騎士団に警戒させておいた甲斐があったとヴェーセルは安堵する。

 同時に、かなり容疑者を絞ることができた。

 校外学習に行っていたのは高等部の貴族子女、合計三百七十八名と、そこに付き従っていた従者二百三名、あとは引率をしていた教員十八名。

 護衛の騎士たちは、貴族街に立ち入れない平民街を護衛するための騎士団に所属していたから容疑者からは外していい。

 数にして六百名程度。

一人一人アリバイを洗い出していけば、ロックゴレイムを特定できる。

 後は、王都の騎士団と、ヒール、ローゼイドの総力を集結させて倒すだけだ。

 

 

「下がっていなさい、ルーナ」

「は、はい」

「あくまでも、主役はワタクシ。ワタクシが倒しますわ――変身」

『Change――Horse chainsaw』

 

 

 紫の光とともに、馬の仮面とチェーンソーを装備した戦士が出現する。

 巨大なチェーンソーを構えて、彼女は、ゴレイムに歩み寄っていった。

 

 

「さあ、悪役劇場、開幕ですわ!」

 

 

 チェーンソーを振りかぶると、シェリアは踊りかかった。

 チェーンソーは、色々な意味でちょうどいい。

 まず、攻撃力と機動力を両立できること。

 次に、戦闘が派手であること。

 騎士団の前で、仮面騎兵ヒールの存在証明ができる。

 

 

「これは、何でしょうか」

「鳩、のように見えますね」

 

 

「ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「っ!」

 

 

 びりびりと、空気を、大地を、家屋を振るわせて。

 

 

「ぶったぎれろですわああああああああああああああ!」

「ギュウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 

 ゴレイムの悲鳴は、悪役令嬢の叫び声と、機械の駆動音によって相殺される。

 

 

「おーっほっほっほっほっほーっ!まな板の上の鳩が何か喚いてますわーっ!食材が喋るんじゃないですわーっ!」

 

 

 ギャリギャリと、致命傷へのカウントダウンをチェーンソーで奏でながらヴェーセルは笑う。

 余談だが、この世界において鳩は食料であり、ヴェーセルも鳩料理を食べたことはある。

 閑話休題。

 

 

「ぎゅ、牛タン」

「また変な断末魔ですわね……」

 

 

 ヴェーセルは、チェーンソーでコアを見事に断ち切った。

 敵の気迫に押し負けないように。

 自分自身を鼓舞するように。

 あるいは、周囲にヒーローがここにいると示すように。

 

 

「はあ、倒しましたわね」

 

 

 粉々に散っていくゴレイムだったものを見ながら、ヴェーセルはぼんやりとたたずんでいる。

 チェーンソーは、未だに獲物を求めて駆動しており、紫のドレスアーマーや馬の仮面と合わさって血に飢えた殺人鬼のように見える。

 ローグはまだ来ていない。

 とはいえ、彼の増援は不要だったともいえる。

 騎士団と協力して、というか騎士団に八割任せきりだったとはいえゴレイムを撃破することができたのだから。

 チェーンソーを手持無沙汰に弄びながら、ふと彼女は気づいた。

 

 

「どうして、変身が解けていない(・・・・・・・・・)んですの?」

 

 

 ゴレイムがいなければ変身は解除されるはずなのに。 

 つまり、ゴレイムが周辺にいると『仮面』は示しているのだ。 

 

                                                               

「ヴェ、ヴェ―セル様!」

「はっ」

 

 

 ルーナに言われて、気づく。

 二十メートルほど先の道路上に、一体のゴレイムがいた。

 頑丈そうな、長い足。

 空を跳ぶためではなく、地をかけるための足。

 

 

「ダチョウ?」

「ギャアアアアアアアアアアア!」

「はっ?」

 

 

 ダチョウ型のゴレイムが、いつの間にか出現していた。

 つい先ほどまでここには居なかった。

 おそらく、先程の鳩の叫びで駆けつけてきたのだ。

 仲間を呼ぶという効果があったのだろう。

 二段構えの奇襲作戦によって、陣形が崩れている。

 ダチョウゴレイムは、絶叫しながらヴェーセルの方に突っ込んでくる。

 

 

 ――進路上にいる騎士たちを蹴散らしながら。

 

 

「ふざけないで、くださいまし」

 

 

 絶対に許してはいけない存在であると、ここで倒さねばならないと、彼女の心と願いが告げている。

 

 

「変身!」

『Form change――Rabbit rapid』

 

 

 仮面に触れると同時、ヴェーセルの体は紫の極光に包まれた。

 

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