TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

42 / 99
「白い光の中に」

「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ぐあっ」

 

 

 そして装甲変更が終わる前に、吹き飛ばされた。

 体勢が整っておらず、ダメージが大きい。

 

 

「それでも」

 

 

 着地した状態で、変身を終える。

 

 

「ギュアアア嗚呼アアアアアア!」

「速いですわ!」

 

 

 高速移動、それがこのゴレイムの能力なのだろう。

 家屋の屋根の上を、地面の上を、自由自在に駆け回る。

 速度に特化した『兎』が追いつけないほどの速度と機動力で。

 

 

「お逃げなさい!」

「申し訳ない!」

 

 

 騎士団員だけでも逃がさねば、と思いながらヴェーセルは戦闘を続ける。

 ちなみに、民間人は鳩ゴレイムが現れた時点ですでに避難誘導が終わっている。

『兎』では縦横無尽に駆け回るダチョウ相手には勝ち目が薄いと判断したヴェーセルは、バックルに装着した『仮面』に触れる。

 

 

『Form change――viper vine――Exseed charge』

 

 

 先日「人をゴレイムから三十回以上救助する」という条件を達成して解放された形態を使用する。

 『蛇』――腕から二本の鞭を出して操作する形態。

その必殺技を使う。

 鞭に仮面を装着。

二本の鞭が、否、蔓が伸長する。

 

 

「ギュア?」

 

 

 ダチョウゴレイムは、戸惑ったような声を上げる。

 鞭が、ゴレイムを攻撃してきたから、ではない。

 むしろその逆。

 鞭が、ダチョウとはまるで関係のないところに飛んだからだ。

 

 

「ギュ、ア、ア」

 

 

 ダチョウゴレイムは、内心でほくそ笑む。

 外れた、と、これは好機に違いないと判断する。

 ゆえに、ダチョウは前進する。

 周囲のいる人間の中で、最も脅威であるヒールに向かって突撃する。

 彼女さえ踏みつければ、あとは烏合の衆。

 どうとでもなるはずだと考えていた。

 その判断は、正しい。

 軟禁状態であるフィリップを監視しているローグはここにはおらず、騎士団員は戦力としては数えられない。

 だがそれは。

 

 

「かかりましたわね」

 

 

 ヴェーセルが負ければ、の話である。

 

 

「ギュ?」

 

 

 ダチョウは気づいた。

 先ほどあたり一帯に展開された、蔓の鞭。

 それが、周囲に、玉状に展開されている。

 どこに逃げようとも、どれだけ足が速かろうとも、逃がさないように罠を張ればいい。

 球が、ダチョウを中心にして一気に収縮する。

ダチョウに巻き付き、全身を覆い、拘束して。

二本の蔓でできた球が、空中に浮かぶ。

 植物が成長によって大地を押しのけるがごとく、あるいは、果実を握力で握りつぶしてジュースにするがごとく、圧力を以て押しつぶす技。

 

 

『Serpent squeeze』

「潰れなさいな」

「ギュ!」

 

 

 ぎちぎちと、球がその直径を狭めていき。

 そのまま握りつぶした。

 肉を、骨を、コアさえも砕いて、壊して。

 ぼろぼろと崩れて土へと帰っていく。

 

 

「これで」

 

 

 ようやく終わったと、思った瞬間。

 衝撃が、ヴェーセルの全身を襲った。

 視界が白く染まり、何もみえない。

 ダメージによるものかそれ以外か、完全に視覚を潰されている。

 

 

「あっ、ぐ」

 

 

 ダメージによって変身が解除される。

 

 

「これは?」

 

 

 すこしずつ視界が戻る中で、何が起こったのかと、頭を回しながら見回して。

建物の上に、一体のカラスがいるのを見つけた。

黒ずくめの体に、肩から生えた二枚の翼。

そして、鴉のような頭部と、人型の胴体と手足。

 

 

「……三体目」

 

 

 ダチョウゴレイムを殺した瞬間にも、変身は解除されていなかった。

 鳩ゴレイムが囮だったが、ダチョウもまた同じ。

 本命が、この三体目だったということだろう。

 二体を使って、こちらを消耗させるために。

 

 

「何なんだ?」

 

 

 今迄のゴレイムとは、明らかに違う。

 ストーンゴレイムではない、彼らは五メートルから十メートルはある。ストーンゴレイムにしては小さすぎる。

 サンドゴレイムでは、ない。あまりにも強すぎる。

 サンドゴレイムごときの一撃なら、変身しなくても耐えられる。

 つまり。

 

 

「ロックゴレイム、親玉のお出ましというわけですのね」

 

 

 先ほどの一撃からして、今まで戦ってきたどのゴレイムより遥かに強い。

 先ほどの攻撃、あれはまずい。

 直撃すれば、生身では到底耐えられない。

 

 

「まずいですわね」

 

 

 奇襲で先手のアドバンテージを確保された。

 何よりも、この苦境を覆す手段がない。

 必殺技である『Exseed charge』は既に使い切ってしまっている。

 単なる殴り合いでは、このロックゴレイムに対処しきれない。

 

 

「これは、一体」

 

 

 学院内に、敵が、ロックゴレイムがいるのだろうと思い込んでいた。

 間違いなく、ロックゴレイムはフィリップだろうと判断して、その前提で作戦を練ってきた。

 だというのに、これはどういうことだろうか。

 ローグが、フィリップを見張っているはず。

 万が一、ローグが倒されるようなことがあれば、連絡がこちらに行っているはずだ。

 しかし、連絡は来ていなかった。

 そもそも、こいつはどこから現れた?

 この体の大きさなら、鳩ゴレイムの傍に潜伏していたのではないか?

 だとすれば、なおのことフィリップではない可能性が強まってくる。

 さらに言えば、それ以上にまずいことがある。

 

 

「体が、動かない」

 

 

 すでに体力は消耗しきっていたが、先程の突進と不可視の衝撃波がとどめになったようだ。

 体力が足りなければ、変身自体ができない。

 さらに言えば相手がどんな能力を使っているのかもわからない、不可視の衝撃を使ってくることしかわからない。

 詰んでいる、としか言えない状況が出来上がっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。