TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「ピンチ!絶体絶命!」

 きらり、とロックゴレイムの瞳が輝いたような気がした。

 とっさに、ヴェーセルは身をひねる。

 直後、彼女の右腕が吹き飛んだ。

 くるくると、肩から先が宙を舞う。

 

 

「あ、ぐ」

 

 

 出血はない。

 その代わり、右肩口から蔓のようなものがうぞうぞと蠢いている。

 蔓は右腕を掴み右肩口に引き寄せる。

 どうやら、繋げようとしているらしい。

 

「こっちも意味わからないですわね」

 

 

 仮面騎兵になってから傷を負うことなど一度もなかったが、負傷するとこうなるのかという発見をすることができた。

 だが、状況は何一つ好転していない。

 そもそもが、変身できない以上、彼女の戦闘能力の半分も発揮できない。

 それでは、絶対にロックゴレイムを倒せない。

 付け加えれば、再生できるからと言ってヴェーセルが生き残れるわけでもない。

 ジニーから、仮面騎兵について最近判明した情報があったと聞かされていた。

 

 

 それは、『仮面を破壊されない限り死なない』というもの。

 納得がいく。

 この『蔓』で肉体を修復できるのであれば、死ぬことはないのだろう。

 だが逆に言えば、頭についているシードマスクを破壊された時点で、この再生も機能しなくなり、死ぬということ。

 謎の衝撃波を何度も放ってくる相手に、『仮面』だけは無事でいさせてくれるだなんて甘い考えはない。

 さらにいえば、体力がもう足りていないのか、右腕は完全には治っていない。

 蔓で体から離れてはいないが、それだけだ。

 それでも、おそらくあと数時間もすれば治るだろう。だがそれでは間に合わないのだ。

 むしろ腕一本分のデッドウェイトを抱えることになる。

 これでは撤退することもできない。

 

 

 そもそも逃げていいはずがない。

 騎士団はあてにできない。

 そもそも、ただでさえダチョウゴレイムの奇襲によって負傷者が多数発生しており、鴉ゴレイムに対処する余力が残っていない。

 ローグは、まだ来ていない。

 というか、来るはずもない。

 彼はまだフィリップを見張っているはずだ。

 そもそも来ていたとしても間に合うかどうか。

 

 

「終わりですわね」

 

 

 ヴェーセルは何もできないまま、キラリと目を輝かせたゴレイムを見つめていた。

 どん、と突き飛ばされた。

 

 

「え?」

 

 

 先ほどまで、ヴェーセルがいたところには。

 

 

「ルー、ナ?」

 

 

 彼女にとって最初にして最愛のメイドが、いた。

 腹部に、何かで貫かれたような大穴をあけて。

 

 

「ルーナ!」

 

 

 腹から焼け焦げたような蒸気を出しながら倒れているルーナを見ながら、ヴェーセルはスカートの生地を破り、傷口を抑える。

 しかし、鴉にとってはそのようなことは関係ない。

 むしろ好機と言わんばかりに、次の攻撃を繰り出そうとして。

 

 

『Exseed charge』

 

 

 鴉のいる場所に、氷結の薔薇が咲いた。

 その周囲にいた建物も、木々も、地面も凍り付く。

 白いバラをつけた、ローゼイドがいた。

 彼のイクシードスキルを使ったのだと、遅まきながらヴェーセルが気付く。

 

 

「フッ、ヴェーセル、状況はかなり悪いようだね」

 

 

 異変を検知したローグが、援軍に来たのだ。

 今のローグは、先日とは違い頭に白い薔薇をつけている。

 氷魔法に特化した形態なのだろう。

 周囲にまだ人がいるので、巻き込まないように火力を抑えているのかもしれない。

 

 

「ええ、あのゴレイムが……消えた?」

 

 

 先ほどの鴉ゴレイムの姿が、どこにもない。

 同時に、ローゼイドの変身が解除される。

 倒せた手ごたえがない以上、遠くにいってしまったと考えるしかない。

『Exseed charge』を二人とも使い切っている以上、追いかけたところでどうにもならない。

 

 

「ローグ、この近くに病院はあるか?」

「ああ、あるとも。彼女達をそこに運ぶとしようか」

 

 

 ヴェーセル言葉遣いが崩れていることを、ローグは指摘しなかった。

 けがを負っている人間が大勢いる最中、指摘する余裕がなかったからか。

 あるいは、あえて触れるべきではないと思ったのか。

 




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