TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
ヴェーセルは、改めて考えることにした。
自分がヒーローであることはもはや疑う余地はない。
自分を見てくれる、応援してくれる人が三人もいる以上、そこに疑いを持つことはあり得ない。
では、それを前提とした時にヒーローとして、悪役令嬢として、何をするべきなのか。
「現状、何も事態としては好転しておりませんものね」
「確かに、一体敵はどこの誰なんだ」
相手はどんどんあからさまになってきている。
自分の正体に気付かれているのではないかと思い、罠を張ったのか。
あるいは、逆にバレていないと判断してずさんになっているのか。
鴉ゴレイム自身が、出張ってまでヒールを、ヴェーセルを殺そうとしたのは確かである。
それは当たり前なのかもしれない。
そこまでやって殺害に失敗した以上、もう相手もなりふり構ってはいられないはず。
徹底的にこちらを殺しに来るはずである。
「さっさと見つけないと、後手に回るだけですわね」
ロックゴレイムは、ローゼイドの増援を見て撤退した。
単純に数が増えたことで不利と判断したのか、あるいはイクシードスキルに恐れをなしたのか。
ローグの技は回避されていたが、逆に言えば避けなければならなかったともいえる。
一つ判断できるのは、体勢を立て直してまた攻撃してくる可能性が高いということ。
今回の罠で確信が持てた。
やつは、ヴェーセルという脅威から逃げるのではなく、戦って殺すことを選択している。
病院を離れるべきなのかもしれないが、ルーナたちを襲う可能性まで考えると、病院から動かない方が守り切れるはずだ。
「一番望ましいのは、今夜中にやつを特定して、イクシードスキルが使えるようになり次第二人で撃破すること」
今のところ、『仮面』を装着しても変身できないことから、周囲にいないことだけは確かであるのだが。
これ以外に、探知する方法がないというのも難しい話だ。
十メートルほどまでしか効果がないため、遠距離から攻撃してくる相手にどの程度意味があるのだろうか。
「あ」
ずっと引っかかっていたはずのことが、何だったのか思い出した。
「ローグ」
「何かな?」
ヴェーセルは口を開いた。
仮説と、答えを伝えるために。
「ひとつ、気づいたことがある。ちょっと手伝ってくれませんこと?」
「いいだろう」
ローグもまた、それに答えた。
◇
十五分ほどかけて、ヴェーセルは自身の仮説を全て伝えた。
「――。以上が、ワタクシの仮説ですわ」
「そうか、それならば筋が通るね」
「なら急いだほうがいい。なおさら早急に処分しないとどこまで被害が出るかわからない」
「あ、あの、こ、ここは、私が守っておきますので、どうかお二人は討伐を、お、お願いします」
「わかりましたわ!」
ヴェーセルと、ローグはあわてて出ていった。
「ところで、あいつは今何をしているんですの?」
「さてね、まずはそこを確認してみないことには何とも言えない」
ローグとヴェーセルは、何事かを話しながら爆速で移動する。
「ヴェーセルの仮説があくまでも正しいのなら、まず間違いなく彼が危ない」
「ええ、そうなりますわ」
彼らはなおも会話を続ける。
確認作業として。
「仮面騎兵は、ゴレイムを倒すための兵器だ。だから、使えるのはゴレイムが傍にいる時のみ」
「そうだね」
「にもかかわらず、一度だけ周囲にゴレイムがいないにもかかわらず、一度だけ変身が解除されなかったことがあった」
その時は、何とも思わなかった。
何しろ、ゴレイムのとの戦闘も討伐も、その時のヴェーセルにとっては『初めて』だったのだから。そもそもゴレイムがいないときには維持できないということを知らなかったのだし。
あと、心配して抱きついてきたルーナの体の感触に興奮してしまいそれどころではなかった。
「つまり、そういうことだね」
「ええ、間違いありませんわ」
「君は、どっちだと思っている?」
「さあ?そこまではわかりません。ですが」
「ですが?」
「どちらであってほしいかと言われれば、そう難しくはありませんことよ」
ヴェーセルは、走っていった。
もはや迷いはない。